「NISAは1,800万円まで」と聞いて、1,800万円を超えたらもう二度と使えない制度だと思っていないでしょうか?
実は、それは少し違います。
NISAには「1年間に投資できる金額」と「非課税で保有できる金額」という、似ているようで別の枠があります。しかも、商品を売却すれば一部の枠は翌年以降に再利用できます。
この仕組みを知らずに「年間360万円だから5年で終了」とだけ覚えるのは、かなり危険です。
2026年8月時点のNISAでは、18歳以上の場合、年間最大360万円、非課税保有限度額は最大1,800万円です。ただし、成長投資枠には1,200万円までという別の上限があります。
私はNISAを考えるとき、「120万円」「240万円」「360万円」「1,200万円」「1,800万円」の5つを分けて考えるようにしています。この数字さえ整理できれば、NISA枠はそれほど難しくありません。
NISA枠とは何?まずは仕組みを簡単に理解しよう
NISA枠とは非課税で投資できる範囲のこと
NISAとは「少額投資非課税制度」です。
通常、株式や投資信託で利益が出ると、売却益や配当などに税金がかかります。一方、NISA口座で対象商品を購入すると、一定の条件のもとで売却益や配当などを非課税にできます。
2024年から始まった現在のNISAでは、非課税で保有できる期間も無期限になりました。金融庁も、現在のNISAについて「非課税保有期間が無期限」「制度が恒久化された」と案内しています。
一次情報:金融庁「NISAを知る」
ただし、好きなだけ無制限に投資できるわけではありません。
そこで登場するのが「NISA枠」です。
現在のNISAには、大きく分けて次の2種類があります。
| 種類 | 年間投資上限 | 非課税保有限度額 |
|---|---|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 | 成長投資枠と合わせて1,800万円 |
| 成長投資枠 | 240万円 | 最大1,200万円 |
| 合計 | 年間360万円 | 最大1,800万円 |
この表がNISA枠を理解する基本です。
NISAはいくらまで?年間では最大360万円
つみたて投資枠は年間120万円まで
つみたて投資枠では、1年間に最大120万円まで投資できます。
月額に直すと、
120万円÷12か月=月10万円
です。
毎月10万円ずつ積み立てれば、1年間でちょうど120万円になります。
もちろん、毎月10万円を必ず投資する必要はありません。月1万円や3万円など、自分の収入や生活費に合わせて設定できます。
つみたて投資枠で購入できるのは、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託などです。
「NISAを始めたいけれど、個別株まで調べるのは大変」という人なら、私はまずこちらを理解したほうがよいと考えています。
年間上限は120万円ですが、上限まで使うことが目的ではありません。生活が苦しくなるほど投資したら、本末転倒です。
成長投資枠は年間240万円まで
成長投資枠では、年間最大240万円まで投資できます。
月平均にすると、
240万円÷12か月=月20万円
です。
成長投資枠では、つみたて投資枠より幅広い商品を購入できます。一定の投資信託だけでなく、上場株式なども対象です。
そのため、
「投資信託を積み立てながら個別株も買いたい」
という使い方もできます。
ただし、すべての投資信託や株式商品が対象になるわけではありません。たとえば一定の毎月分配型投資信託や高レバレッジ型商品など、一部の商品は対象外です。
2つを合わせれば年間360万円まで使える
つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円は併用できます。
つまり、
120万円+240万円=年間360万円
までNISAで投資できます。
金融庁と日本証券業協会も、年間投資枠について、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、合計最大360万円と案内しています。
ここで誤解しやすいのですが、360万円を使わなければ損という意味ではありません。
NISAはあくまで税制上の入れ物です。
投資額を増やせば、その分だけ価格下落時の損失も大きくなります。「非課税だから買う」ではなく、「必要な投資をNISAで行う」という順番で考えるべきです。
NISAの総枠はいくらまで?最大1,800万円
非課税保有限度額は1,800万円
年間360万円とは別に、NISAには「非課税保有限度額」があります。
18歳以上の場合、最大1,800万円です。
ネットでは「生涯投資枠1,800万円」と呼ばれることもありますが、金融庁などが使っている正式な表現は「非課税保有限度額」です。
この言葉の違いは意外と重要です。
「生涯1,800万円」と聞くと、一生の間に合計1,800万円を購入したら終了するように感じます。
しかし、現在のNISAでは売却した商品の取得価額分について、翌年以降に枠を再利用できます。つまり、単純な「一生で合計1,800万円まで」という制度ではありません。
成長投資枠だけは最大1,200万円
さらに注意したい数字があります。
成長投資枠で保有できるのは最大1,200万円です。
NISA全体では1,800万円ですが、その中で成長投資枠として使える部分には1,200万円という上限があります。
たとえば、
つみたて投資枠600万円
+
成長投資枠1,200万円
=
合計1,800万円
という使い方ができます。
一方、
つみたて投資枠1,000万円
+
成長投資枠800万円
=
合計1,800万円
でも問題ありません。
日本証券業協会も、つみたて投資枠だけで1,800万円を利用する例や、成長投資枠と組み合わせて1,800万円利用する例を示しています。
つみたて投資枠だけなら1,800万円まで使える
ここはかなり勘違いしやすいところです。
「つみたて投資枠は1,800万円から成長投資枠1,200万円を引いた600万円まで」
ではありません。
つみたて投資枠だけで1,800万円すべてを使うこともできます。
1,200万円という制限があるのは成長投資枠です。
つまり、
・つみたて投資枠だけ → 最大1,800万円
・成長投資枠だけ → 最大1,200万円
・両方を利用 → 合計最大1,800万円
となります。
この違いは絶対に押さえておくべきです。
NISAの1,800万円は何年で使い切れる?
最短なら5年で1,800万円に到達する
年間投資枠を毎年最大まで利用すると、
年間360万円×5年間=1,800万円
です。
内訳は、
つみたて投資枠
120万円×5年=600万円
成長投資枠
240万円×5年=1,200万円
となります。
ちょうどNISA全体の1,800万円と、成長投資枠の上限1,200万円に到達します。
つまり、資金に余裕がある人なら最短5年で非課税保有限度額を埋めることができます。
ただ、私は「5年で埋めること」を目標にする必要はないと思っています。
毎年360万円なら月平均30万円です。
かなり大きな金額です。
投資には余裕資金を使うのが基本なので、10年、15年、20年かけて利用しても何も問題ありません。
つみたて投資枠だけなら15年
つみたて投資枠だけを年間120万円使う場合、
1,800万円÷120万円=15年
です。
毎月10万円を15年間積み立てれば、投資元本は1,800万円になります。
毎月5万円なら年間60万円なので、
1,800万円÷60万円=30年
です。
30年かけて使っても構いません。
NISAの非課税保有期間は無期限なので、自分のペースで長く利用できます。
NISAで利益が出て1,800万円を超えたらどうなる?
1,800万円は現在価格ではなく取得価額で管理される
ここも重要です。
NISAの1,800万円は、現在の時価ではなく、基本的に**取得価額(買ったときの金額)**を基準に管理されます。
たとえばNISAで合計1,800万円分の商品を購入したとします。
その後、値上がりして評価額が3,000万円になったとしても、
「1,800万円を超えたから課税口座に移される」
ということにはなりません。
非課税保有限度額の計算は簿価、つまり取得価額を基準に行われます。日本証券業協会も、購入手数料などを含まない買付代金を基準にすると説明しています。
ここはNISAの非常に強い部分です。
大きく値上がりしたからといって、その値上がり分がNISA枠を食いつぶすわけではありません。
NISA商品を売却すると枠はどうなる?
売却すると翌年に取得価額分の総枠が復活する
現在のNISAでは、保有商品を売却すると、その商品の取得価額分について翌年以降に非課税保有限度額を再利用できます。
たとえば100万円で購入した投資信託が150万円になり、それを売却したとします。
復活する枠は150万円ではありません。
100万円です。
購入したときの取得価額を基準に計算されるからです。
金融庁も、売却した商品の簿価、つまり取得金額分について翌年以降に枠を再利用できると説明しています。
これが「生涯1,800万円」という表現だけでは理解しにくい理由です。
売却して枠を空ければ、NISAは長期間にわたって繰り返し利用できます。
売った年に年間投資枠が復活するわけではない
ただし、かなり大事な注意点があります。
商品を売却しても、その年に使った年間投資枠は復活しません。
たとえば、つみたて投資枠で60万円購入して、その年にすべて売却したとします。
「売ったから120万円の枠に戻った」
とはなりません。
その年に残っている年間投資枠は60万円のままです。
売却によって空いた非課税保有限度額を使えるようになるのは翌年以降です。日本証券業協会も、一度利用した年間投資枠は同じ年には再利用できないと案内しています。
余ったNISA年間枠は翌年に繰り越せる?
使わなかった年間投資枠は消える
これも意外と知られていません。
年間投資枠は翌年に繰り越せません。
たとえば今年、つみたて投資枠を60万円しか利用しなかったとします。
年間上限は120万円なので60万円余ります。
しかし翌年、
120万円+前年の60万円=180万円
とはなりません。
翌年のつみたて投資枠も120万円です。
成長投資枠も同じ考え方です。
日本証券業協会も、使い残した年間投資枠は翌年に繰り越せないと明記しています。
とはいえ、「今年中に枠を使わないともったいない」と焦る必要もありません。
投資で本当に怖いのは、税金を少し多く払うことより、無理に投資して生活資金まで失うことです。
NISA枠はノルマではありません。
NISA枠を具体例で考えるとわかりやすい
毎月5万円積み立てる場合
毎月5万円なら、
5万円×12か月=年間60万円
です。
つみたて投資枠の年間120万円以内なので、すべてつみたて投資枠で投資できます。
年間枠は60万円余りますが、無理に使う必要はありません。
毎月10万円積み立てる場合
毎月10万円なら、
10万円×12か月=年間120万円
となり、つみたて投資枠をちょうど使い切ります。
15年間続けると、
120万円×15年=1,800万円
です。
年間300万円投資する場合
たとえば、
つみたて投資枠120万円
+
成長投資枠180万円
なら年間300万円です。
年間360万円以内なのでNISA枠に収まります。
年間投資枠を毎年すべて使わなくても問題ありません。
NISA枠についてよくある勘違い
「年間360万円まで非課税」だけでは不十分
年間360万円という数字だけ覚えていると、NISAの総枠を見落とします。
NISAでは、
年間最大360万円
という制限と、
保有額最大1,800万円
という制限の両方を守る必要があります。
年間枠が残っていても、非課税保有限度額がいっぱいなら追加投資はできません。
「1,800万円を使ったらNISA終了」ではない
これも違います。
1,800万円まで投資したあとでも、商品を売却すれば取得価額分の総枠が翌年以降に空きます。
年間投資枠の範囲内で再び投資できます。
そのため、NISAは「1,800万円買ったら終了する口座」と考えないほうが正確です。
「NISAなら損をしない」わけではない
これは絶対に勘違いしてはいけません。
NISAは利益に対する税制を優遇する制度であり、元本を保証する制度ではありません。
投資信託や株式の価格が下落すれば普通に損失が出ます。
金融庁もNISAを長期・積立・分散による資産形成を支援する制度として案内していますが、投資そのもののリスクが消えるわけではありません。
税金が有利だからといって、投資まで安全になるわけではないのです。
2027年からは0〜17歳向けNISAも拡充予定
2026年現在、通常のNISAはその年の1月1日時点で18歳以上の人が対象です。
ただし、令和8年度税制改正では、2027年から0〜17歳についても、つみたて投資枠を利用できる制度へ拡充する方針が示されています。
0〜17歳については、
年間投資枠:60万円
非課税保有限度額:600万円
とされています。
18歳以上の年間120万円・総枠1,800万円とは金額が異なるため注意が必要です。財務省と金融庁の資料では、2027年からの制度として示されています。
一次情報:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」
まとめ|NISA枠は「年間360万円」と「総枠1,800万円」を分けて考えよう
NISA枠は、数字だけ並べると難しそうに見えます。
しかし、18歳以上については次の5つを覚えておけば十分です。
つみたて投資枠:年間120万円
成長投資枠:年間240万円
年間投資枠:合計最大360万円
非課税保有限度額:合計最大1,800万円
成長投資枠として使える総額:最大1,200万円
そして、もう一つ重要なのが売却後の扱いです。
1,800万円は「一生の間に購入できる合計額」ではありません。商品を売却すれば、その取得価額分について翌年以降に枠を再利用できます。
一方、年間120万円・240万円という年間投資枠は、使い残しても翌年へ繰り越せません。その年に売却しても、その年の年間枠が復活するわけでもありません。
私は、NISAを「とにかく枠を埋める制度」と考える必要はないと思っています。
月1万円でも5万円でも構いません。
大切なのは生活資金を確保したうえで、自分が続けられる金額を投資することです。
NISAには年間360万円というかなり大きな枠があります。しかし、その上限まで投資することが正解なのではありません。
使える枠と、使うべき金額は別物です。
そこを間違えなければ、NISAは長期的な資産形成にかなり使いやすい制度だと言えます。

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