運動筋トレは本当に健康に良いのか?

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運動習慣は心身の健康にさまざまなメリットをもたらすが、最近の研究では運動は記憶力と思考力の向上にも繋がることが報告されている。運動は“脳に良い”のである。

目次

運動は本当に健康に良いのか?

■運動習慣で認知機能の維持・向上が見込める

先進各国では国民の長寿化により認知症がかつてないほどの深刻な社会問題になっている。
最近の調査によると、全世界で4秒に1人の割合で認知症患者が発見されていて、このままのペースで増え続ければ2050年には1億1500万人の認知症患者が世界に溢れることになる。
認知症については効果的な新薬の開発なども鋭意進められているが、なによりもまずは先手を打った予防策が求められてくる。
そこで認知症予防のためにも見直されてくるのが運動習慣だ。
運動は認知機能の維持にもきわめて効果があることが最近の研究で確かめられている。
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究では、エアロビクスなどの有酸素運動の運動習慣によって脳内の海馬(hippocampus)が大きくなることが突き止められている。
海馬は言語記憶と学習に関係があるとされている脳の部位だ。
このほかにも多くの研究で運動習慣を持つ者はそうでない者よりも記憶力や思考能力に関係する前頭前皮質(prefrontal cortex)と内側側頭葉(medial temporal cortex)にボリュームがある傾向が報告されている。
つまり運動習慣によって認知機能の維持、向上が見込めるのである。
「興味深いのは、半年から1年以上にわたって適度な強度の規則的な運動プログラムに取り組むことと、脳の特定の部位の増量に関係があること」とブリガム・アンド・ウィメンズ病院のスコット・マクギニス医師は語る。
認知機能の維持・向上のためにはそれほど激しい運動は要求されてはおらず、研究チームによれば1時間の早足のウォーキングを週に2回行なうだけでも効果があるということだ。
ちなみに心身の健康のために推奨されている運動時間は週に150分である。
定年退職を迎えるなどして家にこもりがちになれば歩く距離が大幅に減ることからますます認知症のリスクは高まる。超高齢化社会に突入し運動習慣の必要性がさらに重みを増している。

■筋トレは健康に良いのか?

健康のための運動といえばジョギングやジム通いというイメージが強いと思うが、一方で運動といえばもっぱら筋トレだという人々もいるだろう。
あまり健康的な印象を受けないともいえるウェイトトレーニングなどの筋トレだが、有酸素運動と同じように健康にメリットはあるのだろうか。
「有酸素運動が好きでないものの、筋力トレーニングは積極的に行なっている人々に私たちは興味を持ちました。おそらくこうした人々も運動からメリットを受けていると考えました。有酸素運動と筋トレの健康促進要因に及ぼす影響が同等であればそれを証明できます」とオーストリア・ウィーン大学のピーター・グロペル氏は語る。
実験では男性の有酸素運動者(12人)、筋トレ運動者(10人)、非運動者(12人)の3グループに一連の社会的ストレス課題(Trier Social Stress Test、TSST)を受けてもらった。
ストレス課題により実際に心理的ストレスを受けたことで、3グループいずれもコルチゾールレベルと心拍数が高まり、気分が悪化したのだが、その中で抜きん出て高いストレスを受けていたのが非運動者であった。
有酸素運動者と筋トレ運動者は同程度で、それほどのストレスを受けていなかったのだ。
「有酸素運動者と筋トレ運動者は同程度に循環器系の健康との関係性を有しています。我々は有酸素運動者と筋トレ運動者の両方が、高いストレスを浴びても非運動者ほど心拍数を増加させないことを突き止めました。したがって、定期的なトレーニングは、有酸素運動であれ筋トレであれ、メンタルを強くし、ストレスに対処するのに役立ちます」(ピーター・グロペル氏)
今回の研究で筋トレでもじゅうぶんに心身の健康に資することが明らかになった。
運動する時間がなかなか取れないときは床で腕立てや腹筋を短時間行なってみるのもよいだろう。

■体育会系“儀式”に意味はない?

野球の“千本ノック”や空手の“寒中稽古”、あるいはそれぞれの部活やクラブに独自の“儀式”が往々にしてあったりするだろう。
そして世の趨勢としてこのような非科学的で“スポ根”的な“儀式”は一種のパワハラであると批判する声も世界的に高まっている。
ブラジリアン柔術の多くのクラブでは、昇級・昇段を果たしたメンバーの背中をみんなでよってたかって帯でムチ打つという手荒で痛い、いかにも体育会系な祝福が伝統的に行なわれている。
「ガントレット」と呼ばれるこの集団祝福はやはり昨今は批判を浴びることもあり、希望する者にしか行わなかったり、完全に廃止するクラブも出てきているという。

「ガントレット」の一例「YouTube」より
メンバーの一体感を高め発奮材料にもなるとしてこのガントレットのような“儀式”は推奨されたりもするのだが、本当に意味があることなのか。
英・オックスフォード大学をはじめとする合同研究チームがこの問題を探っている。
研究チームは605人のブラジリアン柔術の選手を調査したのだが、ガントレットを経験した者は52.9%であった。そして収集した回答データを分析したところ、ガントレットとクラブチームの一体感には特に関係がないことが導き出された。
つまりガントレットなどの体育会系の“儀式”には意味がないことになる。
しかしそれは受ける側次第であることも明らかになった。
つまりガントレットを望んで体験した者には、この“儀式”によってチームへの高い帰属意識が育まれていたのである。
いかにも体育会系的な“儀式”には基本的には意味はないが、それを望む者にはそれなりの効果があるということになる。
“儀式”を続けるかどうか、チームや道場の運営者側には慎重な判断が求められるだろう。
メンバーの年齢層の幅広さや男女合同かどうかなども影響してはくるだろうが、基本的には手荒い“儀式”は意味がない以上はなくしたほうがよいだろう。
残すにしても強制することは絶対に避けたい。
チームの一体感はもっと別の手段で高めたいものである。

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