高速道路で車が故障したとき、「ハザードをつけて路肩に止めれば大丈夫」と思っていないだろうか。
実は、それだけでは足りない。
高速道路や自動車専用道路で車を動かせなくなった場合、停止していることを後続車へ知らせる必要がある。そのために使うのが「停止表示機材」と呼ばれるものだ。
ただし、法律上の正式な名前は**「停止表示器材」**である。
代表的なのが、赤い三角形をした「三角表示板」だ。最近では、紫色に点滅する「停止表示灯」も使える。つまり、昔ながらの三角表示板だけが選択肢ではなくなっている。
私なら高速道路を走る車には必ずどちらかを積んでおく。普段は完全に邪魔な存在なのに、必要になる瞬間だけ命に関わる。車の非常用品というのは、だいたいそんな理不尽な役割を持っている。
では、停止表示機材とは具体的に何なのか。発炎筒とは何が違うのか。高速道路では本当に義務なのか。
ここはかなり勘違いされやすい。
停止表示機材とは?
停止表示機材とは、事故や故障などによって道路上で車を動かせなくなったとき、後続車に「ここに停止車両がある」と知らせるための器材である。
正式名称は「停止表示器材」だ。
道路交通法では、高速道路などで故障その他の理由によって車を運転できなくなった場合、停止していることを表示しなければならないと定められている。
警察庁も、高速道路の本線や路肩に停止した場合には、停止表示板や停止表示灯などを車の後方に設置するよう案内している。
停止表示機材には主に2種類ある
現在、一般のドライバーが使うものとして分かりやすいのは次の2種類だ。
- 三角表示板
- 停止表示灯
三角表示板は、赤い三角形の反射板を道路上に立てるタイプだ。
一方、停止表示灯は紫色の光を点滅させて後続車に知らせる。
どちらも目的は同じである。
「後ろから来る車に、停止車両の存在をできるだけ早く気付かせる」
これがすべてだ。
時速80kmや100kmで車が流れている高速道路では、停止車両を見つけてからでは遅い場合がある。
だから、車そのものより前に「異常がある」と知らせる必要があるわけだ。
三角表示板とは?
赤い三角形を道路に立てて使う
もっとも有名な停止表示器材が「三角表示板」だ。
車用品店などでは「三角停止板」「三角停止表示板」と呼ばれることもある。
折りたたんだ状態では細長いケースに収納でき、使用するときに組み立てて三角形にするタイプが一般的だ。
道路交通法施行規則では、停止表示板について形や見え方などの基準が定められている。
夜間用の場合、赤色の反射光を持ち、夜間に200mの距離から前照灯で照らした場合に確認できることなどが基準になっている。
ただ赤い三角形なら何でもいい、という話ではない。
購入するときは、停止表示器材として法令の基準に適合している製品か確認したほうがいい。
三角表示板のメリット
三角表示板の大きなメリットは、電池を使わないことだ。
いざというときに、
「電池が切れている」
という悲しすぎる事故が起きにくい。
長期間トランクに入れっぱなしにしやすく、構造も単純である。
私が「とにかく一つ積んでおきたい」と考えるなら、三角表示板はかなり堅実な選択だ。
三角表示板の弱点
一方で問題もある。
設置するには、車の外へ出て後方へ移動する必要がある。
高速道路でこれは怖い。
NEXCO中日本も、停止表示器材を設置するときは車線から離れ、ガードレールなどの外側の安全な場所を通って移動するよう案内している。
三角表示板を置くことばかり考えて、本線上を歩き回るのは本末転倒だ。
人間はなぜか「決められたことをやらなければ」と思うと、自分の安全を一瞬忘れることがある。
高速道路では、それが致命傷になり得る。
紫色に光る停止表示灯とは?
三角表示板だけが停止表示器材ではない
最近は、紫色に点滅する小型の停止表示灯も販売されている。
道路交通法施行規則では「停止表示灯」と呼ばれている。
基準に適合する停止表示灯は、昼間用・夜間用の停止表示器材として認められている。
つまり、
「高速道路では絶対に三角表示板でなければならない」
というわけではない。
ここは意外と重要だ。
なぜ紫色なのか?
停止表示灯の灯光は紫色と決められている。
さらに、点滅式であることも条件だ。
道路交通法施行規則では、路面上に設置した状態で一定のサイズ以下であること、200mの距離から点灯を確認できることなどが基準として定められている。
つまり、家にある紫色のLEDライトを持っていけばいい、という話ではない。
購入するなら、停止表示器材として法令の基準に適合している製品を選ぶべきだ。
停止表示灯のメリット
停止表示灯はかなり小さい。
三角表示板に比べて収納スペースを取りにくいのが大きな魅力だ。
車種によっては三角表示板の収納場所に困ることもあるが、小型の停止表示灯ならグローブボックスなどに入れられる製品もある。
さらに、組み立て作業がほとんど必要ないタイプもある。
緊急時には、この差が大きい。
事故や故障を起こした直後、人間は思ったほど冷静ではない。
暗い高速道路の路肩で三角表示板を組み立てるより、すぐ使える器材のほうが安心できる場合はある。
停止表示灯にも弱点はある
当然ながら万能ではない。
電池式なら電池切れの問題がある。
買って10年間トランクに放置して、
「持っているから安心」
では意味がない。
定期的な電池確認が必要になる。
この点では、電源不要の三角表示板のほうが単純で強い。
停止表示機材は高速道路で義務なのか?
ここが一番重要だ。
高速道路などで故障停止した場合には表示義務がある
道路交通法第75条の11では、高速道路などの本線車道や加速車線、減速車線、登坂車線、それらに接する路肩などで車を運転できなくなった場合、停止していることを表示するよう定められている。
つまり、
高速道路などで故障・事故によって停止した場合には表示義務がある。
これは単なるマナーではない。
NEXCOも高速道路上で停止した場合について、停止表示器材を設置するよう案内している。
「車に積んでいないだけ」で違反になるわけではない
ここは少しややこしい。
道路交通法が直接定めているのは、基本的に「高速道路などで停止した場合の表示義務」である。
そのため、
「三角表示板を車に積んでいない状態で普通に高速道路を走っただけで即違反」
という意味ではない。
しかし、事故や故障によって実際に停止したとき、停止表示器材を持っていなければ表示できない。
結局そこで困る。
そのため警察庁も、緊急事態に備えて停止表示器材を積載するよう呼びかけている。
法律の言葉遊びとして「積載義務はないから買わなくてもいい」と考えるのは、私はおすすめしない。
数千円程度の安全用品を節約して、高速道路で立ち往生したときに詰む。
あまりに割に合わない。
表示義務に違反するとどうなる?
停止表示をしなかった場合は「故障車両表示義務違反」に該当する。
現在の交通違反点数では、故障車両表示義務違反は基礎点数1点となっている。
道路交通法施行令では、反則金は普通車・二輪車で6,000円、大型車で7,000円と定められている。
ただ、個人的には6,000円を取られることより、後続車に追突されることのほうが圧倒的に怖い。
停止表示器材は罰金対策ではなく、命を守るための装備として考えるべきだ。
発炎筒と停止表示機材は同じもの?
発炎筒は停止表示板とは別物
車には発炎筒が搭載されていることが多い。
そのため、
「発炎筒があるなら三角表示板はいらないのでは?」
と思う人もいるだろう。
しかし、発炎筒と停止表示器材は役割が似ているものの、同じものとして考えないほうがいい。
警察庁は高速道路で車が停止した場合、発炎筒、停止表示板、停止表示灯などを使って後続車へ危険を知らせるよう案内している。
発炎筒は強い光で一時的に危険を知らせるものだ。
一方、停止表示板や停止表示灯は停止車両があることを表示するための器材である。
私は両方を用意しておくのが一番安心だと思う。
「どちらか片方があるから十分」と考えるより、使える警告手段を増やしておいたほうがいい。
高速道路での故障は、持ち物をミニマルにする場所ではない。
高速道路で車が故障したらどうする?
停止表示器材を持っていても、行動を間違えれば危険だ。
警察庁やNEXCOが案内している基本的な流れはかなり明確である。
1.可能なら安全な場所まで車を移動する
車がまだ動くなら、できるだけSA・PA、非常駐車帯など安全な場所まで移動する。
無理に本線上で止めない。
故障だからといって、その場で急停止するのは危険だ。
2.ハザードランプで後続車へ知らせる
停止するときはハザードランプを点灯する。
まず自分の車に異常があることを周囲へ知らせる。
3.発炎筒や停止表示器材を使う
安全を確認できる範囲で、発炎筒や停止表示器材を使って後続車へ危険を知らせる。
三角表示板なら車両後方の見やすい位置へ設置する。
停止表示灯なら、取扱説明書と製品の指定方法に従って使用する。
ただし、設置のために危険な車線上を歩き回ってはいけない。
4.車の中に残らない
ここは本当に重要だ。
高速道路で故障した車の中は、安全な待合室ではない。
後続車に追突される可能性がある。
警察庁とNEXCOは、運転者と同乗者がガードレールの外側など安全な場所へ避難するよう案内している。
車の前や後ろにも立たない。
追突された車が押し出される可能性もあるからだ。
5.安全な場所から通報する
安全な場所へ避難したら、110番、非常電話などを利用して通報する。
NEXCOでは道路緊急ダイヤル「#9910」も案内している。
車より人間の避難を優先する。
ここを間違えてはいけない。
停止表示機材は三角表示板と停止表示灯のどちらがおすすめ?
どちらにも長所がある。
三角表示板がおすすめの人
- 電池管理をしたくない
- 昔ながらのシンプルな装備がいい
- トランクに十分な収納場所がある
- 長期間車載しておきたい
こうした人なら三角表示板が扱いやすい。
電池が不要なのは大きい。
何年も使わない可能性が高い非常用品では、単純な構造は強い。
停止表示灯がおすすめの人
- 車内の収納スペースを減らしたくない
- 小型の装備を選びたい
- 組み立て作業を減らしたい
- 夜間でも目立つものが欲しい
こうした場合は停止表示灯が便利だ。
ただし、停止表示灯なら何でもいいわけではない。
「道路交通法施行規則適合」など、停止表示器材として使用できることを確認して購入したほうがいい。
私なら両方積んでおく
一つだけ選べと言われれば、法令に適合した製品ならどちらでもいい。
ただ、私なら三角表示板と停止表示灯を両方積んでおく。
理由は簡単だ。
非常用品には予備があったほうがいいからだ。
停止表示灯の電池が切れていた。
三角表示板が破損していた。
風が強くて設置しにくい。
事故が起きると、予定どおりにいかないことのほうが多い。
両方合わせても車の積載量を大きく圧迫するほどではない。
その程度の保険なら、持っておいて損はないと私は考える。
停止表示機材についてよくある疑問
一般道路でも必要?
道路交通法第75条の11の停止表示義務は、高速自動車国道などで車を動かせなくなった場合について定められている。
そのため、高速道路と一般道路では法的な扱いが同じではない。
ただし、一般道路でも故障や事故で停止した場合、後続車に危険を知らせる必要がないわけではない。
夜間や見通しの悪い場所なら、停止表示器材が役立つ場面は十分にある。
車検で三角表示板は必要?
三角表示板を積んでいないからという理由だけで、通常の車検に通らないというものではない。
ただし高速道路などで故障停止した場合には表示義務がある。
「車検で必須ではない」と「必要ない」はまったく別の話だ。
ここを混ぜないほうがいい。
ハザードランプだけではダメ?
高速道路で故障して停止した場合、ハザードランプだけで済ませると考えるべきではない。
警察庁やNEXCOも、ハザードランプに加えて発炎筒や停止表示器材などで後続車へ知らせるよう案内している。
高速道路の速度では、気付くのが数秒遅れるだけでも距離が大きく変わる。
「自分の車なら見えるだろう」という期待は捨てたほうがいい。
まとめ:停止表示機材は高速道路を走るなら用意しておくべき
停止表示機材とは、事故や故障によって車が停止したとき、後続車へ停止車両の存在を知らせるための器材だ。
法律上の正式名称は「停止表示器材」である。
代表的なのは、
- 三角表示板
- 紫色に点滅する停止表示灯
の2種類だ。
高速道路や自動車専用道路などで故障し、車を動かせなくなった場合には停止していることを表示する義務がある。
「積んでいないだけなら違反ではないから必要ない」と考えることもできる。
しかし、実際に高速道路で止まってからでは遅い。
車の故障は、「三角表示板を買ってから故障しよう」などという親切な順番では発生してくれない。
高速道路を利用するなら、法令に適合した三角表示板か停止表示灯を車に常備しておくべきだ。
そして本当に故障したときは、車より自分と同乗者の安全を優先する。
停止表示器材を使い、安全な場所へ避難し、通報する。
数千円で用意できる装備が、後続車に数秒早く危険を伝えてくれる。その数秒が大きな意味を持つ。
車にまだ停止表示器材を積んでいないなら、一度確認しておいたほうがいい。高速道路で必要になってから気付くには、少し遅すぎる。

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