市県民税とは?まずは基本をおさらい
市県民税(住民税)は、都道府県民税と市区町村民税を合わせた地方税で、前年の所得に基づいて課税されます。主に以下の2種類に分けられます。
- 均等割:所得に関係なく一定額を納める
- 所得割:所得に応じて課税される
個人事業主やフリーランスであっても、前年に所得があればこの住民税がかかってきます。確定申告後に市区町村から通知が来ることが多いでしょう。
市県民税は経費にできる?結論から言うと「できない」
結論から言えば、市県民税は経費として処理できません。理由は非常にシンプルで、「事業に直接関係しない個人の税金」であるためです。
所得税や住民税、健康保険料、国民年金保険料など、事業主個人に課される公租公課は、経費(必要経費)として認められていません。これは、所得税法第45条「必要経費の特例」などによって明確に規定されています。
なぜ経費にならない?根拠と考え方を解説
税務上の「必要経費」とは、事業の収入を得るために直接かかった費用を指します。たとえば以下のような支出です:
- 事務所の家賃や光熱費
- 取引先との交際費
- 業務で使うパソコンやソフトウェア
一方、市県民税はその人の「所得」に課されるものであり、事業活動そのものとは関係がないとみなされるのです。たとえ事業収入によって課税額が増えたとしても、それは個人への課税であって事業経費には含まれません。
経費で処理できる税金とできない税金を整理
「税金=経費になる」というわけではありません。実際には次のような分類になります。
経費にできる税金(例)
- 個人事業税
- 消費税の納税準備金(簡易課税制度などを除く)
- 固定資産税(事業用資産に限る)
- 自動車税(事業用車両に限る)
経費にできない税金(例)
- 所得税
- 市県民税(住民税)
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
こうした分類を知らずに、市県民税をうっかり経費に入れてしまうと、税務調査で否認される可能性があります。特にフリーランスや開業したての個人事業主の方は注意が必要です。
税務処理でやってはいけない「グレーな経費化」
中には、「なんとかして住民税も経費にできないか?」と考えてしまう方もいます。たとえば以下のようなグレーな処理が一部で見受けられます。
- 振込手数料と一緒にして経費計上
- 事業主貸として帳簿に記載せずに処理
ですが、これらは明確な税務上のリスクがあります。住民税を経費化する方法は存在しませんし、やろうとすれば不正経理とみなされる恐れがあるため、絶対に避けましょう。
節税したいなら他の方法で対策を
市県民税を経費にできないからといって、あきらめる必要はありません。適正な節税方法を活用すれば、結果的に住民税の負担を減らすことも可能です。
1. 青色申告特別控除を活用する
青色申告をして帳簿を適正に記録すれば、最大65万円の控除が受けられます。これにより所得が下がり、住民税・所得税の両方にメリットがあります。
2. 小規模企業共済・iDeCoなどを利用
これらの制度を活用することで、所得控除が受けられます。結果として課税所得が下がり、住民税も軽減できます。
3. 経費の見直しと適正な処理
業務に関連する支出は漏れなく経費化することで、節税効果が高まります。たとえば、スマホ代や通信費、書籍、セミナー費用などが該当します。
まとめ:市県民税は経費にならないが、正しい節税で負担軽減は可能
市県民税は「個人に課される税金」であるため、たとえ事業収入に基づいて課税されるものであっても、経費にはできません。ただし、正しい知識を持って節税に取り組めば、住民税の負担そのものを抑えることは十分に可能です。
個人事業主やフリーランスにとって、税金は大きな悩みのタネですが、焦らず、税法に則った適正な処理を心がけましょう。間違っても無理な経費化や脱税まがいの処理は避けるべきです。
最終的には、**「経費にできる・できない」よりも、「どうすれば適正に所得を下げられるか」**を意識することが、賢い税務戦略につながります。
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