「1Gbpsの光回線を契約したのに、速度を測ったら500Mbpsしか出ない。これって遅すぎない?」
こう感じたことがある人はかなり多いはずです。
1Gbpsと書いてある以上、スピードテストでも「1000Mbps」と表示されると思ってしまいます。しかし、ここにはネット回線特有のかなり分かりにくい仕組みがあります。
結論から言うと、1Gbps契約で実測1000Mbpsが出ないのは基本的に正常です。
むしろ重要なのは「1000Mbps出ていないこと」ではありません。
LANが1Gbpsで正しくリンクしているか、100Mbpsに落ちていないか、そして回線側とLAN側のどちらがボトルネックなのかです。
NTT東日本も、1Gbpsという数字について「技術規格上の最大値であり、実際の通信速度を示すものではない」と明記しています。利用する端末や回線混雑によって速度は大きく低下する場合があります。つまり、「1Gbps契約=常時1Gbps」ではありません。ここを知らずにルーターを買い替え続けると、普通にお金を捨てることになります。
今回は、1Gbps回線の規格値と実測値の違い、LANケーブル、ルーター、パソコン、Wi-Fi、PPPoE・IPoEなど、ネット回線が遅くなる原因をできるだけ分かりやすく整理します。
1Gbpsとはそもそも何なのか?
1Gbps=毎秒1GBではない
まず最初に間違えやすいのが「Gbps」と「GB/s」の違いです。
1Gbpsは、
1Gbps=1000Mbps=1,000,000,000bit/秒
という意味です。
一方、パソコンでファイル容量を見るときによく使う「MB」「GB」はByteです。
1Byteは8bitなので、
1Gbps ÷ 8=約125MB/s
となります。
つまり、1Gbpsの通信を理論上フルに使えたとしても、ファイル転送速度として見ると最大は約125MB/sです。Microsoftも10GbEについて、10Gbps=1.25GB/sが理論上の最大値になると説明しており、1Gbpsならその10分の1となります。
「1Gbpsだから1秒で1GBダウンロードできる」と思っていると、最初の段階ですでに8倍ズレています。
ネットワーク界は単位の時点から初心者を振り落としにきます。
1Gbps回線なのに1000Mbps出ない理由
「最大1Gbps」は速度保証ではない
光回線で表示されている「最大1Gbps」は、基本的に規格上の最大通信速度です。
たとえばNTT東日本のフレッツ 光ネクストでは、上り・下り最大概ね1Gbpsのサービスがありますが、公式サイトでも実際の速度については利用環境や端末、回線混雑によって大幅に低下する可能性があると説明しています。
そのため、
- 契約回線:1Gbps
- LANリンク速度:1Gbps
- スピードテスト:500Mbps
だからといって、すぐに異常とは判断できません。
インターネットでは、自宅から測定サーバーまで大量の設備を通ります。
自宅のLANが完璧でも、プロバイダーや接続先サーバー、途中経路が混雑していれば速度は落ちます。
通信にはデータ以外の情報も必要になる
1Gbpsの通信回線を使っているからといって、1Gbpsすべてを動画やファイルのデータとして利用できるわけではありません。
Ethernet、IP、TCPなどでは、通信を成立させるためのヘッダーなどが追加されます。
Ethernet上の一般的なIP通信ではMTUが1500Byteとなり、さらにIPヘッダーやTCPヘッダーなどが必要になります。RFC 894ではEthernet上のIPデータグラム最大長が1500 octetと定められ、IPv4では一般的なIPヘッダーが20 octet、TCPにもヘッダーがあります。
つまり、
回線上を流れるすべてのデータ=自分がダウンロードしているファイル
ではありません。
そのため1Gbps EthernetでTCP通信を行った場合、実際にアプリが使える通信量は規格値より小さくなります。
1Gbpsでリンクしている有線LANで、実測が900Mbps台になることがあるのは不思議な現象ではありません。
有線LANで1Gbpsを出すために最も重要なのは「リンク速度」
スピードテストより先にLANリンク速度を見る
私ならネット回線が遅いと感じたとき、最初からSpeedtestの数字だけを信用しません。
まず確認するのは、
PCとルーターが何Mbpsで接続されているか
です。
WindowsならPowerShellから、
Get-NetAdapter
を実行するとネットワークアダプターの状態を確認できます。Microsoft公式でもGet-NetAdapterはネットワークアダプターの基本情報を取得するコマンドとして公開されています。
ここで重要なのがリンク速度です。
理想は、
1.0Gbps
です。
もしここが、
100Mbps
になっているなら、光回線が1Gbpsでも高速通信はできません。
インターネット側がどれだけ速くても、PCまでの道路が100Mbpsしかないからです。
1Gbps回線なのに実測90Mbps前後ならLAN環境を疑うべき
100Mbpsリンクがかなり怪しい
個人的に一番分かりやすい症状がこれです。
スピードテストを何度実行しても、
- 92Mbps
- 94Mbps
- 96Mbps
といった具合に、100Mbps直前で止まる場合です。
この場合、光回線よりも先にLAN環境を疑った方がいいです。
NTT東日本も、100Mbpsを超える速度で利用するためには、1Gbps対応のLANケーブルやPCなどの環境が必要だと案内しています。
つまり回線が1Gbpsでも、
ONU → ルーター → LANケーブル → ハブ → PC
この中に100Mbpsまでしか対応していない機器が1つ入るだけで、そこが上限になります。
ネットワークは最も遅い部分に合わせてくれるという、妙に律儀で迷惑な仕組みです。
LANケーブルはCat5e以上なら1Gbpsに対応できる
Cat8を買えば速くなるわけではない
ネットが遅いと「LANケーブルをCat7やCat8に交換すれば速くなる」と考える人もいます。
しかし1Gbps環境なら、基本的にそこまで必要ありません。
IEEEの1000BASE-T規格は1000Mbps通信を規定しており、NTT東日本も1Gbps環境では1000BASE-T対応LANポートとカテゴリ5e以上のLANケーブルを推奨しています。バッファローも1000BASE-Tではエンハンストカテゴリ5、つまりCat5e以上を案内しています。
そのため、
1GbpsならCat5e以上で基本的には十分
です。
もちろん新しく配線するならCat6やCat6Aを選ぶのもありです。
特に将来的に2.5GbEや10GbEへ変更する予定があるなら、余裕を持たせる意味はあります。
しかし、
Cat5eで1Gbpsリンクしている環境をCat8に交換したら500Mbpsが1000Mbpsになる
という単純な話ではありません。
規格が高いほどインターネットが速くなるなら、LANケーブル売り場はもっと平和です。
ケーブルの破損でも100Mbpsに落ちる場合がある
見落としやすいのがケーブルそのものの問題です。
LANケーブルが古い、コネクタが傷んでいる、内部の線が破損している、といった場合には正常に通信できないことがあります。
MicrosoftもEthernet接続のトラブルシューティングとして、LANケーブルの接続確認や別のEthernetケーブルへの交換を案内しています。
1Gbps対応と書かれたケーブルを使っているのに100Mbpsリンクになるなら、
まずLANケーブルを別のCat5e以上のケーブルに交換する
という方法はかなり有効です。
ルーターやハブのLANポートも確認する
全ポートが1Gbpsとは限らない
LANケーブルだけ新しくしても、接続先が100Mbpsなら意味がありません。
古いルーターやスイッチングハブでは、
10BASE-T/100BASE-TX
までしか対応していない製品があります。
1Gbpsで使うなら、
1000BASE-T
対応が必要です。
IEEEでは1000BASE-Tが1000Mb/s Ethernetとして規格化されています。
特に注意したいのが、
- 古いスイッチングハブ
- USB-LANアダプター
- ドッキングステーション
- 壁内LAN
- 中継用ルーター
です。
ONUからPCまで一直線に見えても、途中に100Mbps機器が隠れていることがあります。
PC側のLANポートも1Gbps対応が必要
USB-LANアダプターがボトルネックになることもある
最近のデスクトップPCなら1GbE以上に対応していることが多いですが、古いPCや安価なUSB-LANアダプターでは100Mbpsまでの場合があります。
また、LANアダプターが1Gbps対応でも、ドライバーや設定、ケーブルなどの影響によって低い速度でリンクする場合があります。
Windowsではネットワークアダプターの速度・デュプレックス設定が用意されており、MicrosoftのNDIS仕様でも1,000Mbpsが1Gbpsとして定義されています。
基本的には「自動ネゴシエーション」で問題ありません。
無理に1Gbps Full Duplexへ固定するより、まずケーブルや接続機器を確認した方が安全です。
Wi-Fiで測定すると話はさらに複雑になる
1Gbps回線でもWi-Fiが1Gbpsになるわけではない
光回線が1Gbpsでも、スマートフォンをWi-Fi接続してスピードテストした数字は「光回線そのものの速度」ではありません。
途中に、
光回線 → ONU → ルーター → Wi-Fi → スマートフォン
という無線区間が入るからです。
Wi-Fiでは端末側の対応規格、接続帯域、アンテナ構成、距離、壁、周辺電波などの影響を受けます。
NTT東日本も光回線の最大通信速度について、端末機器の仕様など利用環境によって実速度が大幅に低下する場合があると説明しています。
そのため回線速度を正確に確認したい場合、私はまず、
PCをルーターへ有線LANで直接接続
して測ります。
Wi-Fiで300Mbpsだったからといって、光回線自体が300Mbpsしか出ていないとは判断できません。
LANは速いのにインターネットだけ遅い場合は回線側を疑う
家庭内LANとインターネット速度は別物
ここは非常に重要です。
たとえば家庭内にPCを2台用意して、PC同士では900Mbps以上出るとします。
しかしSpeedtestでは200Mbpsしか出ない。
この場合、
家庭内LANは正常で、インターネット側にボトルネックがある可能性が高い
と切り分けできます。
LAN内部の速度測定には「iperf3」というツールがあります。
iperf3はESnetが開発しているネットワークスループット測定ツールで、TCPやUDPなどの通信速度を測定できます。
公式情報:
iperf3公式サイト
たとえば、
PC A:iperf3サーバー
PC B:iperf3クライアント
として測定すれば、インターネットを経由せず家庭内LANだけの速度を確認できます。
これで高速なら、LANケーブルやハブを延々交換する必要はありません。
原因はもっと外側です。
PPPoE接続なら混雑が原因になる可能性もある
夜だけ遅くなるなら接続方式も確認する
「昼間は500Mbpsなのに夜になると100Mbps以下になる」
という場合、利用者が増える時間帯の混雑も考えるべきです。
特に従来型のPPPoE接続では、プロバイダー側の設備を経由する必要があり、通信量が増えた場合に混雑する可能性があります。
NTTドコモビジネスも、IPoEはPPPoEより大容量化した設備を利用し、混雑しにくいネットワーク構成になっていると説明しています。
そのため対応回線なら、
IPv6 IPoE/IPv4 over IPv6
に対応しているか確認する価値があります。
ただし、「IPv6にしただけで必ず爆速になる」という意味ではありません。
LAN側が100Mbpsなら、IPv6に変えても100Mbpsの壁は消えません。
先に家庭内LANを正常化するべきです。
1Gbps回線が遅いときの確認順序
私ならこの順番で調べる
ネット回線が遅いときに、いきなりルーターを買い替えるのはおすすめしません。
次の順番で調べた方が圧倒的に効率的です。
1.PCをルーターへ有線LANで直接接続する
まずWi-Fiを外します。
2.LANリンク速度を見る
1.0Gbpsになっているか確認します。
100Mbpsなら、まだインターネット回線を疑う段階ではありません。
3.LANケーブルを交換する
Cat5e以上の正常なケーブルへ交換します。NTT東日本も1Gbps環境ではCat5e以上を推奨しています。
4.ルーター・ハブ・PCのLANポートを確認する
すべて1000BASE-T以上に対応しているか確認します。
5.スピードテストを複数回行う
朝、昼、夜など時間帯を変えて測ります。
6.家庭内LANをiperf3などで測る
LAN内部で十分な速度が出れば、自宅LANの問題ではない可能性が高くなります。
7.PPPoE/IPoEを確認する
PPPoEを利用しているなら、契約しているプロバイダーがIPoEやIPv4 over IPv6に対応しているか確認します。IPoEはPPPoEより混雑しにくい構成にできるとされています。
この順番なら原因をかなり絞れます。
1Gbpsから10Gbpsへ変更すれば解決するとは限らない
LANが100Mbpsなら10Gbps契約でも100Mbps
最近では10Gbps光回線も珍しくなくなりました。
しかし現在1Gbps回線で100Mbpsしか出ていない人が、10Gbps回線へ変更すれば一気に10Gbps近く出るとは限りません。
10Gbps回線でも、LAN環境が100Mbpsなら100Mbpsが上限になります。
さらに10Gbpsを活かすには、
- 10GbE対応ルーター
- 10GbE対応LANポート
- 対応LANケーブル
- 高速なPC
- 高速なストレージ
など、家庭内ネットワーク全体の見直しが必要になります。
NTT東日本の10Gbpsサービス「フレッツ 光クロス」も最大概ね10Gbpsのベストエフォート型であり、その数字は実際の通信速度を保証するものではありません。
1Gbpsすら正常に使えていない状態で10Gbpsへ課金するのは、蛇口が詰まっているのに水道管だけ太くするようなものです。
1Gbps回線なら何Mbps出ていれば正常なのか?
数字だけで正常・異常を決めない
「結局、何Mbps出れば正常なのか?」
ここが一番気になるところだと思います。
しかし、インターネット速度について「○Mbps以上なら必ず正常」と一律には決められません。
回線事業者自身も、実速度は端末の仕様や利用環境、回線混雑などによって低下すると明記しています。
私ならスピードテストの数字だけではなく、
LANリンク速度
↓
家庭内LAN速度
↓
インターネット速度
の3段階で判断します。
1Gbpsリンクしており、家庭内LANでは十分な速度が出ているなら、LAN環境はかなり正常に近いと考えられます。
逆にSpeedtestが95Mbps前後で頭打ちになり、リンク速度も100Mbpsなら、かなり明確なボトルネックです。
この違いを理解するだけで、ネット回線のトラブル解決はかなり簡単になります。
まとめ
「1Gbps回線なのに1000Mbps出ない!」
この数字だけを見て慌てる必要はありません。
1Gbpsは規格上の最大値であり、実際の通信速度そのものを保証する数字ではないからです。NTT東日本も最大通信速度と実使用速度は別であることを明記しています。
重要なのは、どこで速度が落ちているのかを切り分けることです。
特に確認したいのは、
- LANリンクが1Gbpsになっているか
- LANケーブルがCat5e以上か
- ルーターやハブが1000BASE-T対応か
- PC側LANポートが1Gbps以上か
- Wi-Fiではなく有線LANで測定したか
- 家庭内LAN自体は高速か
- PPPoEではなくIPoEが利用できないか
という点です。
1Gbps回線で速度が遅いからといって、いきなり10Gbpsへ乗り換えたり高級ルーターを買ったりする必要はありません。
まず確認するべきなのは「回線契約」ではなく、LANリンク速度です。
ここが100Mbpsなら原因はかなり近くにあります。
逆に1Gbpsで正常にリンクしていて家庭内LANも高速なら、ようやくプロバイダーやインターネット側を疑う段階です。
ネット回線の速度問題は複雑に見えますが、入口から順番に調べれば意外と単純です。
「最大1Gbps」と「実測1Gbps」は別物。この違いを理解してから環境を改善するべきです。
無駄な機器交換をする前に、まずLAN環境から確認する。それが一番確実です。

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