障害年金は誰が・いつ・どこまで「もらえる」のか?必ず知っておきたい全条件

障害年金は、病気やケガによって日常生活や就労に影響が出たとき、公的年金制度から支えを受けられる制度です。ただし「ちょっと具合が悪い」だけでは支給対象にはならず、法律で定められた条件を満たす必要があります。本記事では、「障害年金 もらえる条件」というキーワードをもとに、基礎から具体的要件まで、見落としやすいポイントを含めて詳しく解説します。

障害年金を受け取るには、ざっと大きく3つの条件があります。それは、

  1. 初診日要件
  2. 保険料納付要件
  3. 障害状態該当要件

です。しかし、これらだけを知っているだけでは不十分で、障害認定日、事後重症制度、所得制限、請求時期、証明書類など“制度運用の細かいルール”が絡み合います。これらを理解しないと、申請しても不支給になったり、申請のタイミングを逃したりするリスクがあります。

以下では、国民年金(障害基礎年金)と厚生年金(障害厚生年金)の違いも含め、各要件を詳しく見ていきます。


目次

障害年金の基本構造:基礎年金と厚生年金の関係

障害年金には大きく2種類があります:

  • 障害基礎年金:国民年金に加入している人(自営業、専業主婦、無職、学生など)が対象
  • 障害厚生年金:会社員や公務員など、厚生年金制度に入っている期間がある人が対象

厚生年金加入者は、障害基礎年金の受給資格があれば、さらに障害厚生年金も加算される形で受給できます。(政府オンライン)

つまり、初診日の時点でどの年金制度に属していたかが、支給される年金の種類を決定する重要な分岐点になります。


初診日要件:いつ見た病気・ケガがはじまりか?

障害の原因となる病気・ケガを 初めて診察を受けた日 を「初診日」と呼びます。障害年金を受け取るには、この初診日が公的年金制度に関わる期間内であること(または例外的な状況)である必要があります。(stgy.shogainenkin.jp)

具体的には、次のようなケースが認められます:

ただし、初診日要件だけを満たせば受給できるわけではなく、他の要件もすべてクリアしている必要があります。

また、初診日を証明できない・記録が残っていないケースでは、後続診療記録や本人・周囲の証言などで立て替えて主張する手続きもあります。


保険料納付要件:支払った期間・免除期間を含めて

初診日要件の次に重要なのが 保険料納付要件 です。障害年金をもらうには初診日直前までの納付実績等が一定割合以上であることが求められます。(年金ネット)

基本条件

  • 初診日の前日までに、初診日がある月の「前々月」までの期間において、 保険料納付済期間+保険料免除期間 が合計で 被保険者期間の3分の2 以上であること (年金ネット)
  • ただし、初診日が 令和8年4月1日以前 の古いケースでは、直近1年で未納がないことを代替条件とする特例が認められることがある (厚生労働省)

例外・特例

  • 初診日が 20歳未満 の場合は、課税上の保険料未納分があるため、納付要件が免除されるケースがある (厚生労働省)
  • ただし、このケースでは所得制限が設けられることがあり、所得が一定水準を超えると年金額が一部または全部停止されることもあります (厚生労働省)

これにより、若年で発症した障害や子どもの頃からの障害をもつ人にも支援が及ぶ一方、収入との兼ね合いが複雑な制度設計となっています。


障害状態該当要件:障害等級で「一定レベル」かどうか

保険料要件を満たした上で、障害状態が「障害等級表」に定められた基準に合致することも条件です。すなわち、障害認定日(通常、初診日から1年6ヶ月経過した日など)において、等級に該当する状態である必要があります。(厚生労働省)

  • 障害基礎年金:1級または2級 の障害状態であること (年金ネット)
  • 障害厚生年金:1級・2級・3級 のいずれかに該当すること (年金ネット)

なお、障害認定日当時に該当しなかった場合でも、後日障害が進行した際に請求する「事後重症制度」が利用できるケースがあります。(年金ネット)

等級認定には、医師の診断書や検査データ、日常生活能力への影響度などが総合的に判断されます。


障害認定日・事後重症請求制度

障害認定日とは、一般に初診日から 1年6か月経過した日 のことを指します。病気やケガが継続しているかどうか、この時点で等級に該当するかでまず判定されます。(厚生労働省)

しかし、もし認定日に等級に該当しなかった場合、後に症状が悪化して等級該当になることがあります。こうしたケースでは、請求日以降の年金を受け取ることができる 事後重症制度 があります。(年金ネット)

ただし、請求には期限があり、65歳の前々日までに申請する必要があります。(年金ネット)


所得・収入制限と停止条件

一般的には、障害基礎年金・障害厚生年金ともに 所得制限は設けられていません。ただし、例外が存在します。(oki-shogai.com)

  • 20歳未満で初診日がある障害基礎年金については、所得制限があり、扶養親族なしの場合、所得が一定額を超えると年金額が部分的に停止または全額停止されることがあります。(厚生労働省)
  • また、受給者が死亡した場合は受給権が失効します(失権)。(oki-shogai.com)
  • 障害年金と別の給付(たとえば労働基準法上の障害補償給付など)を受けている期間については、障害基礎年金の支給停止対象となる場合があります(停止措置) (oki-shogai.com)
  • また、生活保護を受けている場合、障害年金との併給は原則できないことがあります。(oki-shogai.com)

これらの例外を見落とすと、申請後に支給が打ち切られてしまうリスクがあります。


請求時期・遡及請求・時効

障害年金の請求は、障害認定日以後いつでも可能ですが、遡って受給できるのは最大5年分まで とされています。(年金ネット)

請求のタイミングによっては受給開始月が変わることもあり、遅れれば得られる金額が減ることもあります。(年金ネット)

また、65歳以降は原則として障害年金の請求対象外となります。(マネコミ)


初診日が証明できないケース・立証方法

初診日を証明できないと、申請が棄却されることがあります。以下のような方法で立証を試みます:

  • 最初に受診した医療機関で「受診状況等証明書」を取得
  • カルテや診療録、紹介状、転院記録を探す
  • 診察券やレセプト、処方歴・薬の記録
  • 家族・職場・同居者など第三者からの証言・記録
  • 他医療機関の診療記録から前後関係を推定

このような資料を総合的に検討して「初診日」を主張することが一般的です。


よくある間違いや不支給につながる落とし穴

いくつか典型的な誤解・失敗パターンがあります:

  • 初診日を後の転院先などで診断確定した日と誤認して使ってしまう
  • 保険料納付要件を誤って計算し、3分の2を下回っていると判断される
  • 障害認定日に等級該当しなかったために、「事後重症」を申請できる期限を逃す
  • 所得制限適用範囲を誤認して、停止対象となるケースを見落とす
  • 請求を遅らせ、遡及請求の時効(5年)に引っかかってしまう
  • 初診日証明が不十分で受給要件を満たさないと判断される

これらを回避するには、早めに年金事務所・社会保険労務士などへ相談し、記録・証拠をできるだけ残しておくことが重要です。


まとめ

障害年金を「もらえるかどうか」は、制度設計上非常に複雑であり、単純に病気や障害があるからといって受給できるわけではありません。最低限、以下の三大要件をすべて満たす必要があります:

  1. 初診日要件:障害原因の初診日が年金制度内または特例期間にあること
  2. 保険料納付要件:初診日前までの納付・免除実績が一定割合以上であること
  3. 障害状態該当要件:障害認定日に、等級表で定められた水準に達していること

さらに、事後重症制度、請求時期、所得制限、証明資料など、多くの運用上の注意点があります。これらを理解しておかないと、せっかく条件を満たしていても申請に失敗したり、受給額が減ったりすることにもなりかねません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次