日本のドラッグストアや通販サイトで販売されているサプリメントを見てみると、アメリカなど海外の製品と違い、「カプセル型」ではなく「錠剤(タブレット型)」のものが圧倒的に多いことに気づきます。
「なぜ日本のサプリはカプセルでないの?」と疑問に思う人も多いでしょう。この記事では、その理由を製造・文化・法規制・消費者の嗜好など、さまざまな観点から徹底的に解説します。
日本のサプリの主流は“タブレット型”である理由
日本のサプリメント市場では、約7割以上がタブレット型です。カプセル型よりもタブレット型が多い背景には、コスト・保存性・製造技術・消費者心理などの複合的な理由があります。
製造コストの安さと大量生産への適応
タブレットは粉末を圧縮して作るため、製造コストが低く、安定供給がしやすいというメリットがあります。カプセルはゼラチンやHPMC(植物性カプセル)などの素材費用がかかり、さらに充填工程も複雑になるため、コスト面で不利なのです。
大量生産が求められる日本の健康食品市場では、タブレットが効率的な選択とされています。
日本の製造環境と品質管理基準
日本の製薬・食品メーカーは、品質や均一性を非常に重視します。タブレットは成分量を正確にコントロールしやすく、保存時に安定しやすいため、日本の品質管理基準に適しているのです。
また、湿度が高い日本では、カプセル内部に湿気が入ると内容物が劣化するリスクが高いため、湿気に強いタブレットが好まれる傾向にあります。
文化的・心理的な理由:飲みやすさと“薬っぽさ”の違い
カプセル=薬という印象
日本では、カプセル=医薬品というイメージが強く、「薬のようで怖い」「飲みづらそう」と感じる人が多いのが現実です。
一方、タブレット型はビタミン剤やラムネのような見た目で、「健康食品」として親しみやすい印象を与えます。
噛んで食べるサプリ文化
日本では「グミサプリ」「チュアブルサプリ」など、噛んで摂取するタイプの人気も高いです。これも、食べ物感覚で摂取したいという文化的傾向を示しています。海外では“飲み込む”サプリ、日本では“食べる”サプリという認識の違いがあるのです。
法規制と成分表記の関係
日本のサプリメントは「健康食品」という扱いであり、医薬品とは異なる規制を受けます。
一方、海外のサプリメントの多くは「医薬品に近いサプリメント(ダイエタリーサプリメント)」として位置づけられており、高濃度・高含有の成分をカプセルで閉じ込めるのが一般的です。
日本では「食品」として扱われるため、
- 成分濃度を抑える必要がある
 - 長期保存に適した形にする必要がある
といった理由から、タブレットが主流となっています。 
原材料と製造上の違い
カプセルの原料:ゼラチンやHPMC
カプセルはゼラチン(動物由来)やHPMC(植物由来)などで作られます。これらの素材は、ベジタリアンやアレルギーを気にする消費者にとって懸念点になることがあります。
日本では「原料にこだわりたい」という消費者が多く、動物由来成分を避けたい人がタブレットを好む傾向にあります。
タブレットの原料:でんぷん・セルロース系
一方、タブレットは穀物由来やセルロース系の成分を主に使用し、アレルギーや宗教的制限が少ないという利点があります。日本の多様な食文化にも馴染みやすい形状です。
消費者の嗜好とマーケティング戦略
「かわいくて飲みやすい」見た目が人気
日本では、サプリメントも“かわいさ”“デザイン性”が重視されます。タブレット型なら色や形を自由にデザインでき、ブランディングがしやすいのです。
一方、カプセルは見た目が似通ってしまい、差別化が難しいというデメリットがあります。
味付き・香り付きタブレットの増加
日本の消費者は「苦いもの」「無味のもの」を敬遠する傾向にあり、最近ではフルーツ風味やミント風味のサプリが人気です。これもカプセルよりタブレットの方が味を調整しやすいという理由によるものです。
湿度と気候が影響する日本特有の事情
日本は高温多湿な気候で、カプセルのように内容物を密閉するタイプは、湿度によって内部の成分が劣化したり、カプセルの殻が軟化するリスクがあります。
その点、タブレットはコーティング技術によって湿気に強く、保存安定性が高いのです。特に夏場の保管を考えると、タブレット型は実用的といえます。
海外との比較:アメリカ・ヨーロッパとの違い
アメリカやヨーロッパでは、カプセル型のサプリが主流です。理由は次の通りです。
- 成分濃度が高く、粉末をそのまま摂ると苦味が強いためカプセル化されている
 - 医療的な効果を重視するため、見た目よりも機能性を優先
 - 消費者が「薬=効く」という認識を持っている
 
つまり、欧米では“効くこと”を重視、日本では“続けやすさ”を重視しているという文化の違いがあるのです。
カプセル型が少ないもう一つの理由:コストと価格設定
カプセル製造には専用の機械が必要で、封入工程も多く時間がかかります。そのため、販売価格を抑えたい日本のメーカーにとってはタブレットの方がコスト面で有利です。
特に大量生産・大量流通を前提とする国内市場では、「安く・安心・飲みやすい」タブレット型が最適化されてきたといえます。
サプリメントの形状が変化しつつある?
最近では、日本でも徐々にカプセル型サプリの需要が増えつつあります。その理由は以下の通りです。
- 海外ブランドの参入(例:NOW、Doctor’s Bestなど)
 - カプセルの植物性素材(HPMC)の普及
 - 高機能成分(プロバイオティクス・酵素など)を保護する必要性
 
特に、美容・ダイエット・腸内環境改善などの高級志向サプリでは、カプセルの優位性が再評価されています。
タブレットとカプセル、それぞれのメリット・デメリット
| 形状 | メリット | デメリット | 
|---|---|---|
| タブレット | コストが安い、保存性が高い、味をつけやすい | 成分によっては圧縮で劣化、飲み込みにくい場合あり | 
| カプセル | 吸収が速い、成分を保護できる、味や匂いが気にならない | コストが高い、湿気に弱い、薬っぽい印象がある | 
どちらが優れているというよりも、目的や成分によって最適な形状が異なるというのが実情です。
まとめ
日本のサプリがカプセルではない理由は、一言で言えば「文化・環境・市場の違い」にあります。
- コストと製造効率の面でタブレットが有利
 - 湿度の高い気候に適した形状
 - 薬っぽさを避けたい日本人の嗜好
 - 健康食品としての安心感を重視
 
つまり、日本では「飲みやすさ」「親しみやすさ」「続けやすさ」が重視されており、それがカプセルではなくタブレットを選ぶ最大の理由なのです。
しかし今後は、機能性を重視する層が増えることで、カプセル型のサプリが主流になる可能性も十分あります。自分のライフスタイルや目的に合わせて、最適な形状を選ぶことが大切です。

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