便所蜂(べんじょばち)という言葉を耳にしたことがある人は少なくありません。しかし、実際には「便所蜂」という正式な種類の蜂は存在せず、一般的にアシナガバチを指す俗称として使われています。昔の日本では、トイレ周辺に巣を作ることが多かったため「便所蜂」と呼ばれるようになったのです。本記事では、便所蜂とアシナガバチの違いや種類、さらに生活習性や注意点について詳しく解説していきます。蜂の被害を避けるためにも、正しい知識を身につけておきましょう。
便所蜂とは?
便所蜂とは、アシナガバチのことを指す俗称です。特に農村や古い住宅地では屋外トイレ付近に巣を作ることが多く、人々の生活に身近な存在でした。そのため、「便所蜂=危険な蜂」というイメージが広まり、現在でも一部地域では便所蜂という呼び方が残っています。
実際にはアシナガバチと呼ぶのが正確で、便所蜂という学術的な分類は存在しません。しかし、アシナガバチは人間の生活空間に近い場所に巣を作ることが多いため、刺される被害が少なくないのも事実です。
アシナガバチとは?
アシナガバチはスズメバチ科に属する中型の蜂で、その名の通り後ろ脚が長く垂れ下がっているのが特徴です。日本には約10種類のアシナガバチが生息しており、住宅地や公園、畑など幅広い環境に巣を作ります。
性格はスズメバチに比べると温和で、人間を積極的に襲うことはありません。ただし、巣を刺激すると防衛本能から刺してくるため注意が必要です。
便所蜂とアシナガバチの違い
「便所蜂」と「アシナガバチ」に大きな違いはありません。違いがあるとすれば、呼び方やイメージの問題です。
- 便所蜂:古い呼び名。特に農村部などで使われることが多い。屋外トイレに巣を作る習性から生まれた俗称。
- アシナガバチ:正式名称。昆虫学や生物学で使われる呼び方。スズメバチ科に属する蜂の一種。
つまり、便所蜂=アシナガバチであり、両者に生物学的な違いはありません。
アシナガバチの代表的な種類
日本に生息するアシナガバチの中でも代表的な種類を紹介します。
セグロアシナガバチ
もっとも一般的に見られる種類で、体長は15〜25mmほど。黒色に黄色の模様が入り、都会から田舎まで幅広く分布しています。攻撃性はそれほど強くありませんが、巣を刺激すると刺されます。
フタモンアシナガバチ
体長は14〜26mmほどで、胸部に2本の黄色い帯があるのが特徴。庭木や住宅の軒下に巣を作ることが多いです。セグロアシナガバチと並び、人間の生活に最も近い種類です。
キアシナガバチ
やや大型の種類で、後ろ脚が黄色いのが特徴。攻撃性が強く、刺された場合の痛みも大きいといわれています。農作物に被害を与える害虫を捕食するため益虫としての一面もあります。
ヒメアシナガバチ
比較的小型で、体長は13〜18mmほど。住宅地や公園などに多く見られます。性格は比較的おとなしく、人を刺すことは少ない種類です。
便所蜂(アシナガバチ)の巣の特徴
アシナガバチの巣は、シャワーヘッドのような形をしており、六角形の部屋が集まった構造になっています。巣の外側にカバーはなく、中の幼虫や蛹がむき出しの状態で見えるのが特徴です。
主に以下のような場所に巣を作ります。
- 家の軒下
- ベランダの天井
- 庭木の枝
- トイレや倉庫の屋根の裏
- エアコンの室外機の中
巣が小さいうちはそれほど危険ではありませんが、女王蜂が成長し、働き蜂が増えてくると攻撃性が高まります。
便所蜂とスズメバチの違い
便所蜂(アシナガバチ)とスズメバチは混同されやすいですが、いくつかの明確な違いがあります。
- 体の形:アシナガバチは細身で脚が長く垂れ下がっている。スズメバチはがっしりした体つき。
- 性格:アシナガバチは比較的温和。スズメバチは攻撃的。
- 巣の形:アシナガバチは傘型で幼虫が見える。スズメバチはボール状で外側が覆われている。
- 刺されたときの危険性:スズメバチの方が毒性も強く、重症化のリスクが高い。
アシナガバチの生態と役割
アシナガバチは肉食性で、主にイモムシや毛虫を捕食します。そのため、農作物を守る益虫としての役割を果たしています。一方で、住宅に巣を作り人を刺す被害もあるため「益虫でもあり害虫でもある存在」といえます。
また、花の蜜を吸うこともあり、自然界における受粉の役割も一部担っています。
アシナガバチに刺されたときの症状
便所蜂(アシナガバチ)に刺されると、強い痛みと腫れ、赤みが生じます。一般的な症状は数時間から数日で治まりますが、アレルギー体質の人は「アナフィラキシーショック」を引き起こす危険があります。
主な症状:
- 激しい痛み
- 腫れやかゆみ
- めまい、吐き気
- 呼吸困難(重症の場合)
特に過去に蜂に刺された経験がある人は、2回目以降に重症化しやすいため注意が必要です。
アシナガバチに刺されたときの応急処置
- 刺された場所を流水で洗う – 毒を洗い流す。
- 毒を絞り出す – 指で軽く押し出すか、吸引器を使う。
- 冷やす – 保冷剤や氷で患部を冷却する。
- 抗ヒスタミン薬を塗る – 腫れやかゆみを和らげる。
- 体調の変化を観察 – 呼吸困難や全身のじんましんが出たらすぐに救急車を呼ぶ。
アシナガバチの巣を見つけたときの対処法
- 巣が小さいうちは、市販の殺虫スプレーで駆除可能。
- 巣が大きい場合や高所にある場合は、自分で駆除せず専門業者に依頼するのが安全。
- 夏から秋にかけては蜂の数が増え、攻撃性も高まるため注意が必要。
蜂と共存するための工夫
- 家の周囲を定期的に点検し、小さな巣のうちに対処する。
- ベランダや庭に洗濯物を干す際は、蜂が寄っていないか確認する。
- 植物や庭木に水をまくときは巣の有無をチェックする。
- 蜂を刺激しないよう、黒い服や香りの強い香水を避ける。
よくある質問(FAQ)
Q1. 便所蜂とアシナガバチは本当に同じ蜂ですか?
はい、便所蜂はアシナガバチの俗称です。正式な分類上は同じ蜂を指します。
Q2. 便所蜂はどんな場所に巣を作りますか?
家の軒下や庭木、屋外トイレなど、人の生活空間に近い場所に巣を作ります。
Q3. アシナガバチは攻撃的ですか?
スズメバチほど攻撃的ではなく、こちらから刺激しない限り襲ってきません。
Q4. 刺されたときの危険性はどのくらいですか?
強い痛みや腫れが出ますが、多くは数日で治ります。ただしアレルギー体質の人は重症化の危険があります。
Q5. 巣を見つけたらどうしたらいいですか?
小さいうちなら自分で駆除できますが、大きくなった場合は専門業者に依頼するのが安全です。
Q6. アシナガバチは駆除すべきですか?
必ずしも駆除が必要ではありません。益虫としての役割もあるため、人の生活圏から離れている場合は放置して問題ありません。
まとめ
便所蜂とアシナガバチの違いは、名前の呼び方に過ぎません。便所蜂は古い俗称であり、正式名称はアシナガバチです。アシナガバチは人間を積極的に襲うことはありませんが、巣を刺激すると刺してくるため注意が必要です。また、農作物を守る益虫としての一面もあり、必ずしも駆除すべき存在ではありません。
正しい知識を持ち、巣を見つけたときには適切に対応することで、便所蜂(アシナガバチ)と安全に共存していくことが可能です。
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