車のホイールをのぞいたら、ブレーキの周辺が茶色く錆びている。
「ブレーキなのに、こんなに錆びて大丈夫なのか?」
「このまま走ったらブレーキが効かなくなるのでは?」
見た目はかなり不安になる。
しかし、ブレーキ周辺に錆が出たからといって、すぐにブレーキパッドを交換しなければならないわけではない。特に雨のあとや洗車後にブレーキディスクへ発生する薄い錆は、珍しい現象ではない。
問題なのは、走っても消えない錆だ。
さらに厄介なのは、「ブレーキパッドが錆びた」と思っていても、実際にはブレーキディスクが錆びているケースがかなり多いことである。
錆が出ている場所と症状を分けて考えれば、慌てて部品を交換する必要があるのか、それとも少し様子を見てもよいのかが見えてくる。
ブレーキパッドが錆びた?まず確認したい場所
茶色く見えているのはブレーキディスクかもしれない
ホイールのすき間から見える大きな円盤状の部品が「ブレーキディスク」または「ブレーキローター」である。
この部分は鉄系の材料が使われていることが多く、水分が付着すると比較的簡単に錆が発生する。
雨が降った翌朝や洗車後に見ると、昨日まで銀色だったブレーキディスクが茶色くなっていることもある。
ここで、
「ブレーキパッドが全部錆びた!」
と慌てる必要はない。
ルノーの正規ディーラーでも、車を長期間使用しなかった場合や雨・湿気によってブレーキディスクに錆が発生し、走行すると摩擦によって錆が削られていくことが案内されている。
つまり、薄い表面錆ならブレーキという部品の性質上、ある程度は避けにくい。
ブレーキパッドそのものにも錆は発生する
だからといって、ブレーキパッドには錆が発生しないわけでもない。
ブレーキパッドは摩擦材だけでできているわけではなく、摩擦材を支える金属製の裏板などがある。この金属部分には錆が発生することがある。
さらに問題になりやすいのが、ブレーキパッドがキャリパー内を動く「摺動部」の錆だ。
ADVICSのブレーキメンテナンス情報でも、パッドがスムーズに動かない原因として、パッド摺動部の錆や泥の付着などが挙げられている。キャリパー側の錆も、効き不良や片効き、パッドの異常摩耗につながるとされている。
見た目だけでは判断しにくい部分だからこそ注意したい。
ブレーキパッドやブレーキディスクが錆びる原因
雨や洗車による水分
もっとも身近な原因は水である。
雨の中を走る。
洗車する。
濡れた道路を走る。
これだけでもブレーキ周辺には水分が付着する。
特にブレーキディスクの摩擦面には、塗装や強い防錆処理を自由に行うことができない。そのため、濡れたまま駐車すると薄い錆が発生しやすい。
Volvoも洗車後について、水分や錆がブレーキパッドへ悪影響を与えていないか、制動効果が低下していないかを確認するよう案内している。
洗車した翌日にブレーキディスクが茶色くなっていても、それだけで故障とは判断できないわけだ。
車を長期間動かしていない
個人的に、こちらのほうが注意したい。
ブレーキは使うことでディスクとパッドがこすれ、表面の軽い錆が落ちていく。
逆に、車を長期間動かさないと、その作用がない。
数日程度なら表面錆で済んでいたものが、長期間放置すると腐食が進み、ディスク表面に凹凸ができることもある。
週末しか乗らない車、セカンドカー、長期出張中の車などでは起こりやすい。
「走行距離が少ない車ならブレーキも傷まない」とは限らないのである。
海沿いや融雪剤を使う地域
塩分も腐食を進める原因になる。
海沿いでは潮風の影響を受けやすい。
さらに冬になると、道路へ凍結防止剤や融雪剤が散布される地域もある。
国土交通省も、凍結防止剤などによる車体下部の腐食について注意を呼びかけており、腐食が疑われる場合には整備工場などで確認し、防錆処置や整備を行うよう案内している。
ブレーキだけの問題ではないが、雪国で車を使うなら下回りの腐食は軽く見ないほうがよい。
キャリパーやブーツの劣化
少し話が変わる。
こちらは単純な「表面に錆が出た」という状態より深刻だ。
ブレーキキャリパーには、内部へ水や汚れが入りにくくするためのゴム製部品などが使われている。
こうした部品が傷むと、内部に水分や汚れが入り、ピストンや摺動部分の腐食につながることがある。
キャリパーの動きが悪くなれば、
・ブレーキが戻らない
・片側だけ強く効く
・パッドが異常に減る
・走行中もブレーキが擦れる
といった状態につながる。
ここまで来ると「少し走れば錆が取れる」という話ではない。
ブレーキの錆はどこまでなら大丈夫?
雨や洗車後にできた薄い表面錆
ブレーキディスク全体がうっすら茶色になっている程度なら、まず過度に慌てる必要はない。
走行してブレーキを使用すると、パッドとの摩擦によって錆が落ちる場合が多い。
発進直後に、
「ザーッ」
「シャーッ」
という軽い擦れる音が出ても、何度かブレーキを使ううちに消える場合がある。
私なら、この段階では交換を考えるより、まず普通に走行したあとディスクの状態と異音が変化するかを見る。
ただし、ブレーキの効きに違和感がある場合は別だ。
走行しても錆が残るなら注意
何度かブレーキを使用したあとも、ディスク全面に茶色い部分が残っている。
これは少し気になる。
本来パッドが正常に当たっていれば、接触している部分の表面錆は削られていく。
一部分だけ錆が残るなら、ブレーキパッドがディスク全体へ正常に接触していない可能性も考えられる。
パッド。
ローター。
キャリパー。
どこに原因があるのかは、外から眺めるだけでは判断できない。
整備工場で確認してもらったほうが早い。
錆が盛り上がっている・表面がボロボロなら危険
さらに危ないのは、単なる変色ではなく腐食が進んでいる状態だ。
ディスクの端が錆で大きく膨らんでいる。
表面がデコボコしている。
錆が層になって剥がれている。
深い筋や段差がある。
こうなると、ブレーキパッドがディスクへ均等に接触できなくなる可能性がある。
実際、ブレーキディスクの錆が原因で異音が発生し、ディスクとパッドを交換する整備事例も確認できる。
見た目だけでも明らかに腐食が激しいなら、私はそのまま長期間使い続ける判断はしない。
ブレーキが錆びたときの対処法
軽いディスクの錆なら通常走行で様子を見る
雨や洗車直後に発生した程度の薄い錆なら、安全を確認したうえで走行し、通常のブレーキ操作を行うことで改善することがある。
Volvoも雨や雪の中を長時間走行した際などに、ブレーキペダルを軽く踏み、水分を取り除く方法を案内している。
ただし、錆を落とすために急ブレーキを繰り返す必要はない。
それでは錆より人間のほうが先に問題を起こしかねない。
安全な通常走行の中でブレーキを使えばよい。
ブレーキパッドの錆は場所によって対応が違う
パッドの金属製裏板などに軽い錆がある場合は、清掃などで対応できる場合がある。
ADVICSもパッド裏板の横面に錆がある場合について、錆を落としたうえで専用グリースを使用する方法を案内している。
ただし、ここには非常に重要な注意点がある。
グリースをブレーキパッドの摩擦面やブレーキディスクへ塗ってはいけない。
ブレーキは摩擦で車を止める部品だ。
滑りを良くする油を摩擦面へ塗るなど、本末転倒にもほどがある。
ブレーキ周辺の分解・清掃・給脂は、基本的に整備工場へ任せたほうが安全だ。
潤滑スプレーや防錆スプレーをローターへ吹かない
錆を見ると、
「CRCのような潤滑剤を吹けばいいのでは?」
と思うかもしれない。
やめたほうがいい。
ブレーキディスクとパッドの接触面は、強い摩擦力を発生させる必要がある。
そこへ油分を付着させれば、ブレーキ性能を落とす危険がある。
市販の防錆剤についても、ブレーキの摩擦面へ適当に塗るべきではない。
ブレーキ部品メーカーのENDLESSも、防錆処理されたローターとブレーキパッドの組み合わせについて注意を出しており、処理方法によってはパッドへ影響する可能性を示している。
ブレーキはDIY精神を試す場所ではない。
異音や引きずりが続くなら点検する
次のような症状があるなら、表面錆だけと決めつけないほうがよい。
・走行後も強い異音が続く
・ブレーキを踏むと振動する
・左右で効き方が違う
・車が片側へ流れる
・ブレーキを離しても引きずる感じがある
・ホイール周辺から焦げ臭いにおいがする
・一部分だけパッドやローターが異常に減っている
国土交通省もブレーキ装置について、ディスクとパッドのすき間や引きずり、パッドの摩耗、キャリパーの作動状態などを点検項目として示している。
この段階なら整備工場へ持っていくべきだ。
ブレーキパッドやローターの錆を予防する方法
定期的に車を動かす
かなり単純だが効果は大きい。
ブレーキディスクは車を走らせてブレーキを使うことで、表面の軽い錆が削られる。
長期間まったく動かさないより、定期的に走らせたほうが状態を維持しやすい。
特に数週間、数か月単位で放置する車では注意したい。
バッテリーだけ気にしていればいいわけではないのである。
洗車後はブレーキの状態を確認する
洗車後はボディをきれいにして満足し、そのまま駐車したくなる。
しかしブレーキ周辺にも大量の水がかかっている。
安全な場所で少し走行し、ブレーキを使って水分を飛ばしてから保管する方法は有効だ。
少なくとも、洗車翌日にローターが茶色くなっていて「突然壊れた」と驚く必要はなくなる。
融雪剤を浴びたら下回りを洗う
冬の道路を走行したあとは、ボディ表面だけではなく下回りも意識したい。
融雪剤や凍結防止剤が付着した状態を長期間放置すれば、金属部品の腐食を進める原因になる。
特に雪国へ旅行したあとや高速道路を長距離走行したあとには、下回り洗浄までしておくと安心感はかなり違う。
定期点検を軽視しない
ブレーキパッドの厚さだけを見るのでは足りない。
ローターの状態。
キャリパーの動き。
ブーツの劣化。
ブレーキホース。
ブレーキ液。
ブレーキシステムは複数の部品が組み合わさって動いている。
国土交通省も、ブレーキ装置の整備不良が事故につながる可能性を示し、定期的な点検整備を呼びかけている。
「まだブレーキパッドが残っているから大丈夫」では判断できない。
ブレーキの錆で車検に落ちることはある?
ブレーキディスクへ薄い表面錆が出ているだけで、直ちに車検不合格になると考える必要はない。
重要なのはブレーキが正常に機能しているかどうかだ。
ただし、腐食が進み、
パッドが正常に当たらない。
ブレーキを引きずっている。
ディスクが異常摩耗している。
キャリパーが正常に動かない。
こうした状態になれば話は変わる。
車検の直前だけ錆を落とせばいいというものでもない。
ブレーキは検査へ合格するために付いているのではなく、車を止めるために付いている。
ここは順番を間違えてはいけない。
ブレーキパッドの錆を放置してはいけないケース
判断に迷ったときは「錆の色」より「症状」を見ると分かりやすい。
雨や洗車後にディスクが薄く茶色くなり、走行後にはきれいになる。
この程度なら必要以上に心配する必要はない。
一方で、走行後も錆が残る、異音が消えない、ディスク表面がデコボコしている、ブレーキを引きずるなどの症状があるなら、整備工場で確認したほうがよい。
特にキャリパー内部やパッド摺動部の錆は外から確認しにくい。
素人判断で「表面だけだから大丈夫」と決めつけるのが一番怖い。
まとめ|ブレーキパッドの錆は「走って消えるか」が一つの目安
ホイールの奥が突然茶色くなれば、ブレーキが壊れたように見える。
だが、雨や洗車によってブレーキディスク表面へ薄い錆が発生すること自体は珍しくない。
通常走行でブレーキを使用し、錆が消えて異音もなく、ブレーキの効きにも問題がなければ、過度に心配する必要はないだろう。
問題は、その先だ。
走っても錆が消えない。
異音が続く。
ディスクがデコボコしている。
ブレーキを引きずる。
片側だけ減り方がおかしい。
こうした症状があれば、単なる表面錆ではなく、ローターやパッド、キャリパーなどに問題が起きている可能性がある。
そして、ブレーキの摩擦面へ潤滑剤や防錆スプレーを吹くような自己流の対処は避けたほうがいい。
私なら「軽い表面錆ならまず状態を確認し、走っても改善しないなら整備工場へ持っていく」という線を引く。
ブレーキは車の部品の中でも、ケチっていい場所ではない。錆そのものより、「いつもと違うブレーキの感覚」を見逃さないことのほうが重要だ。

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