税法上の「扶養家族」とは、納税者が経済的に養っている家族のことであり、所得税や住民税の計算において扶養控除の対象となる場合があります。しかし、扶養に該当する条件は細かく定められており、単に「家族を養っている」だけでは税制上の扶養と認められないこともあります。ここでは、扶養家族の定義や税法上の基準、具体的な控除の仕組みについて詳しく解説します。
目次
税法上の「扶養家族」とは?
扶養家族とは、納税者が経済的に養っている家族のことで、一定の条件を満たす場合に「扶養親族」として税制上の控除対象となります。日本の税法では、「所得税法」と「住民税法」において扶養控除の対象となるかどうかが決められています。
扶養親族には、主に以下の3つの区分があります。
- 一般の扶養親族
- 16歳以上の親族で、一定の条件を満たす場合に適用される。
- 特定扶養親族
- 19歳以上23歳未満の扶養親族で、大学生や専門学校生が該当し、控除額が増える。
- 老人扶養親族
- 70歳以上の親族が対象で、さらに同居か別居かによって控除額が異なる。
扶養家族として認められるための税法上の条件
税法上の扶養家族となるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 6親等内の血族または3親等内の姻族であること
- 両親、祖父母、子ども、孫、兄弟姉妹のほか、叔父・叔母や甥・姪なども含まれる。
- 配偶者の親や兄弟姉妹も一定条件のもと扶養にできる。
- 納税者と生計を一にしていること
- 同居している場合は基本的に問題ないが、別居していても仕送りなどで生活を支えている場合は認められる。
- 年間の合計所得が48万円以下であること(給与収入のみの場合、103万円以下)
- 給与収入のみの場合、給与所得控除55万円を差し引いた金額が48万円以下であれば扶養控除の対象になる。
- 年金受給者の場合、公的年金等控除を考慮した上で、所得48万円以下であることが必要。
- 青色事業専従者や白色申告の事業専従者ではないこと
- 事業を行っている人が、その家族を事業専従者として給与を支払っている場合、その家族は扶養親族にできない。
扶養控除の種類と控除額
扶養家族が税法上の扶養親族に該当すると、所得税や住民税の計算時に「扶養控除」を受けることができます。
扶養親族の区分 | 所得税控除額 | 住民税控除額 |
---|---|---|
一般の扶養親族(16歳以上) | 38万円 | 33万円 |
特定扶養親族(19~23歳) | 63万円 | 45万円 |
老人扶養親族(70歳以上・同居) | 58万円 | 45万円 |
老人扶養親族(70歳以上・別居) | 48万円 | 38万円 |
- 16歳未満の子どもは扶養控除の対象外(ただし、児童手当が支給される)。
- 19~23歳の大学生や専門学校生がいる場合は「特定扶養親族」として控除額が増える。
- 70歳以上の親を扶養している場合、「老人扶養親族」として控除額が増える。
扶養控除が受けられる人と受けられないケース
扶養控除を受けるためには、税法上の要件を満たす必要がありますが、以下のような場合には控除が適用されないことがあります。
- 配偶者は扶養親族に含まれない
- 配偶者は「配偶者控除」または「配偶者特別控除」の対象となるため、扶養控除は適用されない。
- 16歳未満の子どもは扶養控除の対象外
- 以前は16歳未満の子どもも扶養控除の対象だったが、現在は対象外となり、代わりに児童手当が支給される。
- 扶養控除と配偶者控除の二重適用はできない
- 配偶者控除を受ける場合、扶養控除としての適用はされないため、どちらの制度が有利か確認が必要。
- 扶養控除を適用できるのは原則1人のみ
- 兄弟姉妹で両親を扶養している場合、1人の親に対して扶養控除を適用できるのは原則として1人のみ(ただし、分担の仕方によって異なる場合がある)。
扶養家族がいる場合の税制上のメリット
扶養控除を受けることで、課税所得が減少し、所得税・住民税の負担が軽減されます。また、一定の条件を満たすと、社会保険料の軽減や、医療費控除の申請にも影響を与える場合があります。
- 所得税と住民税の負担軽減
- 扶養控除を受けることで、所得税と住民税が安くなる。
- 例えば、特定扶養親族(19~23歳)を扶養している場合、最大63万円の所得控除が受けられる。
- 社会保険の扶養にも影響
- 扶養家族の年収が一定以下であれば、健康保険の扶養に入れることができるため、扶養される側の健康保険料負担がなくなる。
- 医療費控除の適用範囲が広がる
- 扶養家族の医療費も合算して医療費控除の対象にできるため、税金の還付を受けられる可能性がある。
まとめ:税法上の扶養家族の定義を理解し、賢く活用しよう
扶養家族とは単に家族を養っていることを指すのではなく、税法上の明確な基準があります。所得や年齢、生活実態などの条件を満たすことで扶養控除を受けることができ、税負担を軽減するメリットがあります。扶養控除や配偶者控除、社会保険の扶養など、自分にとって最適な制度を正しく理解し、賢く活用しましょう。
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