「住信SBIネット銀行とマネックス証券が連携するなら、次はSBI証券とマネックス証券の統合ではないか?」
そう考えた人は少なくないはずだ。実際、SBI、ドコモ、マネックスという巨大企業の名前が同じ発表資料に並んでいる。金融業界は買収や再編が多いため、何か裏で進んでいるようにも見える。
しかし、2026年8月6日時点で、SBI証券とマネックス証券が合併・経営統合するという公式発表はない。
むしろ現在進んでいるのは、証券会社同士の統合ではなく、銀行を中心としたサービス連携だ。名前が似ている企業が複雑に提携しているため、話が必要以上にややこしくなっている。金融業界は利用者を便利にする前に、まず企業関係図を難解にする習性でもあるのだろうか。
この記事では、SBI証券とマネックス証券が今後統合される可能性について、ドコモとの資本関係や旧・住信SBIネット銀行の動きから考えていく。
SBI証券とマネックス証券が統合されるという発表はない
最初に結論をはっきりさせておく。
2026年8月6日時点では、SBI証券、SBIホールディングス、マネックス証券、マネックスグループ、NTTドコモのいずれからも、SBI証券とマネックス証券の合併や経営統合は発表されていない。
現在公表されているのは、主に次の関係だ。
- マネックス証券とNTTドコモの資本業務提携
- 旧・住信SBIネット銀行のドコモグループ入り
- ドコモ、銀行、マネックス証券によるサービス連携
- 旧・住信SBIネット銀行とSBI証券の連携継続
これらは「業務提携」や「サービス連携」であり、SBI証券とマネックス証券を一つの会社にする話ではない。
個人的にも、現時点で「統合が近い」と判断するのは早すぎると思う。関係企業が同じだからといって、会社まで一つになるとは限らない。コンビニで同じ決済サービスが使えるからといって、コンビニ各社が合併するわけではないのと同じだ。
マネックス証券はすでにドコモ側の証券会社になっている
マネックス証券はNTTドコモの連結子会社
マネックスグループとNTTドコモは、2023年10月に資本業務提携を発表した。
その後、マネックス証券の完全親会社として「ドコモマネックスホールディングス」が設立された。議決権の所有割合は、マネックスグループが約51%、NTTドコモが約49%となっている。
数字だけを見るとマネックスグループの持分が多い。しかし、取締役の構成などを含めた実質支配力により、ドコモマネックスホールディングスとマネックス証券はNTTドコモの連結子会社になった。
一方、マネックスグループから見ると、マネックス証券は持分法適用会社という位置づけになっている。つまり、マネックス証券は現在、SBIグループではなく、ドコモとの関係を軸に成長を目指している会社だ。(マネックスグループ)
一次情報は、マネックスグループとNTTドコモの資本業務提携に関する発表で確認できる。
dカード積立などドコモとの連携が進んでいる
マネックス証券では、dカードを使った投資信託のクレカ積立や、dアカウント連携、dポイントがたまるサービスなどが提供されている。
2026年3月期のマネックスグループの資料では、ドコモとの連携などを背景に、マネックス証券の2026年1月の口座獲得数が創業以来最高の4万7,000件になったと説明されている。
つまりマネックス証券は、ドコモ経済圏の証券会社として伸ばす方向に動いている。この状況で、わざわざ競合であるSBI証券と直ちに統合する必然性は薄い。
「住信SBIネット銀行」の名前が誤解を生んでいる
住信SBIネット銀行はドコモグループに移った
SBI証券とマネックス証券の統合説が出る大きな理由は、旧・住信SBIネット銀行の存在だ。
住信SBIネット銀行は、もともとSBIホールディングスと三井住友信託銀行が中心となって運営していた銀行だった。
しかし、2025年にNTTドコモが住信SBIネット銀行を買収し、同年10月にドコモグループへ入った。その後、2026年8月3日に「ドコモSMTBネット銀行」へ社名が変更された。(SBIグループ)
一次情報は、ドコモSMTBネット銀行への社名変更に関する公式案内で確認できる。
現在は「SBI」という名前が銀行名から消えている。ここを理解しないままニュースを見ると、SBI証券、住信SBIネット銀行、マネックス証券がすべてSBIグループのように見えてしまう。
しかし、現在のドコモSMTBネット銀行はドコモ側の銀行であり、SBI証券と同じグループではない。
SBI証券とのサービス連携は継続する
ただし、銀行がドコモグループへ移ったからといって、SBI証券との関係が完全に切れたわけではない。
SBIホールディングスは、銀行の売却後もSBI証券との銀行・証券連携を続ける方針を示している。
さらに、銀行を通じた証券サービスについて、SBI証券とマネックス証券を「公平かつ公正に扱う」ことが、売り手と買い手の合意事項だと説明している。(SBIグループ)
これはかなり重要な情報だ。
SBI証券とマネックス証券を一つにまとめるのではなく、同じ銀行が二つの証券会社と連携する形を目指しているからだ。
つまり、銀行を共通の入口にする可能性はあるが、証券会社自体は競争を続ける構造になる。
ドコモSMTBネット銀行とマネックス証券の連携が本格化する
銀行口座と証券口座を同時開設できる
NTTドコモ、旧・住信SBIネット銀行、マネックス証券は、2025年12月に三社で業務提携契約を結んだ。
発表された主な内容は次の三つだ。
- 銀行口座とマネックス証券口座の同時開設
- 銀行口座と証券口座の資金スイープ機能
- 三社のサービス利用者に対する優遇特典
資金スイープとは、銀行口座のお金を証券口座へ自動的に移動し、投資に使えるようにする仕組みだ。
SBI証券と旧・住信SBIネット銀行の「SBIハイブリッド預金」に近い利便性を、マネックス証券でも提供する方向だと考えられる。
一次情報は、NTTドコモ、銀行、マネックス証券の三社提携に関する発表に掲載されている。
これは統合ではなく競争環境の整備
一見すると、SBI証券とマネックス証券の距離が近づいているように見える。
しかし、実際には逆だ。
マネックス証券が銀行との自動連携機能を手に入れることで、SBI証券と正面から競争しやすくなる。銀行との連携がSBI証券だけの強みではなくなるからだ。
私は、この動きを「統合の準備」ではなく、「マネックス証券の競争力を高める準備」と見るほうが自然だと思う。
ドコモには通信契約、dカード、d払い、dポイントという巨大な顧客基盤がある。そこに銀行とマネックス証券を組み合わせれば、自前の金融経済圏を作れる。
そのため、ドコモが育てているマネックス証券をSBI証券へ渡したり、一体化させたりする可能性は、少なくとも短期的には低い。
SBI証券とマネックス証券の規模には大きな差がある
SBI証券の預かり資産は約66兆円
SBI証券が公表した資料によると、SBIグループの2026年3月末の預かり資産残高は約66兆1,000億円だった。
同じ資料では、マネックス証券の預かり資産残高は約10兆8,000億円とされている。単純比較では、SBI側はマネックス証券の約6倍の規模になる。(SBI証券)
SBI証券はすでに国内最大級の顧客基盤を持っている。マネックス証券との対等な経営統合を急ぐ理由は見つけにくい。
仮に何らかの再編が起きるとしても、対等合併より、買収や事業譲渡に近い形になる可能性が高い。
ただし、それにはNTTドコモ、マネックスグループ、SBIホールディングス、関係当局など多くの関係者の合意が必要になる。企業名を二つ並べて「合併しそう」と語るほど簡単な話ではない。
SBI証券は別の証券事業を取り込んでいる
SBI証券には、これまで証券会社や証券事業をグループへ取り込んできた実績がある。
SBIネオモバイル証券は2024年1月にSBI証券と合併した。また、2026年3月には、岡三証券との間で岡三オンライン証券事業に関する吸収分割契約を締結している。(SBI証券)
そのため、SBI証券が今後も証券業界の再編を進める可能性はある。
ただし、「SBI証券が再編に積極的であること」と「マネックス証券を統合すること」は別問題だ。現在のマネックス証券にはドコモという強力な親会社がいる。ここを無視して統合を予想するのは雑すぎる。
将来SBI証券とマネックス証券が統合される可能性はあるのか
短期的な可能性は低い
今後1~3年程度で考えると、SBI証券とマネックス証券が会社として統合される可能性は低いと考える。
理由は次の通りだ。
- 統合に関する公式発表がない
- マネックス証券はドコモ経済圏の中核として育成されている
- ドコモSMTBネット銀行は両証券会社を公平に扱う方針である
- SBI証券とマネックス証券は規模や戦略が異なる
- 統合には複数の大株主と関係当局の調整が必要になる
特に、SBIホールディングス自身がSBI証券とマネックス証券を公平に扱うと説明している点は大きい。
現在の構想は「二社を一つにする」ことではなく、「一つの銀行から二社を選べるようにする」ことだ。
長期的には完全に否定できない
一方で、10年単位の長期では、統合の可能性を完全に否定することもできない。
ネット証券業界では、国内株式手数料の無料化が進み、売買手数料だけでは利益を出しにくくなっている。システム開発費、セキュリティー対策費、不正アクセス対策などの負担も重い。
今後、業界再編がさらに進み、証券会社の数が減る可能性はある。
例えば、次のような変化が起きれば、SBI証券とマネックス証券の関係が変わることは考えられる。
- ドコモが金融事業の方針を大きく変更する
- マネックスグループが保有株式を売却する
- 証券システムの共同利用が進む
- 国内ネット証券市場の再編が加速する
- SBIグループとNTTグループの資本関係がさらに深まる
ただし、これは現時点の公式計画ではなく、将来あり得る条件を並べたものにすぎない。
「可能性がゼロではない」と「統合が近い」はまったく違う。ここを混ぜると、予想ではなく願望になる。
利用者は統合を期待して口座を動かす必要はない
SBI証券とマネックス証券は別々に使える
SBI証券とマネックス証券の両方に口座を持っていても、現時点で統合を前提に整理する必要はない。
両社には、それぞれ異なる強みがある。
SBI証券は、商品数、銀行連携、クレジットカード積立、国内外の商品、ポイントサービスなどを幅広くそろえている。
マネックス証券は、米国株、中国株、銘柄分析ツール、IPOの抽選方式、dカード積立やdポイント連携などに特徴がある。
NISA口座は一つの金融機関で管理する必要があるが、特定口座や一般口座は複数の証券会社に持てる。
私は、統合の噂だけで資産を移動させるより、それぞれのサービスを比較して使い分けるほうが合理的だと思う。人間は将来の大再編を予想したがるが、実際に払う手数料や受け取るポイントを確認したほうが、たいてい役に立つ。
今後確認するべき公式情報
今後、統合の可能性を判断する場合は、ニュースの見出しではなく、次の発表を確認するべきだ。
- 資本業務提携
- 株式取得や公開買付け
- 連結子会社化
- 経営統合に関する基本合意
- 吸収合併や会社分割
- 証券口座やシステムの移管
「キャンペーンを共同開催する」「銀行口座から入金できる」「ポイントが共通になる」といった内容だけでは、経営統合の根拠にはならない。
サービスはつながっても、会社は別という例は金融業界にいくらでもある。
まとめ
2026年8月6日時点で、SBI証券とマネックス証券が統合されるという公式発表はない。
現在起きているのは、SBI証券とマネックス証券の合併ではなく、ドコモSMTBネット銀行を中心とした金融サービスの連携だ。
旧・住信SBIネット銀行はドコモグループへ入り、2026年8月3日にドコモSMTBネット銀行へ社名を変更した。一方で、SBI証券との連携は継続され、マネックス証券との新しい連携も進められている。
つまり今後は、一つの銀行がSBI証券とマネックス証券の両方とつながり、それぞれが競争する形になる可能性が高い。
私の予想では、短期的な会社統合の可能性は低い。ただし、ネット証券業界全体の再編が進めば、長期的に資本関係が変わる可能性までは否定できない。
現段階では「SBI証券とマネックス証券が統合される」と考えるより、ドコモ、銀行、SBI証券、マネックス証券が会社の枠を超えてサービスをつなげていると理解するのが正確だ。名前が同じ資料に出てきただけで合併扱いしてはいけない。企業再編は、そんな親戚の集まりのような軽さでは決まらない。

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