相続税の申告は本当に自分でできる?その答えと前提条件
相続税の申告は「税理士に任せるもの」という印象が強いかもしれません。しかし、すべてのケースで必ずしも専門家が必要なわけではありません。遺産の総額が明確で、相続人同士の関係も良好、さらに不動産が複雑でなければ、自分で申告書を作成することは十分可能です。税務署も基本的な申告に関しては丁寧に対応してくれるため、ネットや市販の書籍と併用すれば自力での申告も夢ではありません。ただし、土地の評価が複雑だったり、相続人が揉めているケース、あるいは過去の贈与や非上場株式が絡む場合などは、無理せず税理士に相談すべきです。
自分で申告できるかどうかをチェックする5つのポイント
- 遺産総額が基礎控除内に収まっているか
基礎控除の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。この金額以内なら申告義務そのものがありません。 - 不動産が少ない、または評価が簡単な土地のみか
自宅一軒程度で、相続税路線価が明確なエリアであれば評価も難しくありません。 - 預貯金や上場株式など、評価が簡単な財産が中心か
銀行残高や株価は基準日(通常は被相続人が亡くなった日)で決まるため、調べやすく間違いが起きにくいです。 - 相続人間で争いがないか
トラブルがあると手続きが進まず、専門家の仲介が不可欠になるケースがあります。 - 過去に生前贈与がない、または金額が明確で記録があるか
暦年贈与や相続時精算課税の適用があると計算が複雑になるため、要注意です。
必須書類リスト|これだけは揃えておきたい
自分で申告する場合でも、書類の不備は命取りです。以下は最低限必要になる書類です。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 住民票(被相続人・相続人)
- 除票(被相続人の住民票)
- 固定資産税評価証明書(不動産がある場合)
- 残高証明書(銀行・証券口座)
- 不動産の登記簿謄本
- 相続関係説明図(法務局への登記にも使用)
- 遺言書または遺産分割協議書(存在する場合)
- 相続税の申告書一式(国税庁HPでダウンロード可)
実際の相続税の申告手順を徹底解説
① 財産の棚卸しをする
まずは被相続人の財産をすべて洗い出しましょう。預貯金、不動産、上場株式、自動車、現金、貸付金、未収入金など。逆に借金や葬儀費用なども債務控除として記載が必要です。漏れがあると税務調査で指摘される可能性が高くなります。
② 財産の評価を行う
金融資産は基本的に死亡日時点の時価。不動産は路線価または固定資産税評価額から計算します。国税庁の「路線価図・評価倍率表」ページを活用すれば、自宅の土地価格も簡単に算出可能です。
③ 法定相続分に基づく按分計算
相続人ごとの取得分を計算し、各人の課税対象額を決めます。遺産分割協議がまとまっていない場合でも、法定相続分で一度仮に計算し、後から修正申告や更正の請求が可能です。
④ 相続税の申告書を作成
国税庁のホームページでは「相続税申告書の記載例」やエクセル様式が用意されています。まずは申告書第一表、第二表を作成し、その後財産明細などの各種附表を作ります。
⑤ 税務署に提出・納税
申告書は被相続人の死亡時の住所地の税務署へ提出します。期限は原則、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内。申告と同時に現金納付、または延納・物納の申請を行います。
自分で申告する際によくある失敗とその回避法
不動産の評価を誤る
路線価を見誤る、補正率の適用を忘れるなどのミスは非常に多いです。市販の相続税計算ソフトや税理士監修の書籍を併用することでリスクを下げましょう。
小規模宅地等の特例を使い忘れる
「自宅の土地は80%評価減」といった特例があるのに、それを申告書に反映させていないケース。適用条件を満たすかしっかり確認しましょう。
名義預金を見落とす
被相続人名義でなくても、実質的に被相続人の財産と判断される預金(名義預金)は申告漏れになりやすく、税務調査の対象となります。出金の履歴や通帳の管理状況を細かく確認することが大切です。
添付書類の不備
戸籍の取り寄せ忘れや、残高証明書の日付が申告基準日とずれているなど、細かい不備も審査で返戻の原因になります。すべての書類はコピーを取り、原本提出が必要なものは事前にチェックしましょう。
相続税申告を自分で行うメリットと注意点
メリット
- 税理士報酬(数十万円〜100万円超)を節約できる
- 財産内容や税制を自分で理解でき、今後の相続対策にも役立つ
- 家族で協力して準備することで、相続に対する理解が深まる
注意点
- 時間と労力がかかる(目安:40〜80時間程度)
- 税務署からの問い合わせや調査リスク
- 特例の判断ミスによる税負担増加の可能性
それでも不安なら「申告だけ相談」という選択肢もある
税理士にすべて丸投げするのではなく、「申告書だけチェックしてもらう」「特例の適用条件だけ相談する」といった形で部分的に活用するのも一案です。最近ではオンラインでの相続税相談サービスも増えており、費用も1万円前後から始められるケースが多くなっています。
まとめ|相続税の申告は「自分でできる」が「無理しない」が鉄則
相続税の申告は、財産の種類や相続人の状況によっては自力で対応可能です。ただし、少しでも不明点や不安があるなら、最低限の相談を税理士に行うことで大きなトラブルを防げます。「お金をかけずに」「でも失敗せずに」申告をしたい人こそ、必要なところだけプロの知見を借りるという柔軟なスタンスがベストです。あなたの相続手続きがスムーズに進むことを願っています。
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