会社が社員の住居を法人契約で借り上げ、社員に提供する「社宅制度」は、福利厚生の一環として多くの企業で導入されています。これは社員にとってはもちろん、会社側にも大きなメリットがある制度です。しかし実際に導入する際には、税務上の取り扱いや費用負担のバランスを正しく理解しておく必要があります。本記事では、「会社 自宅を借りて 社員に提供 メリット それぞれの出費は?」という疑問をキーワードに、企業・社員それぞれの視点からこの制度の全貌を徹底解説します。
■ 会社が社員の自宅を借りて提供するとは?
これは、会社が法人契約で住宅を借り、社員に貸与(提供)する仕組みです。社員は実際にその住居に住みますが、契約者は会社。つまり社員は「社宅」に住んでいる形になります。
このとき、社員から家賃の一部を徴収し、残りを会社が負担するという形が一般的です。場合によっては、ほぼ全額を会社が負担するケースもあります。
■ 会社側のメリット
1. 福利厚生による人材確保・定着
住宅支援は社員の生活費を大幅に軽減できるため、採用時の魅力になりやすく、離職率の低下にも寄与します。
2. 節税効果
社宅としての提供条件を満たしていれば、会社側が負担する家賃部分は福利厚生費として経費処理が可能です。これは法人税の課税所得を減らすことにつながります。
3. 社員の生活安定による生産性向上
特に地方からの転勤や単身赴任の場合、会社が住居を用意することで、社員の不安を軽減し、業務に集中できる環境を整えられます。
■ 社員側のメリット
1. 実質的な手取りアップ
市場相場よりも安い家賃で住めることで、住宅費の負担が減り、可処分所得が増える感覚になります。
2. 所得税・住民税の節税
会社が家賃の大半を負担し、社員が「最低限」の賃料を支払っている場合、この差額は給与課税の対象外となります。つまり、家賃補助とは違って税金がかかりにくいのです。
■ それぞれの出費はどうなる?
【会社側の出費】
- 家賃全体の契約費用(例えば月10万円)
- そのうち、社員から徴収する「自己負担分」以外を会社が負担
- 敷金・礼金・更新料なども会社が持つことが多い
- 固定資産税は不要(あくまで賃貸契約)
例:家賃10万円、社員負担2万円 → 会社負担8万円(月)
【社員側の出費】
- 「賃貸料相当額」に基づいた最低限の負担(※国税庁が定める計算式あり)
- 水道光熱費や駐車場代は自己負担のケースが多い
この「賃貸料相当額」は、物件の床面積・築年数・所在地などを基に算出されるので、都心の高級物件であっても、数万円以下の負担で済む場合があります。
■ 税務上の注意点
社宅として認められるには、**「賃貸料相当額以上を社員が支払っていること」**が条件です。これを下回ると、その差額は「給与」とみなされ、社員に対して所得税が課されてしまいます。
また、個人契約の家賃補助とは違い、法人契約であれば会社の資産・経費として計上可能な点もポイントです。税務調査ではこの点が厳しく見られるため、契約書や賃料明細などはしっかり保管しておく必要があります。
■ 注意すべき落とし穴
- 社員が個人で選んだ物件を会社が後追いで法人契約する場合、税務上グレーになるケースがある
- 過度に高額な物件を会社が負担すると、「経済的利益」と見なされ課税リスクがある
- 社宅制度として全社員に公平性がないと、一部のみ優遇とされる恐れあり
■ まとめ:戦略的に使えば「お互いに得」
会社が社員の自宅を借りて提供する社宅制度は、双方にとってメリットの大きい制度です。費用負担のバランスを正しく理解し、税務リスクを抑えつつ制度設計すれば、福利厚生・節税・生産性向上の“三方良し”が実現できます。
導入を検討している企業担当者の方は、まずは税理士など専門家への相談を通じて、制度の整備・運用ルールの明確化から始めることをおすすめします。
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