Windows 11 の次期大型アップデート「25H2」(通称 Windows 11 2025 Update)は、2025年9月下旬から順次ロールアウトが始まっていますが、導入をためらう声も少なくありません。「25H2 にして大丈夫?」という疑問や、不具合報告への警戒は当然のこと。この記事では、25H2 の現時点での既知の問題を整理するとともに、それらの原因、対策、アップグレードをする/しない判断基準まで、できるだけ最新情報を元に解説します。
25H2 の導入状況と注意すべき点
まず押さえるべきは、25H2 の配信は 段階的に展開 されており、すべてのデバイスで一斉に降ってくるわけではありません。(Microsoft Learn)
Microsoft 側も互換性チェックやセーフガード(適用制限)を用意しており、すべてのマシンに即座に適用されることを目指しているわけではないという点がポイントです。(Microsoft Learn)
ただしこれは、「不具合がない保証」ではありません。むしろ、25H2 は最新の機能と修正を含む変化の多いアップデートなので、既存のドライバやソフトウェアとの整合性のズレが、さまざまなトラブルを呼び込む可能性を孕んでいます。
以下、現時点で報告されている主要な不具合や懸念点、それに関連する対処策を詳しく見ていきましょう。
既知の不具合と報告事例
KB5066835 のインストール失敗・エラー
25H2 における最新のセキュリティ更新パッチ「KB5066835」を巡っては、適用に失敗する事例が複数報告されています。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
表示されるエラーコードとしては 0x800f0991
、0x800f0983
、0x800f0922
などが知られており、環境によっては更新処理が止まるケースがあります。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
このような更新失敗は、OS の整合性チェック異常、更新パッケージの破損、ドライバの非対応など複数の要因が絡んでいる可能性があります。
ゲーム/ムービー表示で「真っ赤になる」症状
特に国内のアドベンチャーゲームやギャルゲーなど、動画再生を多用するタイトルにおいて、OPやEDなどムービーシーンが赤くなって異常表示される不具合が報告されています。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
この不具合は、2025年8月以降のプレビューアップデート(例:KB5064081)を経由した環境で現れる傾向があり、今回の KB5066835 でも修正が追いついていないようです。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
一時的な回避策として、「古い quartz.dll を上書きする」という手法もネット上で報告されていますが、システムを不安定にするリスクも伴うため慎重さが求められます。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
マウス・キーボードが回復環境で動作しない
10月の更新により、Windows 回復環境 (WinRE) が起動した際にマウスやキーボードが動作しないという報告が出ています。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
この問題は KB5067039 に起因するとされ、25H2/24H2 両環境で確認されています。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
もし回復環境を使う場面があるなら、この不具合は重大度が高いと言えるでしょう。
再生障害:Blu-ray/DVD・DRM 保護コンテンツ
25H2 には、HDCP(著作権保護技術)や DRM を使ったコンテンツの再生に支障を来す既知の問題があります。(Microsoft Learn)
特定の Blu-ray/DVD 再生アプリ、デジタルテレビ録画アプリ、DRM 音楽/映像再生ソフトで、ブラックスクリーン、再生遅延、停止などが発生するという報告があります。(Microsoft Learn)
Microsoft 側はこの再生障害の問題を「既知の問題」として認めており、部分的な修正を予告していますが完全解決には至っていません。(Microsoft Learn)
WUSA(.msu)インストール経由での失敗
ネットワーク共有フォルダー上に配置した複数の .msu ファイルを WUSA 経由でインストールしようとすると、ERROR_BAD_PATHNAME
エラー等で失敗するケースがあります。(Microsoft Learn)
これは、複数 .msu ファイルを含むフォルダーからのインストールが問題となるもので、個別に .msu ファイルをローカルにコピーしてから実行する回避が有効とされています。(ソフトアンテナ)
ドライバ互換性・ネットワーク/ストレージ絡みの不具合
アップデート適用後、ネットワーク接続不能、SSD/HDD が認識されない、ドライブが RAW 表示になるなどの報告もあります。(イノインク)
これらは、古いデバイスドライバと OS の整合性が崩れたことによる典型的な症状で、特に非純正パーツやカスタム構成の PC で起きやすい傾向があります。
なぜ不具合が起きるのか:原因分析
25H2 に限らず、Windows の大規模アップデートにはリスクが伴います。以下は、そうした不具合が発生しやすい典型的な要因です。
ドライバの非対応・互換性のズレ
最も大きなボトルネックになるのが、デバイスドライバの対応です。特にネットワークアダプタ、ストレージコントローラ、グラフィックドライバ、音声ドライバなどは OS 自身との密接な連携が求められるため、少しの差異でもトラブルを引き起こします。
OS 更新プロセスの欠損や整合性の崩れ
更新プログラムのインストールには複数ステップがあり、更新ファイルが破損していたり、適用途中で失敗したりすることがあります。こうした失敗が累積すると、OS の整合性が崩れてエラーを誘発します。
ストレージ(SSD/HDD)ファームウェアの不整合
記憶デバイス側のファームウェアが古いままだと、最新 OS と通信で不整合を起こす場合があります。たとえば高速 NVMe SSD の認識異常やアクセス遅延、最悪読み書き不能になるケースも報告されています。
非対応ハードウェア or 改造構成
正式な Windows 11 対応要件を満たしていない PC に無理に導入しているケースでは、複数の不具合が発生しやすくなります。対して公式対応機では、セーフガードホールドなどを通じてある程度抑制されることもあります。
25H2 を適用しても「大丈夫か?/待つべきか?」の判断材料
この時点で 25H2 にアップグレードしてもよいかどうかは、あなたの PC 環境や用途次第です。以下の項目をチェックして、判断材料にしてください。
利用用途と許容リスク
- 日常利用・ビジネス用途の PC:安定性重視なら、しばらく様子を見てから適用するほうが無難
- ゲームやクリエイティブ用途:動画描画まわりのバグやパフォーマンス低下の報告があるため、影響範囲を先に調べておきたい
- メインマシンではない検証用 PC:不具合を前提に試してみるのはアリ
ドライバ・ソフトウェアの対応状況確認
PCメーカー(またはパーツメーカー)が 25H2 に公式対応しているかどうか、ドライバが更新済かどうかを確認しておきましょう。特にネットワークドライバ、ストレージ、グラフィックドライバは要チェックです。
バックアップ体制の有無
もしアップデート後に問題が起きても戻せるよう、事前にシステムイメージバックアップや復元ポイントを作成しておくのは必須です。
段階展開を活かす
Microsoft は通常、対応可能なデバイスから段階的に 25H2 を展開します。自分のマシンにまだ提供されていなければ、強引に導入せず、Microsoft 側の適用対象になるまで待つのも戦略のひとつです。(Microsoft Learn)
不具合への対処策・回避策
以下は報告されている不具合に対する、現時点で有効とされる対処法・回避策の一覧です。ただし、環境によっては逆効果となる可能性もあるため、慎重に操作してください。
Windows Update の問題を自動で修復
「設定 → システム → 回復 → Windows Update で問題を解決する」など、Windows 標準のトラブルシューティング機能を使うと、更新適用不能エラーの改善につながるケースがあります。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
該当パッチのアンインストール
もし KB5066835 や過去のアップデートが原因と推察できる不具合が出た場合、該当パッチを一時的にアンインストールして様子を見ることは可能ですが、セキュリティリスクを伴うため十分注意が必要です。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
ドライバを最新版にする/ロールバックする
不安定なドライバが原因と考えられる場合、対応する最新ドライバを公式サイトから入手して更新する、または直近の安定版バージョンに戻す(ロールバック)ことで解決するケースがあります。
quartz.dll を古いバージョンに置き換える手法(応急)
ムービー描画異常が発生する環境では、C:\Windows\SysWOW64\
配下に旧版の quartz.dll
を上書きする一時的な回避策が報告されています。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z)
ただしこの方法は OS の整合性を破る恐れがあるため、動作確認後には元に戻せる準備をしておくべきです。
回復環境マウス/キーボード不具合の回避
もし WinRE で入力デバイスが使えなくなった場合、USB 接続の別デバイスや有線マウス/キーボードの併用、あるいは外部ブート用 USB からの復旧試行が一時的に有効なケースがあります。
更新手順を変更する(.msu → ローカル実行)
WUSA 経由で失敗するケースでは、該当 .msu ファイルを一旦ローカルフォルダーにコピーしてから実行することで通る場合があります。(ソフトアンテナ)
まとめ:2025年10月時点で「大丈夫」か?
現時点で言えることをまとめると、**「完全に安心とは言えないが、条件次第で導入してもよい」**というのが妥当な見解です。
大多数の公式対応機や標準構成 PC では、段階展開や互換性チェックによって、深刻な問題には遭いにくい設計がなされています。(Microsoft Learn)
ただし、ゲーム用途、動画描画用途、独自構成 PC、非純正パーツ使用環境では不具合が出る可能性が目立っており、事前の準備と慎重な判断が不可欠です。
もしあなたの PC が公式対応範囲内で、かつ主要なドライバが最新化済み・バックアップ体制が整っているなら、25H2 を導入しても大きなトラブルは回避できる可能性があります。ただし 「待機して情報を収集」 という選択肢も十分有効です。
トラブルを最小化するために、アップグレード前には必ず以下を実行しておきましょう:
- システムイメージバックアップの取得
- 復元ポイントの作成
- 主要ドライバおよび BIOS/ファームウェアの最新版確認
- 不要なカスタム構成や非公式ドライバの除外
これらを押さえておけば、もし何かあっても元に戻す手段を確保した上で、比較的安全に 25H2 に移行できる可能性は高まります。
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