イスラエルとイランの衝突に米国が本格的に介入し、株式市場は再び大きな不安を抱えている。
「戦争が広がれば、株価はすべて暴落するのか?」
「原油や金を買えば、安全に利益を出せるのか?」
結論から言えば、それほど単純ではない。
実際に2026年7月の市場では、米国とイランの緊張が高まった日に原油価格が急上昇し、S&P500が下落した。一方、その翌日には半導体株を中心にNASDAQが上昇している。戦争が続いていても、すべての株が同じ方向へ動くわけではないのだ。
私も地政学リスクが高まると、つい「今すぐ何かを売るべきではないか」と考えてしまう。しかし、ニュースを見て慌てて売買する方法は危険だ。投資家が見るべきものは、攻撃の映像だけではない。
原油価格、ホルムズ海峡、米国の金利、インフレ、企業利益まで確認する必要がある。
イスラエル・イラン衝突と米国の介入はどうなっているのか
米国の介入は防衛支援だけではなくなった
イスラエルとイランの対立では、米国は以前からイスラエルの防空を支援してきた。
しかし、現在の米国の介入は、ミサイルの迎撃や情報提供だけではない。米中央軍は2026年7月7日、ホルムズ海峡を通る商船への攻撃に対する報復として、イラン国内の軍事目標約80か所を攻撃したと発表した。
さらに米財務省は、イラン産原油などの販売を一時的に認めていた許可を7月7日に取り消した。軍事攻撃だけでなく、経済制裁も再び強化された形だ。
つまり、現在の問題は「イスラエルとイランの争い」だけではない。
米国とイランの直接的な衝突、原油輸送への攻撃、経済制裁が同時に進んでいる。株式市場にとっては、かなり面倒な状態だ。
市場が最も注目しているのはホルムズ海峡だ
投資家が特に注目すべき場所は、ホルムズ海峡である。
国際エネルギー機関によると、2025年には1日平均約2,000万バレルの原油と石油製品がホルムズ海峡を通過していた。これは世界の海上原油取引のおよそ25%にあたる。
また、米国エネルギー情報局は、ホルムズ海峡を原油と液化天然ガスの重要な輸送路としている。2024年には、世界のLNG取引の約20%もこの海峡を通過していた。
ここが長期間止まれば、世界のエネルギー供給に大きな穴が開く。
だから市場は、イスラエルやイランの発表だけでなく、タンカーが実際に海峡を通過できているかを見ている。
イスラエル・イラン衝突が株式市場へ与える影響
原油高がインフレを再び悪化させる
最も大きな影響は原油価格だ。
戦闘や輸送停止によって原油の供給が減ると、ガソリン、電気、物流、航空、化学製品などの費用が上がる。
企業は高くなった費用を自社で負担するか、商品の価格を上げなければならない。どちらを選んでも、企業や消費者に痛みが出る。
米連邦準備制度理事会も、中東での衝突によるエネルギー価格の上昇が、短期的なインフレ予想を押し上げたと説明している。
原油高が続けば、米国の中央銀行は簡単に利下げできなくなる。
金利が高い状態が続けば、将来の利益への期待で買われている成長株には逆風となる。特に、利益がまだ少ない新興企業や、株価が高く評価されている企業は注意が必要だ。
株価は戦争だけでは決まらない
地政学リスクが高まると、株式市場全体が下落する場面はある。
しかし、戦争が続いているからといって、株価が毎日下がるわけではない。
2026年7月8日には、米国とイランの緊張再燃を受けて原油価格が約5%上昇し、S&P500は下落した。ところが翌日には、半導体株への期待が中東情勢への不安を上回り、NASDAQは大きく上昇した。
この動きは重要だ。
市場は戦争だけを見ていない。AI需要、企業業績、金利、景気、政府の政策も同時に見ている。
「戦争だから全部売る」という判断は、あまりにも雑だ。
上がりやすい業種と下がりやすい業種が分かれる
イスラエル・イラン衝突が続く場合、業種によって影響は大きく変わる。
原油や天然ガスの価格が上がれば、石油会社やエネルギー設備会社は利益を伸ばしやすい。
軍事費が増える期待が高まれば、防衛、航空宇宙、サイバーセキュリティ関連企業にも資金が入りやすい。
一方、航空会社、運送会社、化学メーカー、旅行会社などは、燃料費の上昇による悪影響を受けやすい。
小売業や外食産業も注意が必要だ。物流費と仕入れ価格が上がっても、すべてを商品価格へ転嫁できるとは限らないからだ。
投資家が今注目すべき主なリスク
ホルムズ海峡が再び長期間止まるリスク
最大のリスクは、ホルムズ海峡の通行が再び長期間止まることだ。
国際エネルギー機関によると、2026年6月には海峡を通る輸送の再開によって世界の原油供給が回復した。しかし、供給量は戦争前の水準より日量約940万バレル少ない状態だった。
つまり、原油市場は完全には正常化していない。
小さな攻撃や交渉の失敗でも、原油価格が大きく動く可能性がある。
インフレと金利上昇が同時に進むリスク
原油価格が上がると、インフレは強くなりやすい。
しかし、物価が上がったからといって、景気が良くなるわけではない。生活費と企業の費用が増え、消費や利益が弱くなる場合がある。
これは株式市場にとって厳しい組み合わせだ。
景気が弱いのに金利を下げられない状態になれば、幅広い株が売られる可能性がある。
国際通貨基金も、中東戦争による商品価格、インフレ、金融環境への影響は出ていると説明している。ただし、現時点では世界的な景気後退を示すほどではないとしている。
まだ崩れてはいない。しかし、安心できる状態でもない。
米国の介入がさらに広がるリスク
米国の攻撃がイラン国内の軍事施設だけで終わらず、港湾、石油施設、通信施設などへ広がれば、経済への影響は大きくなる。
また、イラン側が米軍基地、商船、湾岸諸国の施設への攻撃を増やせば、戦争が周辺国へ広がる恐れもある。
この場合、原油だけでなく、海上輸送の保険料や運賃も上昇する。
市場が本当に恐れているのは、一度の攻撃ではない。報復が続き、誰も止められなくなることだ。
イスラエル・イラン衝突で考えられる投資のチャンス
エネルギー株は利益を伸ばす可能性がある
原油価格が高い状態で安定すれば、石油会社や天然ガス会社には追い風となる。
ただし、原油が急騰した後にエネルギー株へ飛びつくのは危険だ。
停戦交渉や輸送再開が発表されれば、原油価格は短期間で下落する。エネルギー株も一緒に売られる可能性がある。
狙う場合でも、一度に大きく買うべきではない。何回かに分けるべきだ。
防衛とサイバーセキュリティは長期テーマになりやすい
中東情勢が悪化すれば、各国は防空、ミサイル防衛、無人機、通信、防衛用ソフトウェアへの支出を増やしやすい。
また、現代の戦争ではサイバー攻撃も重要になる。
電力、金融、物流、通信を守るためのサイバーセキュリティは、戦争が終わっても必要だ。
短期的な値上がりだけを狙うのではなく、政府との契約、受注残高、利益率が伸びている企業を確認すべきだ。
優良株の下落は買い場になる場合がある
地政学リスクによって市場全体が売られると、業績に大きな問題がない企業まで下落することがある。
このような場面では、長期的に成長できる企業や、幅広い株価指数を安く買える可能性がある。
私は、戦争で上がりそうな銘柄を当てに行くより、下落した優良資産を少しずつ買う方法のほうが現実的だと考える。
戦争の終わる日を当てることは難しい。しかし、利益を出し続ける企業を選ぶことは、まだ可能だ。
金は必ず上がるとは限らない
戦争が起きると、金は安全資産として買われやすい。
しかし、今回のように原油高によって利上げ観測が強くなると、金価格が下がる場合もある。2026年7月には、中東情勢が悪化しているにもかかわらず、金利上昇への警戒から金価格が下落する場面があった。
「戦争が起きたから金を買えば勝てる」という考えは危険だ。
金には利息や配当がない。金利が高くなると、金を持つ魅力が弱くなる場合がある。
今の相場で投資家が確認すべきポイント
原油価格だけでなく5つの数字を見る
私は、次の5つを確認するべきだと考える。
1つ目は、ブレント原油価格だ。
2つ目は、ホルムズ海峡を通る船の数だ。
3つ目は、米国のインフレ率だ。
4つ目は、米国の長期金利だ。
5つ目は、企業が発表する利益見通しだ。
ニュースの見出しより、これらの数字のほうが株価に長く影響する。
現金を残して一度に買わない
不安定な相場では、現金を使い切らないことが重要だ。
株価が5%下がった時点で全額を投資すると、その後10%、20%と下がった場合に何もできなくなる。
数回に分けて買えば、さらに下落した時にも対応できる。
逆に、恐怖で株をすべて売る必要もない。
自分の生活費に必要な現金を確保し、株、債券、金、現金などを分けて持つべきだ。退屈に見えるが、この方法が強い。
ニュースを見て投資方針を毎日変えない
地政学リスクが高い時期には、刺激の強い情報が増える。
「第三次世界大戦が始まる」
「原油価格は必ず2倍になる」
「株価は歴史的な暴落になる」
このような断定は注目を集める。しかし、投資判断には役立たない場合が多い。
投資方針を毎日変えれば、高値で買い、安値で売ることになりやすい。
確認すべきなのは、自分の資産配分がリスクに耐えられるかどうかだ。
まとめ
イスラエル・イラン衝突と米国の介入は、株式市場に大きな不安を与えている。
特に重要なのは、ホルムズ海峡、原油価格、インフレ、米国の金利だ。
衝突が長引けば、エネルギー、防衛、サイバーセキュリティ関連には追い風となる可能性がある。一方、航空、運送、小売、外食などには強い逆風となりやすい。
ただし、戦争が起きたから株がすべて下がるわけではない。金や原油が必ず上がるわけでもない。
投資家がやるべきことは、未来を正確に当てることではない。
現金を残し、資産を分け、値動きが大きい時にも投資を続けられる形を作ることだ。
恐怖だけで売る必要はない。利益への期待だけで飛びつく必要もない。
戦争の行方は読めなくても、自分が取るリスクは管理できる。それが今の相場で最も大切な判断だ。

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