機械式立体駐車場に車を入れているだけで、タイヤの寿命が短くなる。そんな話を聞くと、不安になる人もいるはずです。
実際、駐車場から車を出したあと、タイヤの側面に擦れた跡や傷を見つけることがあります。しかも、タイヤの側面は普段あまり確認しません。知らない間に傷が深くなり、そのまま高速道路を走ってしまう可能性もあるのです。
では、機械式立体駐車場は本当にタイヤに悪いのでしょうか?
結論から言えば、機械式立体駐車場に停めるだけで、必ずタイヤが傷むわけではありません。しかし、ガイドレールへの接触、狭いパレット、空気圧不足、据え切りなどが重なると、タイヤの側面や肩の部分に負担がかかります。
特に注意したいのは、タイヤの側面にできた深い傷や膨らみです。タイヤの側面は修理できない場合が多く、「まだ走れるだろう」という素人判断はかなり危険です。
私自身、機械式駐車場では車体をぶつけないことばかり気にしていました。しかし、本当に確認すべきなのはホイールだけではありません。毎日車を支えているタイヤこそ、もっと注意して見るべきです。

機械式立体駐車場でタイヤは本当に傷むのか
機械式立体駐車場を利用しただけで、タイヤが急激に劣化するわけではありません。
問題になるのは、駐車装置の構造と車のサイズ、そして入出庫時の操作です。
機械式立体駐車場には、車を正しい位置へ誘導するガイドレールやパレットの縁があります。車が中央からずれた状態で進入すると、タイヤやホイールが金属部分に接触することがあります。
また、車の全幅が装置の制限内でも、タイヤ外幅やホイールの形状によっては余裕が少ないことがあります。最近のSUVやミニバンは車体が大きく、タイヤも太い傾向があります。古い機械式駐車場では、左右の余裕がかなり小さくなるケースもあります。
国土交通省の指針でも、機械式駐車装置について、車幅検知装置や停車位置規制装置、ガイドレールの変形や摩耗などを点検項目としています。つまり、利用者の運転だけでなく、装置側が正しく維持されていることも重要なのです。
国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001244925.pdf
機械式立体駐車場でタイヤが傷む主な原因
ガイドレールやパレットの縁に接触する
もっとも分かりやすい原因は、タイヤの側面がガイドレールやパレットの縁に当たることです。
ゆっくり接触しただけなら、表面に薄い擦れ跡が残る程度で済むこともあります。しかし、タイヤを金属部分へ強く押しつけたり、接触した状態で車を動かしたりすると、ゴムが削れたり切れたりする可能性があります。
特に危険なのが、接触したままハンドルを切ることです。タイヤの側面に横方向の力がかかり、同じ場所を強くこすることになります。
入庫時に「ゴリゴリ」「ガリッ」という音がした場合は、そのまま何事もなかったことにしてはいけません。人間は嫌な音を聞くと、なぜか聞かなかったことにしようとします。しかし、タイヤは空気を読んで無傷には戻ってくれません。
安全な場所へ移動したあと、タイヤの外側と内側、ホイールの縁を確認するべきです。
車幅は入ってもタイヤ外幅に余裕がない
機械式駐車場には、全長、全幅、全高、重量、最低地上高などの制限があります。
ここで注意したいのが、「車幅が制限内なら絶対に問題ない」とは限らないことです。
カタログに書かれている車幅は、通常、ドアミラーを含まない車体の幅です。一方、実際にパレット上で気になるのは、タイヤやホイールの左右位置です。
純正より幅の広いタイヤへ交換している場合や、ホイールのオフセットを変更している場合は、タイヤ外側が純正状態より外へ出ている可能性があります。
その結果、車体は入っても、タイヤとガイドレールの距離がほとんど残らないことがあります。
機械式駐車場を契約するときは、車検証の車幅だけで判断せず、次の点も確認したほうが安全です。
・タイヤ外側から反対側のタイヤ外側までの幅
・装着しているタイヤとホイールが純正サイズか
・パレット内側の実際の有効幅
・ガイドレールの高さと位置
・車両重量が制限内か
ギリギリ入ることと、毎日安全に使えることは別問題です。数値上数センチしか余裕がないなら、管理会社や駐車装置のメーカーへ確認したほうがよいでしょう。
空気圧不足でタイヤの側面が変形しやすくなる
空気圧が不足すると、タイヤは正常な形を保ちにくくなります。
タイヤの下側が大きくつぶれ、側面のふくらみも増えます。その状態でガイドレールなどに接触すると、適正な空気圧のタイヤより強く変形する可能性があります。
空気圧不足は、タイヤの両肩部分が減る偏摩耗や発熱の原因にもなります。機械式駐車場だけの問題ではありませんが、左右の余裕が小さい場所では、接触リスクをさらに高める要因になります。
日本自動車タイヤ協会は、タイヤの空気圧、傷や亀裂、異常な摩耗、溝の深さを日常点検の項目として挙げています。
一般社団法人日本自動車タイヤ協会
https://www.jatma.or.jp/tyre_user/ridingsafely.html
空気圧は、運転席ドア付近のラベルや取扱説明書に書かれている車両指定値を基準にします。タイヤ側面に書かれている最大空気圧を、そのまま入れるわけではありません。
私は最低でも月1回、長距離走行の前にも確認するのが現実的だと考えます。ガソリンスタンドの空気入れでも点検できますが、できればタイヤが冷えている状態で測るべきです。
据え切りでタイヤに強いねじれがかかる
据え切りとは、車が止まった状態でハンドルを回す操作です。
狭い機械式駐車場では、位置を細かく調整するために据え切りをしたくなります。しかし、車の重さがタイヤにかかった状態で向きを変えるため、タイヤの接地面と側面には大きなねじれが加わります。
据え切りを一度行っただけで、すぐにタイヤが壊れるわけではありません。ただし、毎日のように繰り返せば、肩の部分の偏摩耗やゴムへの負担につながります。
ガイドレールにタイヤが触れている状態で据え切りをすると、接触部分へさらに強い力がかかります。
完全に避けることが難しくても、車を少しずつ動かしながらハンドルを操作するほうが負担を抑えられます。
長期間同じ位置に停めてタイヤが変形する
車を長期間動かさないと、車重がタイヤの同じ部分へかかり続けます。その結果、一時的に接地部分が平らになる「フラットスポット」が発生することがあります。
軽いフラットスポットであれば、走行してタイヤが温まると改善する場合があります。しかし、空気圧が低い状態や長期間の保管では、走行後も振動が残ることがあります。
これは機械式立体駐車場に限った問題ではありません。平面駐車場でも、車を何週間、何カ月も動かさなければ起こる可能性があります。
走行開始後に一定速度で車体やハンドルが振動する場合は、「しばらく走れば直る」と決めつけず、タイヤ専門店で点検してもらうべきです。
屋外型では紫外線や熱による劣化もある
屋外型や最上段の機械式駐車場では、タイヤに直射日光が当たることがあります。
タイヤのゴムは、時間の経過だけでなく、紫外線、熱、オゾンなどの影響でも劣化します。側面に細かいひび割れが増えている場合は注意が必要です。
ただし、屋内の機械式駐車場なら絶対に劣化しないわけではありません。走行距離が少なくても、タイヤは年数とともに古くなります。
「溝が残っているから大丈夫」という考えは危険です。走らない車ほど溝は残りますが、ゴムの劣化は止まっていません。
タイヤの側面に傷があると危険な理由
タイヤ側面は修理できないことが多い
タイヤの路面に接する部分に釘が刺さった場合は、位置や傷の状態によって修理できることがあります。
一方、サイドウォールと呼ばれるタイヤの側面は、走行中に繰り返し曲がる部分です。タイヤメーカーも、側面にできた傷は修理できず、損傷の程度によっては交換が必要になると案内しています。
株式会社ブリヂストン
https://tire.bridgestone.co.jp/about/maintenance/tire-damage/
側面の表面にはゴムがありますが、その内側にはタイヤの骨格となるコードがあります。傷がコードまで達していると、タイヤの強度を保てません。
表面の擦れが浅く見えても、内部の状態を外から正確に判断するのは難しいものです。だからこそ、自分だけで「この程度なら平気」と決めないことが重要です。
側面の膨らみはすぐ点検が必要
タイヤ側面の一部がこぶのように膨らんでいる状態は、ピンチカットの可能性があります。
縁石や金属部分へ強く当たった衝撃により、タイヤ内部のコードが切れると、その部分だけ空気圧で外側へ膨らむことがあります。
ピンチカットは基本的に修理できず、交換が必要です。そのまま走行を続けると、タイヤが破裂する危険があります。
株式会社ブリヂストン
https://tire.bridgestone.co.jp/about/maintenance/pinch-cut/
膨らみを見つけた場合は、高速道路を走ったり、長距離移動したりしてはいけません。可能な限り走行を避け、販売店やロードサービスへ相談するべきです。
傷を見つけたときの交換判断
すぐに走行をやめたほうがよい状態
次のような状態がある場合は、早急な点検や交換が必要です。
・タイヤ側面にこぶのような膨らみがある
・傷の奥に繊維やコードが見えている
・深い切り傷や大きなえぐれがある
・空気が抜け続けている
・タイヤが大きく変形している
・走行中に強い振動や異音が出る
・タイヤの一部だけ極端に摩耗している
特に膨らみやコードの露出がある場合は、様子見をしてはいけません。
高速走行ではタイヤの温度と負担が上がります。街中で低速走行できたからといって、高速道路でも安全とは限らないのです。
専門店で判断してもらうべき状態
表面に薄い擦れ跡があるだけで、必ず交換になるとは限りません。
ただし、傷の深さを自分で判断できない場合や、金属部分へ強く接触した場合は、タイヤ専門店やディーラーで点検してもらうべきです。
確認してもらうときは、次の情報を伝えると判断しやすくなります。
・いつ傷に気づいたか
・どの部分を接触させたか
・接触したときの速度
・空気圧が低下しているか
・振動やハンドルの違和感があるか
・高速道路を走行する予定があるか
タイヤは命を乗せる部品です。交換費用を惜しんで事故の危険を抱えるのは、節約ではなく単なる先送りです。
機械式立体駐車場でタイヤを守る方法
入庫前に車をパレットの中央へ合わせる
入口へ斜めに進入すると、途中で大きな修正が必要になります。
できるだけ入口の手前で車体をまっすぐにし、左右のミラーや案内表示を確認しながら低速で進みます。
目線を近くのガイドレールだけに向けると、車全体の向きが分かりにくくなります。少し遠い位置を見ながら、車体がパレットと平行になっているか確認したほうが安定します。
慌てて一度で入れようとする必要はありません。ずれたと感じたら、無理に進まずに一度戻って修正するべきです。
接触したら無理に進まない
タイヤやホイールがレールへ接触した感覚があったら、アクセルを踏み足して強引に進んではいけません。
接触した状態で進めば、軽い擦れで済んだ傷を深くする可能性があります。
周囲の安全を確認し、いったん少し戻して位置を修正します。管理人がいる駐車場なら、誘導を頼むのも有効です。
機械相手に意地を張っても、修理代を払うのは人間側です。勝負する場所ではありません。
ハンドルをまっすぐに戻して停車する
指定位置へ停車するときは、可能な限りハンドルをまっすぐに戻します。
タイヤが大きく曲がった状態では、パレットの縁や装置の部品に近づく場合があります。また、次回の出庫時に車が予想外の方向へ動きやすくなります。
装置ごとに正しい停車位置や手順が異なるため、案内表示と管理会社の指示を優先してください。
月1回を目安に空気圧を点検する
空気圧は見た目だけでは正確に判断できません。
かなり低下するまで、普通に見えてしまうこともあります。エアゲージを使い、タイヤが冷えているときに測定します。
空気圧が繰り返し低下する場合は、釘などの異物、バルブの不具合、ホイールの損傷なども考えられます。空気を足し続けるだけで済ませず、原因を確認するべきです。
洗車時にタイヤの側面も確認する
タイヤ点検は難しい作業ではありません。
洗車や給油のときに、次の点を目で確認するだけでも異常に気づきやすくなります。
・新しい擦れ跡や切り傷
・側面の膨らみ
・細かいひび割れ
・タイヤの片側だけが減る偏摩耗
・釘や金属片などの異物
・スリップサインの露出
タイヤの使用限度となる残り溝は1.6mmです。ただし、溝が1.6mm以上残っていても、深い傷、膨らみ、コードに達する亀裂などがあれば使用を続けるべきではありません。
同じ場所で何度も傷つくなら管理会社へ相談する
毎回同じタイヤが同じ場所で接触するなら、運転だけが原因とは限りません。
ガイドレールの変形、パレットの傾き、案内表示のずれ、駐車区画と車両サイズの相性なども考えられます。
傷の場所を写真で記録し、接触する位置や状況を管理会社へ伝えます。
相談するときは、感情的に「駐車場のせいで壊れた」と主張するより、次の情報を整理したほうが話が進みます。
・車種とタイヤサイズ
・駐車区画の番号
・接触するタイヤと場所
・発生した日時
・傷の写真
・同じ場所で繰り返しているか
・装置の異音や傾きがあるか
設備側に変形や摩耗があれば、他の利用者にも影響する可能性があります。自分の車だけの問題として黙って終わらせないほうがよいでしょう。
機械式立体駐車場を使う前のチェック項目
機械式立体駐車場を利用するときは、次の点を確認してください。
・車両の全長、全幅、全高、重量が制限内か
・タイヤやホイールを純正から変更していないか
・タイヤとガイドレールの間に十分な余裕があるか
・入庫前に車体をまっすぐにできているか
・タイヤの空気圧が指定値になっているか
・入出庫時に接触音や違和感がないか
・タイヤ側面に傷や膨らみがないか
・装置の案内表示や警告に従っているか
ひとつずつ見ると当たり前の内容です。しかし、タイヤトラブルは、その当たり前を省略したときに起こります。
毎回すべてを細かく点検する必要はありません。ただし、タイヤをレールへ接触させたときや、長期間車を動かさなかったときは、いつもより丁寧に確認するべきです。
まとめ
機械式立体駐車場を使うだけで、タイヤが必ず傷むわけではありません。
しかし、パレットやガイドレールとの間隔が狭い、車両サイズに余裕がない、空気圧が不足している、据え切りを繰り返すといった条件が重なると、タイヤ側面の傷や偏摩耗が発生しやすくなります。
特に注意すべきなのは、タイヤ側面の深い傷と膨らみです。サイドウォールは修理できない場合が多く、内部のコードが損傷していれば交換が必要です。
機械式立体駐車場を安全に利用するためには、次の対策が重要です。
・入庫前に車体をまっすぐにする
・低速でパレット中央へ進入する
・タイヤが接触したら無理に進まない
・据え切りをできるだけ減らす
・月1回を目安に空気圧を確認する
・洗車や給油時にタイヤ側面を点検する
・同じ場所で傷つく場合は管理会社へ相談する
タイヤは、車の中で唯一、道路と接している部品です。
見た目が少し擦れているだけに思えても、その内側まで安全とは限りません。判断に迷ったら、タイヤ専門店やディーラーで確認してもらうべきです。
数分の点検を面倒がって、バーストや事故の危険を抱える必要はありません。機械式立体駐車場を利用する人ほど、車体だけでなくタイヤの側面まで確認する習慣を持つべきです。


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