「ロシアが日本を攻撃するはずはない」と考えていないだろうか?
たしかに、ロシア軍が明日にでも北海道へ上陸する可能性は高くない。しかし、安心しきるのは危険だ。ロシアはウクライナへの侵略を続けながら、北方領土を含む日本周辺でも軍事活動を行っている。中国軍との共同活動も確認されている。
しかも、現代の攻撃は戦車や戦闘機だけではない。サイバー攻撃、偽情報、海底ケーブルへの妨害、エネルギーを利用した圧力など、戦争と平和の間にある攻撃が増えている。
では、ロシアから日本を守るには何が必要なのか?
結論から言えば、自衛隊を強くするだけでは足りない。日米同盟、外交、経済安全保障、サイバー防衛、国民保護を組み合わせ、「日本を攻撃しても成功しない」と相手に思わせることが必要だ。
ロシアは本当に日本の脅威なのか?
ロシアと日本はすぐ近くにある
日本とロシアは海を挟んだ隣国だ。特に北海道とロシア極東地域の距離は近い。
北方領土にはロシア軍の部隊が置かれ、沿岸ミサイルや戦闘機などの装備も配備されている。日本政府は北方四島を日本固有の領土としているが、現在もロシアによる不法占拠が続いている。
防衛省の令和7年版防衛白書によると、ロシアは極東地域にも新しい装備を配備し、日本周辺で活発な軍事活動を続けている。
2024年度に航空自衛隊が行った緊急発進は704回だった。このうちロシア機への対応は237回に達している。これは、ロシア軍の動きを無視できない証拠だ。
ただし、「ロシア軍が今すぐ北海道へ攻めてくる」と断定するのも正しくない。大切なのは、危険を大きく見せることではなく、起こる可能性と被害の大きさを冷静に考えることだ。
中国とロシアの連携が大きな問題になる
日本にとって特に厳しいのは、ロシアだけに対応すればよいわけではない点だ。
ロシア軍と中国軍は、日本周辺で航空機や艦艇による共同活動を行っている。さらに北朝鮮とロシアの軍事協力も進んでいる。
つまり、日本は北のロシア、西の中国、ミサイルを保有する北朝鮮を同時に考えなければならない。北海道だけを強化して終わる話ではないのだ。
私は、この「複数の方向から同時に圧力を受ける可能性」こそ、日本にとって最大の弱点だと考えている。
本当に怖いのは全面戦争だけではない
ロシアによる脅威を考えるとき、北海道への上陸だけを想像するのは古い。
現実には、次のような攻撃が先に行われる可能性がある。
・政府や企業へのサイバー攻撃
・発電所や通信設備への妨害
・GPSや衛星通信への妨害
・SNSを使った偽情報の拡散
・領海や領空周辺での軍事的な圧力
・エネルギーや資源を利用した経済的な圧力
防衛省は、中国やロシアが偽情報などを利用し、自国に有利な情報環境を作ろうとしていると説明している。詳しくは防衛省の認知領域を含む情報戦への対応で確認できる。
ミサイルが飛んでこなくても、日本社会を混乱させることはできる。ここを軽く見るべきではない。
ロシアから日本を守る基本戦略
戦争に勝つ前に「戦争を起こさせない」
日本の安全保障で最も重要なのは、戦争が始まってから勝つことではない。相手に攻撃を決断させないことだ。
これを「抑止」と呼ぶ。
ロシア側が次のように判断すれば、攻撃の可能性は下がる。
・日本への攻撃は簡単に成功しない
・自衛隊から大きな反撃を受ける
・米軍も対応する可能性が高い
・国際的な制裁と孤立が強まる
・得られる利益より失うものの方が大きい
反対に、「日本はすぐ混乱する」「米国は動かない」「弾薬が少なく長く戦えない」と思われれば、危険は高まる。
防衛力を強くする目的は戦争を始めることではない。戦争を諦めさせることにある。この考えを外してはいけない。
日本が進めるべき7つの防衛策
1.北海道と北方の警戒監視を強化する
ロシアへの備えでは、北海道周辺の警戒監視が重要だ。
レーダー、哨戒機、艦艇、人工衛星、無人機などを使い、ロシア軍の動きを早い段階でつかむ必要がある。異常を早く発見できれば、それだけ政府と自衛隊が判断する時間を確保できる。
さらに、基地や港、空港、通信施設を攻撃から守ることも必要だ。滑走路や燃料施設が一度の攻撃で使えなくなる状態では弱すぎる。
施設の地下化や分散、破損した滑走路の修復訓練、民間空港や港の利用準備まで進めるべきだ。
2.ミサイル防衛と反撃能力を整える
ロシアは多くのミサイルを保有している。日本は飛来するミサイルを迎撃するだけでなく、相手の艦艇や発射拠点に対応できる能力も必要になる。
日本政府は、12式地対艦誘導弾能力向上型やトマホークなど、離れた場所から対処する「スタンド・オフ防衛能力」の整備を進めている。防衛省の防衛力抜本的強化の進捗資料でも、その計画が示されている。
ただし、ミサイルを買うだけでは使えない。相手の位置を探し、正しい情報を送り、攻撃後の状況を確認する仕組みが必要だ。
衛星、無人機、通信網、指揮系統を一つにつなげなければ意味がない。高価な装備を並べるだけでは防衛にならないのだ。
3.弾薬・燃料・部品を十分に備蓄する
ウクライナでの戦闘が示したのは、戦争では大量の弾薬と部品が必要になるという現実だ。
戦闘機やミサイルを持っていても、弾薬や交換部品がなくなれば動かせない。燃料の供給が止まっても同じだ。
日本は次の備えを急ぐ必要がある。
・弾薬と誘導弾の備蓄
・燃料と医薬品の備蓄
・装備品の修理能力
・国内の防衛生産基盤
・輸送船、トラック、港湾の確保
・負傷者を治療する医療体制
防衛費の金額だけを見て「日本は強くなった」と判断するのは早い。必要なときに装備を動かし続けられるかが本当の勝負だ。
4.日米同盟を実際に動く仕組みにする
日本がロシアの核戦力まで単独で抑えるのは現実的ではない。そのため、日米同盟は日本防衛の中心になる。
防衛省は、米国との安全保障体制を日本の平和と独立を守る基盤としている。2025年には自衛隊の統合作戦司令部が発足し、在日米軍も統合軍司令部への機能強化を始めた。詳しくは令和7年版防衛白書の日米同盟に関する説明に記載されている。
しかし、同盟は条約があるだけで自動的に動くものではない。
・どの状況で共同対処するのか
・誰が命令を出すのか
・どの基地や港を使うのか
・弾薬や情報をどう共有するのか
・住民避難をどう進めるのか
これらを平時から決め、共同訓練を続けなければならない。
日本独自の核武装を急ぐより、米国の核を含む拡大抑止の信頼性を高め、日本自身の通常戦力と国民保護を強くする方が現実的だ。
5.欧州やアジアの国々とも連携する
ロシアへの対応を日米だけに任せるのも危険だ。
英国、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、韓国、フィリピンなどとの防衛協力を進める必要がある。共同訓練、情報共有、装備品の共同開発、サイバー防衛で協力できる。
日本への攻撃が多くの国との対立につながる状況を作れば、それ自体が抑止になる。
同時に、日本はウクライナへの支援を続けるべきだ。力による領土変更を認めれば、同じ考えが東アジアにも広がるからだ。
外務省も2026年時点で、ウクライナ支援と対ロシア制裁を国際社会と連携して進める方針を示している。詳しくは外務省によるウクライナ情勢への対応を確認してほしい。
6.外交の窓口を閉じない
ロシアに警戒することと、対話を完全にやめることは同じではない。
日露関係は非常に厳しいが、両国は隣国だ。事故や誤解から軍事衝突が起きないように、外交当局間の連絡は残す必要がある。
制裁を続けながら対話も行う。この二つは両立する。
北方領土問題についても、日本政府は北方四島の帰属問題を解決し、平和条約を結ぶ方針を維持している。2026年の外務大臣による外交演説でも、この方針が示された。
ただし、「対話すれば相手も分かってくれる」という考えだけでは守れない。防衛力の裏付けがある外交でなければ、単なるお願いで終わる。
7.サイバー・情報戦・経済への攻撃に備える
現代では、電気、通信、金融、物流が止まれば、軍事攻撃を受けていなくても社会は混乱する。
日本では2025年にサイバー対処能力強化法などが成立した。政府は重要インフラを守り、重大なサイバー攻撃を早い段階で発見・対処する体制を整えている。制度の概要は内閣官房のサイバー安全保障に関する取組で確認できる。
政府だけでなく、電力会社、通信会社、銀行、病院、自治体も参加しなければならない。
さらに、SNSで流れる情報をすぐ信じない教育も必要だ。「政府が降伏した」「自衛隊が逃げた」などの偽情報が広がれば、社会の混乱を狙われる。
情報源、発信日時、政府発表、複数の報道を確認する習慣が、国家防衛につながる時代になったのだ。
エネルギー安全保障も日本防衛の一部
ロシアへの依存を急にゼロにすればよいとは限らない
日本はエネルギー資源の多くを海外から輸入している。ロシアとの関係が悪化したからといって、代わりの供給先を確保せずに輸入を止めれば、電気代やガス代が上がり、国内産業にも大きな負担が出る。
必要なのは感情的な全面停止ではない。
・輸入先を複数に分ける
・LNGや石油の備蓄を確保する
・再生可能エネルギーを増やす
・安全を確認した原子力を活用する
・送電網と蓄電設備を強化する
・省エネルギーを進める
2025年に閣議決定された第7次エネルギー基本計画でも、エネルギー危機に耐えられる供給構造への転換が重視されている。
エネルギーを一国に頼りすぎれば、それが外交上の弱点になる。防衛とエネルギー政策を別々に考えてはいけない。
国民を守る避難計画が必要
ミサイルを迎撃できるとは限らない
どれほど防衛力を高めても、すべてのミサイルや無人機を確実に止めることはできない。そのため、攻撃を受けた後の被害を小さくする準備も必要だ。
必要なのは次の対策だ。
・Jアラートの確実な伝達
・地下施設や避難場所の整備
・病院や福祉施設の避難計画
・食料、水、医薬品の備蓄
・停電や通信障害への対応
・自治体と自衛隊の共同訓練
政府の国民保護ポータルサイトでは、武力攻撃やテロへの備えが公開されている。
しかし、資料を公開するだけでは不十分だ。避難場所を知らない住民が多いままでは、計画は紙の上にしか存在しない。
自治体ごとの訓練を増やし、学校や会社でも避難方法を確認すべきだ。
ロシアから日本を守るために私たちができること
一般の人が武器を持つ必要はない。むしろ、日常生活の備えを強くする方が役に立つ。
最低3日から1週間分を備蓄する
水、食料、常用薬、モバイルバッテリー、簡易トイレ、ラジオなどを準備する。これは戦争だけでなく、地震や台風にも使える。
避難場所を確認する
自宅や職場の近くにある地下施設、頑丈な建物、自治体の指定避難所を確認しておく。家族との連絡方法も決めるべきだ。
怪しい情報を拡散しない
強い言葉や恐怖をあおる投稿ほど、拡散されやすい。しかし、内容が正しいとは限らない。
政府、自治体、公共放送、複数の報道機関を確認する。確認できない情報は広めない。この単純な行動が情報戦への防御になる。
安全保障を選挙の判断材料にする
防衛政策は、自衛隊だけの問題ではない。税金、エネルギー、外交、社会保障、教育にも関係する。
「防衛費を増やすか減らすか」だけで判断してはいけない。何を整備するのか、弾薬や人員は足りるのか、国民保護は進んでいるのかまで見る必要がある。
日本の未来戦略はどうあるべきか
短期では弱点を埋める
まず必要なのは、弾薬、燃料、部品、基地防護、サイバー対策、避難施設など、現在不足している部分を埋めることだ。
新しい兵器を買うだけでなく、今ある装備を確実に動かせる状態にしなければならない。
中期では日米共同対処を具体化する
自衛隊と米軍の指揮、情報共有、補給、基地使用をさらに具体化する必要がある。
北海道を含む日本各地で、自治体や民間企業も参加した訓練を行うべきだ。軍事部門だけで完結する危機など存在しない。
長期では攻撃に強い国家を作る
長期的には、攻撃を受けても社会が簡単に止まらない国を作る必要がある。
電力の分散、通信網の多重化、食料と医薬品の国内生産、防衛産業の維持、サイバー人材の育成が欠かせない。
自衛官の人手不足や厳しい勤務環境も放置できない。装備が増えても、それを動かす人がいなければ意味がない。
まとめ
ロシアから日本を守るには、ロシア軍より多くの兵器を持てばよいわけではない。
必要なのは、次の対策を同時に進めることだ。
・北海道と日本周辺の警戒監視
・ミサイル防衛と反撃能力
・弾薬、燃料、部品の備蓄
・日米同盟の実効性向上
・欧州やアジア諸国との連携
・制裁と対話を組み合わせた外交
・サイバー攻撃と偽情報への対策
・エネルギー供給先の分散
・国民の避難計画と生活備蓄
戦争を望まないことと、防衛の準備をしないことは全く違う。
むしろ、本気で平和を守りたいなら、「日本を攻撃しても目的は達成できない」と相手に理解させなければならない。
楽観だけでは国を守れない。恐怖をあおるだけでも守れない。軍事、外交、経済、情報、国民保護を現実的に組み合わせることこそ、ロシアから日本を守る最も確かな未来戦略だ。

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