「グラフィックボードなしでもゲームができるPCを作りたい」
そんな人が一度は候補にするのが、Ryzen 5000番台のAPUだろう。
しかし、型番を見ると5600G、5700Gだけではない。5500GTや5600GTまである。さらにAMDの製品情報を見ると5605Gや5705Gまで存在する。
正直、かなり分かりにくい。
しかも2026年現在は、AM5向けのRyzen 8000GシリーズやRyzen AI 400シリーズまで登場している。では、いまさらRyzen 5000番台のAPUを選ぶ意味はあるのだろうか?
結論から言えば、AM4環境を安く作りたい人や、グラフィックボードを使わない低価格PCを作りたい人には、まだ十分使える。特にRyzen 5 5600Gや5600GTはバランスがいい。
ただし、新しいPCをゼロから組むなら話は別だ。
Ryzen 5000Gには、PCIe 3.0や古い内蔵GPUなど、無視できない弱点もある。価格だけを見て飛びつくと、あとで後悔する可能性があるのだ。
Ryzen 5000番台のAPUとは?
CPUとGPUを1つにしたプロセッサ
APUとは、簡単に言えばCPUとGPUを1つにまとめたプロセッサだ。
通常のデスクトップPCでは、
- CPU
- グラフィックボード
を別々に用意することが多い。
しかし、Ryzen 5000GシリーズにはRadeon Graphicsが入っている。そのため、グラフィックボードがなくても映像を出せる。
ここが大きい。
普通のRyzen 5 5600XやRyzen 7 5800Xなどには、基本的にこの内蔵GPUがない。グラフィックボードを用意しなければ画面すら映らない。
一方、5600Gや5700GならCPUだけでPCを動かせる。
事務作業、YouTube、Web閲覧程度なら、グラフィックボードは必要ない。軽いゲームまで動かせる。
CPU部分にはZen 3を採用
Ryzen 5000GシリーズのCPU部分には「Zen 3」アーキテクチャが使われている。
Ryzen 7 5700Gなら8コア16スレッド、Ryzen 5 5600Gなら6コア12スレッドだ。どちらもTDPは65Wで、ソケットにはAM4を使う。
メモリはDDR4-3200を正式にサポートする。一方、PCI ExpressはPCIe 3.0までだ。通常のRyzen 5000シリーズにはPCIe 4.0対応モデルが多いため、ここはAPU系の弱点になる。
AMD公式仕様:Ryzen 7 5700G
AMD公式仕様:Ryzen 5 5600G
Ryzen 5000番台APUの種類を比較
代表的なモデルを並べるとこうなる。
| モデル | CPUコア/スレッド | 最大ブースト | GPUコア数 | GPUクロック | L3キャッシュ | TDP |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Ryzen 3 5300G | 4C/8T | 4.2GHz | 6 | 1700MHz | 8MB | 65W |
| Ryzen 5 5500GT | 6C/12T | 4.4GHz | 7 | 1900MHz | 16MB | 65W |
| Ryzen 5 5600G | 6C/12T | 4.4GHz | 7 | 1900MHz | 16MB | 65W |
| Ryzen 5 5600GT | 6C/12T | 4.6GHz | 7 | 1900MHz | 16MB | 65W |
| Ryzen 5 5605G | 6C/12T | 4.4GHz | 7 | 1900MHz | 16MB | 65W |
| Ryzen 7 5700G | 8C/16T | 4.6GHz | 8 | 2000MHz | 16MB | 65W |
| Ryzen 7 5705G | 8C/16T | 4.6GHz | 8 | 2000MHz | 16MB | 65W |
AMDの現在の製品情報では5605Gや5705Gも掲載されている。ただし、販売形態や流通量は地域によって違うため、自作PC用として考えるなら5600G、5500GT、5600GT、5700Gを中心に考える方が分かりやすい。
Ryzen 3 5300G
5300Gは4コア8スレッドで、Radeon Graphicsは6コア、1700MHzだ。
性能としては一番下になる。
ただし問題は性能だけではない。
AMD自身が5300Gを「OEM Only」としている。つまり、基本的にはメーカー製PC向けだ。単体CPUとして積極的に探して買うモデルではない。
安い中古PCなどに入っているなら面白い。
しかし、自作PC用にわざわざ選ぶ理由は弱い。
Ryzen 5 5600G
5000番台APUの中で、私がもっとも基準にしやすいと感じるのが5600Gだ。
6コア12スレッドなので、Web、Office、動画視聴はもちろん、かなり幅広い作業に使える。
内蔵GPUは7コア、1900MHz。
ゲーム専用CPUではないが、「グラフィックボードなしでどこまでできるか」という使い方ならかなり面白い。
しかも8コアの5700Gほど高いCPU性能を必要としない人には、6コア12スレッドでも十分だ。
迷ったら5600Gを基準に価格を比べればいい。
Ryzen 7 5700G
5700Gは8コア16スレッドになる。
さらに内蔵GPUも8コア、2000MHzと、5600Gより上だ。
動画編集や複数のアプリを同時に動かすなら、この8コアは効いてくる。
内蔵GPU性能を少しでも高くしたい場合にも5700Gが有利だ。
ただし、ゲーム性能だけを理由に大きな価格差を払うべきかは微妙だ。
Tom’s Hardwareも、5700Gの内蔵GPU性能を高く評価する一方、価格性能比では5600Gの方が優れていると評価していた。
つまり5700Gは、GPU性能だけではなく8コアCPUも使いたい人向けだ。
Ryzen 5 5500GT
5500GTは2024年に追加されたモデルだ。
6コア12スレッド、最大4.4GHz、7コアのRadeon Graphics、GPUクロック1900MHzとなっている。
数字だけを見ると、5600Gとかなり似ている。実際、GPU部分の仕様は同じだ。
だから5500GTを買うかどうかは、かなり価格次第になる。
5600Gより安いなら候補になる。
逆にほぼ同じ価格なら、あえて5500GTを選ぶ必要はあまりない。
AMD公式仕様:Ryzen 5 5500GT
Ryzen 5 5600GT
5600GTも2024年に登場したモデルだ。
名前だけを見ると5600Gの大幅強化版に感じるかもしれない。
ところが、そこまで劇的には変わっていない。
5600Gは最大4.4GHzなのに対し、5600GTは最大4.6GHzまで上がった。ただし内蔵GPUはどちらも7コア、1900MHzだ。
つまり、
「GTになったから内蔵GPUが一気に速くなった」
という製品ではない。
CPUクロックを少し強化した5000G系と考えた方が分かりやすい。
AMD公式仕様:Ryzen 5 5600GT
Ryzen 5000番台APUのゲーム性能はどの程度?
720pならかなり遊べる
Ryzen 5000Gの内蔵GPU性能は、事務用CPUについている最低限の映像出力とはかなり違う。
Tom’s Hardwareの5700Gテストでは、複数ゲームの結果から720pではかなり実用的な性能を見せ、設定を下げれば1080pでも遊べるゲームがあると評価されている。
ただし、このテストはRyzen 5000G登場時のゲームを中心にしたものだ。
2026年現在の重いAAAゲームまで快適に動く、と考えるのは危険だ。
私なら、
- VALORANT
- League of Legends
- Minecraft
- 軽量なインディーゲーム
- 少し古いゲーム
などを中心に考える。
最新ゲームを1080p高画質で60fpsという使い方は、このAPUの仕事ではない。
そこまで求めるならグラフィックボードを買うべきだ。
5700Gと5600Gの差は意外と小さい
5700Gは8GPUコア、5600G系は7GPUコアなので、5700Gの方が速い。
ただ、圧倒的な差があるわけではない。
そのため、ゲーム目的だけなら5600Gや5600GTの方が価格性能比で有利になりやすい。
5700Gを選ぶ価値が大きくなるのは、
「ゲームもするが、CPUを使う作業も多い」
という人だ。
8コア16スレッドを使える場面があるなら、一気に意味が出てくる。
Ryzen APUではメモリを絶対に2枚使うべき
ここはかなり重要だ。
Ryzen 5000Gで内蔵GPUを使うなら、メモリ1枚構成はおすすめしない。
内蔵GPUにはグラフィックボードのような専用VRAMがない。そのため、PCのメインメモリをGPUも利用する。
当然、メモリ帯域の影響を大きく受ける。
Tom’s Hardwareが5700Gを使って比較したテストでは、同じHP製PCでもデュアルチャンネル構成はシングルチャンネル構成より、720pで74%、1080pで82%高い結果になった。
これは誤差ではない。
別物と言っていい。
16GB使うなら、
「16GB×1枚」
ではなく、
「8GB×2枚」
を選ぶべきだ。
32GBなら16GB×2枚だ。
Ryzen APUで内蔵GPUを使う場合、メモリを1枚で済ませる節約は完全に逆効果になる。
Ryzen 5000Gの弱点
PCIe 4.0に対応していない
かなり勘違いされやすい点だ。
Ryzen 5000シリーズだからといって、すべてPCIe 4.0対応ではない。
5700G、5600G、5500GT、5600GTなどのCezanne系APUはPCIe 3.0対応だ。
PCIe 4.0の高速SSDを最大性能で使いたい人には弱点になる。
あとから高性能GPUを追加する前提なら、普通のRyzen 5000シリーズも候補に入れた方がいい。
L3キャッシュが少ない
5600Gや5700GのL3キャッシュは16MBだ。
例えば通常版Ryzen 5000の一部モデルでは、これより大きなL3キャッシュを持つ。
APUは内蔵GPUを持つ代わりに、通常のデスクトップRyzenとは内部構成が違う。
そのため、
「5700GからGPUを外しても、普通の8コアRyzenとまったく同じ」
ではない。
グラフィックボードを最初から使うなら、APUを選ぶ必要があるのかは一度考えた方がいい。
2026年でもRyzen 5000番台APUを買う価値はある?
ここが一番難しい。
AMDにはすでにAM5環境がある。
Ryzen 7 8700GはZen 4、DDR5、PCIe 4.0に対応し、Radeon 780Mを搭載する。Ryzen 5 8600GもRadeon 760Mを搭載している。
さらに2026年にはZen 5世代のRyzen AI 400シリーズのデスクトップ向けGモデルも登場している。Ryzen AI 7 450GやRyzen AI 5 440Gなどだ。
つまり、5000Gはもう最新APUではない。
それでも価値が消えたわけではない。
すでにAM4マザーボードを持っているなら強い
5000G最大の武器はAM4だ。
AM4マザーボードとDDR4メモリを持っているなら、CPUだけ交換して内蔵GPU付きPCにできる可能性がある。
この場合、わざわざ
- AM5マザーボード
- DDR5メモリ
- 新しいCPU
を全部買う必要はない。
この差は大きい。
ただし、古いマザーボードではBIOS更新が必要になる場合がある。購入前に必ずマザーボードメーカーのCPU対応表を確認するべきだ。
新規PCなら価格差を見て決める
反対に、マザーボードもメモリも持っていないなら判断は変わる。
私なら5000Gだけを見て決めない。
AM4+DDR4一式がかなり安く組めるなら5000Gには意味がある。
しかし、AM5との差が小さいなら新しいプラットフォームを選ぶ。
2026年現在、AMDのデスクトップ向けラインアップにはRyzen 8000GだけでなくRyzen AI 400世代まである。将来CPUを交換することまで考えるなら、AM5を選ぶ理由は以前よりさらに強くなっている。
古いからダメなのではない。
安いから5000Gを選ぶ意味があるのであって、安くない5000Gを選ぶ意味は薄い。
ここはかなり重要だ。
用途別に選ぶならどのRyzen 5000 APUがいい?
とにかく安く作るならRyzen 5 5500GT
5500GTが5600Gや5600GTより明確に安いなら候補になる。
6コア12スレッドあり、内蔵GPUも7コア1900MHzだ。
低価格PCには十分だ。
ただし価格差が小さいなら5600Gか5600GTへ上げたい。
バランス重視ならRyzen 5 5600Gか5600GT
一番おすすめしやすいのはここだ。
6コア12スレッドは普段使いには十分強い。
内蔵GPU性能も5700Gに大きく離されているわけではない。
5600Gと5600GTで迷ったら、基本的には価格で決めればいい。
5600GTの方が安い、またはほぼ同額なら5600GT。
5600Gがかなり安いなら5600Gで問題ない。
モデル名の数字に惑わされる必要はない。
CPU性能まで欲しいならRyzen 7 5700G
ゲームだけではなく、
- 動画編集
- 配信
- 圧縮
- 複数アプリの同時使用
- CPU負荷の高い作業
もするなら5700Gがいい。
8コア16スレッドは今でも十分使える。
特に小型PCでグラフィックボードを付けたくない場合、かなり扱いやすいCPUだ。
まとめ:Ryzen 5000番台APUは安くAM4を使うならまだ強い
Ryzen 5000番台APUは、もう最新ではない。
そこは認めるべきだ。
PCIe 3.0、DDR4、Zen 3、旧世代のRadeon Graphicsという構成なので、新しいAM5 APUと真正面から最新性能を争う製品ではない。
しかし、役目がなくなったわけでもない。
すでにAM4環境を持っている人や、できるだけ安くグラフィックボードなしのPCを作りたい人にとって、5600Gや5600GTは今でもかなり面白い。
私なら選び方をこうする。
価格重視なら5500GT。
一番バランスがいいのは5600Gまたは5600GT。
8コアCPUまで必要なら5700G。
そして、内蔵GPUを使うならメモリは必ず2枚構成にする。
逆に、マザーボードから全部新しく買うなら5000Gだけを見て決めてはいけない。Ryzen 8000GやRyzen AI 400シリーズを含むAM5環境と総額で比較するべきだ。
Ryzen 5000 APUは「古いCPUだから安ければ買う」のではない。
AM4という成熟した環境を安く使い切れるからこそ価値がある。
そこを理解して選べば、2026年でも十分に使えるAPUだ。

コメント