「auのスターリンクなら、山の中でもYouTubeを見たり、普通に電話したりできるのでは?」
そう思っているなら、かなり危険だ。
2026年現在の「au Starlink Direct」は確かにすごい。携帯電話の基地局がない場所でも、対応スマートフォンがStarlink衛星と直接通信できる。山間部、海上、キャンプ場、災害時など、これまで完全な「圏外」だった場所でも通信できる可能性が出てきた。
ただし、普通のモバイル通信と同じではない。
ブラウザを自由に見たり、YouTubeやNetflixを見たり、110番や119番へ普通に電話したりできるサービスではないのだ。
では、au Starlink Directでは実際に何ができるのか?データ容量は何GBなのか?料金はいくらなのか?
調べれば調べるほど、このサービスは「圏外で普通にネットをするサービス」というより、「圏外で本当に必要な通信を残すサービス」と考えたほうが分かりやすい。
2026年9月時点の公式情報をもとに整理する。

au Starlink Directとは?普通のStarlinkとはまったく違う
まず最初に、この違いだけは押さえておきたい。
アンテナを設置するStarlinkではない
一般的な「Starlink」は、自宅や建物などに専用アンテナを設置し、衛星経由でインターネットへ接続するサービスだ。
一方の「au Starlink Direct」は違う。
対応するスマートフォンそのものがStarlink衛星と直接通信する。
つまり、Starlink用アンテナを屋根に付けたり、専用ルーターを持ち歩いたりする必要はない。
KDDIは2025年4月10日、日本で初めて衛星とスマートフォンの直接通信サービスとしてau Starlink Directを開始した。既存のau周波数を利用し、空が見える場所であれば、auの地上基地局が届かない場所でも通信できる仕組みだ。
個人的には、ここが一番大きい。
「衛星通信を使うために特殊な端末を持つ」のではなく、普段使っているスマホが圏外になったとき、そのまま衛星につながる。
この違いはかなり大きい。
au Starlink Directでできること
開始当初のau Starlink Directは、主にメッセージ中心のサービスだった。
しかし現在はかなり進化している。
SMS・iMessage・RCSなどでメッセージを送れる
圏外でも、対応端末ならSMSやiMessage、RCSなどを利用できる。
テキストだけでなく、対応機種では写真・動画・電子ファイルの添付や現在地の共有にも対応している。
さらに緊急地震速報や津波警報など、一部の緊急速報メールにも対応する。
山登りやキャンプで家族へ、
「無事に着いた」
「現在地はここ」
と送れるだけでも安心感はかなり違う。
災害で地上の基地局が使えなくなった場合にも価値があるはずだ。
LINEも使える。ただし何でもできるわけではない
現在はLINEもau Starlink Directの対応アプリに含まれている。
ただし、通常のLINEとまったく同じではない。
衛星通信中はテキストメッセージを利用できるものの、2026年7月時点ではLINEスタンプ、絵文字、画像・動画の送受信、音声通話、ビデオ通話などには対応していない。
ここは勘違いしやすい。
「LINE対応」という文字だけを見て、普段と同じLINEが使えると思わないほうがいい。
圏外から最低限の連絡を取るための機能と考えたほうが現実的だ。
天気・防災・地図・登山アプリなどが使える
2025年8月には、au Starlink Directで衛星データ通信が開始された。
これによってメッセージだけではなく、対応アプリを使ったデータ通信も可能になった。
2026年現在は対応アプリもかなり増えている。
たとえば、
- YAMAP
- ヤマレコ
- ウェザーニュース
- X
- 特務機関NERV防災
- LINE
- Yahoo! JAPAN
- Yahoo!マップ
- Yahoo!防災速報
- Yahoo!カーナビ
- SmartNews
- NewsPicks
- au PAY
- My au
などが対応している。
iPhoneではAppleのマップなどにも対応している。
登山や釣り、キャンプをする人にとっては、この方向の進化のほうが重要だと思う。
圏外で動画を見られることより、「天候が急変していないか」「現在地はどこか」「家族へ連絡できるか」のほうがよほど大事だからだ。
対応アプリは今後も変わるため、利用前には au公式の対応アプリ一覧 を確認しておきたい。
au Starlink Directではできないこと
かなり便利になったものの、普通のモバイル回線と同じだと思うと期待外れになる。
YouTubeやNetflixは基本的に見られない
現在のau Starlink Directでは、対応アプリ以外の自由なデータ通信はできない。
au公式でも、Webブラウザや動画配信アプリ、対応していないSNSなどは利用できないとしている。
つまり、
「圏外だけどChromeで検索しよう」
「暇だからYouTubeを見よう」
「Netflixを見ながらキャンプしよう」
という使い方はできない。
衛星につながるからといって、スマホが普通の4Gや5Gと同じ状態になるわけではないのだ。
普通の音声通話はまだできない
もう一つ重要なのが音声通話だ。
2026年9月時点では、通常のVoLTEによる音声通話には対応していない。
110番や119番などへの通常の緊急通報も利用できない。auは緊急時の代替手段として「au Starlink Direct SOS」も用意している。
「衛星につながる=衛星電話になる」
ではない。
ここは命に関わる可能性もあるので、アウトドアで使う人ほど覚えておくべきだ。
au Starlink Directのデータ容量は何GB?
ここがかなり分かりにくい。
結論から言えば、「au Starlink Directは月100GB」のような単純なサービスではない。
契約している回線によって扱いが変わる。
auユーザーは契約中プランのデータ容量が基本
auユーザーの場合、au Starlink Directのデータ通信は基本的に契約している料金プランのデータ容量から消費する仕組みになっている。
ただしau公式では、一定の条件のもと「当面の間」はデータ容量消費の対象外とする扱いも案内されている。
つまり現時点では、「衛星通信専用に毎月○GBもらえる」と考えるより、契約中のau回線に追加される通信機能と理解したほうが分かりやすい。
そして、この「当面」という言葉はかなり重要だ。
永続的に無料・容量消費なしと保証されているわけではない。
料金やデータ容量については契約前や旅行・登山前に au Starlink Direct公式ページ を確認したほうがいい。
UQ mobile・他社ユーザーは「専用プラン+」がある
auだけでなく、UQ mobile、povo2.0、他社回線のユーザーも利用できる。
その場合は「au Starlink Direct専用プラン+」を利用する。
このプランには月間1GBのデータ容量が設定されており、au 5G/4G LTEエリア内でも1GBまで通信できる。
一方、Starlink衛星を使ったデータ通信については、公式サイトでは当面の間、この1GBの容量消費対象外とされている。
そのため、
「衛星通信で1GB使ったら終わり」
という意味ではない。
このあたりは名前だけを見ると非常に分かりにくい。人類はなぜ通信料金をここまで複雑にするのか。
au Starlink Directの料金はいくら?
2026年9月時点では、auユーザーは対象条件を満たせばau Starlink Directを当面追加料金なしで利用できる。
auユーザーは当面追加料金なし
対応するauスマートフォンを利用していれば、基本的に申し込み不要で利用できる。
月額料金は当面追加料金なしだ。
「衛星通信」という言葉から高額な料金を想像していたので、この点はかなり意外だった。
普段は使わなくても、圏外へ行ったときの保険としてスマホに機能が入っているだけでも価値はある。
UQ mobileは0円または550円、他社は1,650円
UQ mobile・他社回線では「au Starlink Direct専用プラン+」を利用する。
2026年9月時点では、
- UQ mobileのコミコミプランバリュー/トクトクプラン2:月額0円
- UQ mobileのその他対象プラン:月額550円
- povo2.0を含む他社回線:月額1,650円
となっている。
他社回線の場合も申し込み当月から3カ月は0円となる案内がある。
料金条件やキャンペーンは変更されやすいので、契約時には公式情報を確認したい。
au Starlink Directの対応エリアは?
日本国内のau圏外エリアで利用できる
au Starlink Directの対象は、日本国内のau 5G/4G LTEエリア外だ。
領海・接続水域やフェリー航路も含まれる。
逆に、auの電波が届いている場所やWi-Fiにつながっている場所では、基本的に衛星通信へ切り替える必要はない。
ただし「日本なら地下でもどこでもつながる」という意味ではない。
衛星と直接通信するため、空が見えることが重要になる。
建物・山・木に囲まれた場所ではつながりにくい
周囲に高い建物や山、木などの障害物があると、衛星との通信が難しくなる場合がある。
屋内やトンネルも基本的には厳しい。
つまり、
「圏外なら必ずつながる」
ではなく、
「地上回線が圏外で、なおかつ衛星が見える環境ならつながる」
という理解が正しい。
登山で使う場合も、深い谷や森林の中では衛星を捕まえにくい可能性がある。
海外でもau Starlink Directが使える
このサービスは日本だけで終わらなかった。
2026年3月にはアメリカで海外ローミングを開始し、その後カナダ、フィリピン、ニュージーランドにも拡大している。
2026年8月時点では、
- アメリカ
- カナダ
- フィリピン
- ニュージーランド
の4カ国で対応している。
対応国では、通常のモバイル回線が圏外になった場合でも、対応アプリによるデータ通信やメッセージ送受信が可能だ。
海外旅行で国立公園や離島などへ行く人には、かなり面白い機能だと思う。
ただし国ごとに対応機種やエリアが異なるため、渡航前の確認は必須だ。
対応スマホは?iPhoneでも使える?
対応機種はかなり増えた。
au公式では2026年8月時点で99機種に対応している。
iPhoneについても、iPhone 13シリーズ以降を中心に多くのモデルが対応している。2025年にはiPhoneで衛星データ通信も利用できるようになった。
AndroidでもPixel、Galaxyなど対応機種が拡大している。
ただし、機種によって利用できる機能が異なる。
「Starlink Direct対応」と書かれていても、メッセージだけなのか、データ通信まで対応しているのかを確認する必要がある。
最新機種は au公式の対応機種一覧 で確認するのが確実だ。
au Starlink Directを使う前にやっておくこと
衛星通信は、圏外になってから準備しても遅い。
ここはかなり重要だ。
OSとアプリを事前に更新する
対応スマートフォンのOSやソフトウェア、利用したいアプリは、圏内にいるうちに最新版へ更新しておく。
衛星モードではアプリの新規ダウンロードやアップデート、サービスによっては初回ログインができない場合がある。
山へ入ってから、
「YAMAP入れてなかった」
では笑えない。
必要なアプリは出発前に起動し、ログインまで確認しておくべきだ。
バッテリー対策も必要
衛星と通信するには、空が見える場所で接続を待つ場面も考えられる。
緊急時にスマホの電池が切れれば、どれだけ衛星通信が進化しても意味がない。
登山・キャンプ・災害対策として使うなら、モバイルバッテリーまで含めて準備しておきたい。
2027年には高速通信と音声通話へ進化する予定
au Starlink Directはまだ完成形ではない。
KDDIは2026年9月、次世代衛星「Starlink Mobile V2」のサービス提供契約をSpaceXと締結したと発表した。
目標はかなり大きい。
2027年内に、圏外エリアでも現在より高速なブロードバンド通信とVoLTEによる音声通話を提供することを目指している。
実現すれば、現在の「対応アプリだけ利用できる衛星通信」から、普通のモバイル通信にさらに近づくことになる。
今はまだ、
「圏外でも最低限つながる」
という段階だ。
しかし数年後には、「圏外」という言葉そのものの意味が変わっている可能性がある。
au Starlink Directはどんな人に向いている?
私なら、特に次のような人にはかなり価値があると考える。
登山・キャンプをする人
一番相性がいい。
YAMAPやヤマレコ、天気、防災アプリ、位置情報共有、メッセージなど、山で必要になる機能が重点的に対応している。
動画を見るためではなく、「帰ってくるため」の通信として使える。
釣りや船に乗る人
海上も地上基地局の電波が届きにくい場所が多い。
au Starlink Directは領海や接続水域、フェリー航路も対象としているため、海との相性もいい。
災害対策を重視する人
地震や台風などで地上の通信設備に問題が起きても、衛星へ直接つながる経路が残っている意味は大きい。
普段ほとんど使わなくても構わない。
非常時に使えること自体が価値になるサービスだと思う。
まとめ|au Starlink Directは「圏外で普通にネット」ではなく「圏外でもつながる保険」
au Starlink Directを「Starlinkだから、圏外でも高速インターネットが使い放題」と考えると期待しすぎだ。
2026年現在、ブラウザやYouTubeなどを自由に使えるわけではなく、通常の音声通話にもまだ対応していない。
その一方で、SMS、iMessage、RCS、LINEのテキストメッセージ、位置情報共有、天気、防災、地図、登山系サービスなど、本当に圏外で必要になりやすい通信はかなり充実してきた。
auユーザーなら当面追加料金なしで利用でき、専用アンテナも必要ない。対応スマホを持っているだけで、これまで完全に通信が途切れていた場所にもう一つの通信手段を持てる。
これは十分に大きい。
私ならau Starlink Directを「圏外で娯楽を楽しむための高速回線」とは考えない。
山、海、災害時などで「誰にも連絡できない」という最悪の状態を減らすための通信手段として考える。
その見方をすると、このサービスの価値はかなり分かりやすくなる。
しかもKDDIは2027年内に、高速データ通信と音声通話まで広げる計画を示している。
今はまだ制限が多い。
それでも、「圏外だから何もできない」という時代は、すでに終わり始めている。


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