「松山ケンイチ、急に太りすぎでは?」
2016年ごろの松山ケンイチさんを見て、そう感じた人はかなり多かったはずだ。顔は丸くなり、体もひと回りどころではなく大きくなっている。作品を知らずに写真だけ見れば、体調を心配してしまっても不思議ではない。
しかし、この大幅な体重増加には明確な理由があった。
原因は、主演映画『聖の青春』で実在の棋士・村山聖を演じるための役作りだ。
しかも、少し体重を増やした程度ではない。映画関係の報道では、松山ケンイチさんは約20kgもの増量をしたと伝えられている。本人も単に外見を似せるだけではなく、体そのものを変えることで村山聖という人物に近づこうとしていた。(Mantanweb)
私は改めて当時の写真を見たが、これは「太った」という軽い言葉では片づけにくい。『DEATH NOTE』のLなどを知っているほど、同じ俳優とは思えないほどの変化だ。
では、なぜそこまで増量する必要があったのか。そして、よく見かける「20kg」「25kg」「30kg」という数字の違いは何なのか。
そこには、松山ケンイチさんのかなり強烈な役作りがあった。

松山ケンイチが激太りした原因は映画『聖の青春』
村山聖を演じるために大幅増量していた
松山ケンイチさんが大幅に太った最大の理由は、2016年11月19日に公開された映画『聖の青春』だ。
松山さんが演じたのは、実在したプロ棋士の村山聖(むらやま・さとし)。
村山聖は幼いころから重い腎臓病を抱えながらプロ棋士となり、将棋界の最高峰であるA級まで上り詰めた人物だ。羽生善治さんらと同じ時代に戦いながら、1998年に29歳という若さで亡くなった。
日本将棋連盟も、村山聖九段についてA級在位のまま29歳で亡くなった棋士として記録している。現在でも棋譜集が発売され、村山聖杯将棋怪童戦が開催されるなど、その名前は将棋界に残り続けている。(日本将棋連盟 オンラインストア)
原作は大崎善生さんのノンフィクション『聖の青春』だ。KADOKAWA公式でも、重い腎臓病を抱えながら名人を目指した村山聖の生涯を描いた作品として紹介されている。(KADOKAWAオフィシャルサイト)
単なる「天才棋士の成功物語」ではない。
病気が常にそばにあり、それでも将棋に人生を突っ込んでいく。一度知ると、かなり強烈な人物だ。
松山ケンイチさんが体まで変えて演じようとした理由も、そこにある。
見た目を似せるだけの増量ではなかった
俳優が実在の人物を演じる場合、髪型や服装、メイクで外見を近づける方法もある。
松山ケンイチさんは、それだけでは足りないと考えた。
本人はインタビューで、残された映像から話し方やしぐさを研究しながら、村山聖が病気をどのように受け止めていたのかまで考えて役を作ったと話している。(シネマトゥデイ)
さらに別のインタビューでは、体型を変えることで歩き方や体の使い方まで変化し、それを役作りに利用したことも語っている。(ウーマンエキサイト)
ここがかなりすごい。
太っている人物を演じるから体重を増やした、という単純な話ではないのだ。
体重が増えた状態で実際に生活し、その体で村山聖を演じようとした。
だから映画を見ると、単に特殊メイクで大きく見せた俳優とは違う重さがある。
外見をコピーするだけなら、ここまでやる必要はない。
松山ケンイチは何kg太った?20kg・25kg・30kg説を整理
映画関連では「約20kg増量」という情報が多い
松山ケンイチさんの増量について調べると、少し面倒な問題にぶつかる。
数字が統一されていないのだ。
人類は体重の数字ひとつでも見事に情報を散らかしてくれる。
映画公開時のインタビューや舞台あいさつなどでは、約20kg増量とする報道が多い。
MANTANWEBは「約20キロ増量」、シネマカフェも「20kg増量」、ORICONも「20キロ増量」と報じている。(cinemacafe.net)
そのため、映画『聖の青春』の役作りについて説明するなら、
「松山ケンイチは村山聖を演じるため約20kg増量した」
とするのが無難だろう。
『櫻井・有吉THE夜会』では25kgや30kgという情報もあった
一方で、2016年11月17日に放送されたTBS系『櫻井・有吉THE夜会』関連の記事では数字がさらに大きくなる。
当時の番組紹介では「25kgもの激太り」と報じられた例があり、別の記事では「30kg増量」と紹介されている。(cinemacafe.net)
つまり、
- 映画関連のインタビューや舞台あいさつ:20kg前後
- 『THE夜会』関連の記事:25kg前後
- 一部の番組紹介や記事:30kg
という状態だ。
本人の正確な増量前・増量後の体重が公式に統一して公開されているわけではないため、「絶対に20kgだった」「30kgだった」と断定するより、約20kg以上の大幅な増量を行ったと理解するのが適切だ。
少なくとも数kg太っただけ、というレベルではない。
あの外見の変化にも納得できる。
なぜ松山ケンイチはそこまで太ったのか
村山聖の体型そのものに意味があった
『聖の青春』では、村山聖の体格も人物を表現する重要な要素だった。
松山ケンイチさん自身も東京国際映画祭で、村山聖が抱えていた病気と体型の関係を考え、その姿をきちんと体現する必要があると考えた趣旨を語っている。(クランクイン! – エンタメの「今」がわかる 映画&エンタメニュース)
だから、ただ写真に似せたかったわけではない。
体が重くなれば、歩き方も変わる。
座ったときの姿勢も変わる。
立ち上がる動作も変わる。
本人が話しているように、体型を変えたことで初めて分かる体の感覚があったのだろう。
私はここが『聖の青春』で一番興味深い。
20kgという数字だけを見れば「俳優の過酷な肉体改造」で終わってしまう。しかし実際には、増量そのものが演技の一部だった。
村山聖本人の関係者も驚く役作りだった
松山ケンイチさんは体重を増やすだけでなく、村山聖についてかなり深く調べている。
東京の将棋会館へ通い、村山さんの故郷である広島を訪れ、墓参りもした。さらに両親や師匠の森信雄さんを訪ね、病気について理解するため患者への取材まで行ったと報じられている。(オリコンニュース(ORICON NEWS))
原作者の大崎善生さんも、役作りをした松山さんを見て、そこに村山聖を感じたという趣旨のコメントを残している。
さらに撮影時、村山聖の師匠だった森信雄さんは松山ケンイチさんを見て、村山本人を思わせる反応をしたというエピソードもある。(シネマトゥデイ)
20kgの増量が注目されやすいのは当然だ。
しかし、本当にすごいのはこちらかもしれない。
松山ケンイチさんは体型、動き、話し方、生活、病気、周囲の人間関係まで含めて村山聖に近づこうとしていた。
『櫻井・有吉THE夜会』ではダイエットにも挑戦
増量後は元の体型へ戻している
撮影が終われば、今度は増やした体重を戻さなければならない。
これも簡単な話ではない。
2016年11月17日放送の『櫻井・有吉THE夜会』では、役作りで大幅に太った松山ケンイチさんが登場し、ダイエット向きとされた肉を探す企画が放送された。
番組ではカンガルー肉、羊肉、赤身のステーキなどが紹介されていた。(cinemacafe.net)
ただし、「この肉を食べれば勝手に痩せる」という意味ではない。
体重は食事全体や摂取カロリー、活動量など多くの条件で変わる。テレビ番組らしい派手な表現と、実際のダイエットは分けて考えたほうがいい。
松山ケンイチさん自身については、その後のインタビューで体重を元に戻したことを語っている。(シネマトゥデイ)
つまり、あの大きな体型がそのまま定着したわけではない。
『聖の青春』という一本の作品のために作った体だったのだ。
映画『聖の青春』はどんな作品?
羽生善治のライバル・村山聖の人生を描く
『聖の青春』は、病気と闘いながらプロ棋士として生きた村山聖の人生を描いた映画だ。
村山は将棋界で「怪童」と呼ばれ、同世代の羽生善治さんらと激しい対局を重ねた。
映画では松山ケンイチさんが村山聖を演じ、羽生善治役を東出昌大さんが担当している。
将棋映画だからといって、将棋のルールを知らなければ楽しめない作品ではない。
むしろ中心にあるのは、
「限られた時間を何に使うのか」
という非常に単純で重い話だ。
村山聖は病気を抱えている。
それでも将棋をやめない。
勝っても次の対局がある。
負ければさらに苦しい。
それでも盤の前に座る。
原作を知ったうえで松山ケンイチさんの増量を見ると、単なる「激太りニュース」として消費するには惜しすぎる。
あの体型まで含めて、村山聖を演じるための準備だったのだ。
まとめ
松山ケンイチさんが2016年ごろに大幅に太った原因は、映画『聖の青春』で村山聖を演じるための役作りだった。
映画関連の報道では約20kgの増量とする情報が多く、『櫻井・有吉THE夜会』関連では25kgや30kgと紹介された例もある。そのため、正確には「約20kg以上の大幅増量」と考えるのがいいだろう。
しかも、ただ見た目を似せるために太ったわけではない。
松山ケンイチさんは村山聖の映像を研究し、将棋会館へ通い、関係者に会い、病気についても取材した。そのうえで、自分の体まで大きく変えている。
写真だけを見ると「松山ケンイチが激太りした」と驚く。
だが理由を知ると、見え方は完全に変わる。
あの体型は乱れた生活の結果として報じられたものではなく、村山聖という一人の棋士を演じるために作り上げた姿だった。
そして撮影終了後には体重も戻している。
20kg前後も体を変え、終わったら再び戻す。簡単に真似できる話ではないし、安易に真似するべきでもない。
『聖の青春』を改めて見るなら、将棋の勝敗だけではなく、松山ケンイチさんが体そのものを演技に使っている点にも注目したい。
そこまで知ってから見ると、あの「激太り」の意味はかなり違って見えるはずだ。


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