個人が会社に寄付をする場合の会計処理と注意点:税務上の扱いから仕訳例まで徹底解説

個人が会社に対して金銭や物品を寄付するケースは稀ではあるものの、実際には親族間の事業支援やクラウドファンディング的な支援、あるいは創業支援などで発生します。しかしながら、税務上や会計処理上には一般的な取引とは異なる取り扱いが求められ、正確な処理を行わなければ思わぬトラブルに発展することもあります。本記事では、「個人から会社への寄付」に関する会計処理や税務上の注意点、仕訳方法、さらには贈与税との関係についても網羅的に解説します。


目次

個人が会社に寄付するケースとは?想定される場面

一般的に「寄付」と言えば、法人や個人がNPO法人や公共団体などに対して行う行為を指しますが、以下のようなケースでは個人が会社に対して寄付行為を行うこともあります。

  • 親が子の設立した法人に資金提供(贈与)
  • 友人の経営するスタートアップへの応援金
  • 閉業の危機にある家族経営の会社への個人支援
  • ファンが特定の企業を応援するために資金を渡す(例:同人グッズ制作会社など)

こうしたケースでは、「投資」や「貸付金」とは異なり、返金義務がない無償の提供であることがポイントになります。


法人側の会計処理:寄付金の受領は「受贈益」で処理

法人が個人から無償で資金や資産を受け取った場合、会計処理としては「受贈益(じゅぞうえき)」として認識されます。これは企業が他者から無償で財産の提供を受けた場合の収益項目で、法人税の課税対象にもなります。

金銭の寄付を受けた場合の仕訳

(借方)現金   ×××円  
   (貸方)受贈益 ×××円

備品や物品などの寄付を受けた場合の仕訳(例:パソコン)

(借方)備品   100,000円  
   (貸方)受贈益 100,000円

受贈益は原則として、雑収入として「営業外収益」に分類され、法人税の対象となります。


個人側の税務:贈与税は課税されるのか?

一般的に、贈与税は「個人→個人」の財産移転に対して課税されます。したがって、個人→法人への寄付については贈与税の対象外です。

ただし注意が必要なのは、個人が会社に資金提供し、その会社の株主(自分や親族など)の利益になるような使われ方をする場合には、税務署が「みなし贈与」と判断する可能性があります。

みなし贈与と判断されるケース

  • 親が子の会社に寄付 → 子が実質的に利益を受ける
  • 個人が株主でもないのに多額の資金提供を行い、見返りに何らかのサービスを受けている

このような場合、法人を経由した「個人→個人」の贈与とみなされる可能性があります。


「寄付」と「貸付」「出資」の違いに注意

寄付金と似たような形で、法人への資金提供としてよくあるのが「貸付金」や「出資」です。これらは会計処理や税務上の扱いが大きく異なります。

区分返済義務法人側の処理税務上の扱い
寄付(贈与)なし受贈益(収益)法人税の課税対象
貸付金あり借入金(負債)利子が発生すれば課税
出資なし資本金または資本剰余金株主への配当があれば課税

特に、**「将来返してもらうつもりだったのに返ってこない」**といったトラブルを避けるためにも、寄付であれば「返済義務がない旨」を明確に書面で残しておくことが望まれます。


記録を残すためのポイント:寄付契約書の作成を

法人が個人から寄付を受ける際には、将来的なトラブルや税務調査への備えとして、以下の点を明記した「寄付契約書」を作成しておくことが重要です。

  • 寄付の目的
  • 金額または物品の詳細
  • 寄付の時期
  • 返還義務がないことの明記
  • 利害関係の有無の確認

税務署は「形式」よりも「実態」を重視するため、口頭でのやりとりや曖昧な書類では不十分です。専門家に確認しながら、適切な記録を残しておきましょう。


寄付を受けた会社が注意すべき税務上の影響

法人が個人から寄付を受けた場合、その金額が大きければ大きいほど、税務署から「なぜこのような寄付を受けたのか?」という説明を求められる可能性が高まります。

チェックされやすいポイント

  • 金額の妥当性
  • 関係者間の利害関係
  • 継続的な寄付の有無
  • 寄付後の法人の動き(配当や報酬の増加など)

場合によっては、「寄付ではなく売上や債務免除益、資本取引と見なされる」こともあるため、税理士など専門家のアドバイスを受けることが重要です。


会計処理を誤るとどうなる?想定されるリスク

個人から会社への寄付の会計処理を誤った場合、次のようなリスクが発生します。

  • 税務署からの更正通知(追徴課税)
  • 法人税申告の誤りによる修正申告
  • 贈与税の対象とされる
  • 役員報酬や売上との誤認
  • 会計監査での指摘(上場企業や資金調達を予定している場合)

まとめ:透明性の高い処理と記録の整備が鍵

個人が法人に寄付を行う行為は、まれながらも法的・会計的に明確なルールが求められる重要な取引です。特に、返済義務の有無、寄付契約書の有無、処理の正確性が後の税務調査に大きく影響します。

ポイントの再確認:

  • 法人側では「受贈益」で処理
  • 個人側は贈与税の対象にならないが、みなし贈与に注意
  • 寄付・出資・貸付の違いを明確にする
  • 書面の記録を残すことが重要
  • 税理士などの専門家の確認を忘れずに

将来的なトラブルを防ぎ、正しく経理・税務処理を行うためにも、適切な準備と知識が求められます。企業を応援する気持ちを、法律と会計に則って正しく形にすることが、双方にとって最良の結果を生む第一歩です。

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