「2026年から接骨院で健康保険が使えなくなるらしい」
そんな話を聞くと、これまで整骨院や接骨院に通っていた人は少し不安になるはずだ。では、本当に2026年から保険が使えなくなったのだろうか?
結論から言えば、接骨院で健康保険が全面的に使えなくなったわけではない。
ただし、2026年7月1日から「柔道整復療養費」の料金とルールがかなり見直された。特に、長期間にわたって多くの部位を施術しているケースへのチェックは以前より強くなっている。
私が厚生労働省の資料を読み比べて感じたのは、「単なる値上げ」よりこちらのほうが重要だということだ。
肩こりや慢性的な腰痛まで「接骨院なら保険で安く受けられる」と考えているなら注意したほうがいい。そもそも、その使い方は2026年以前から保険対象ではないのである。2026年の改定によって、その線引きと請求内容をさらに確認しやすくする方向へ制度が動いたと考えるのが自然だ。 (厚生労働省)
2026年7月1日に接骨院の保険制度が変更された
2026年、正確には令和8年7月1日の施術分から、柔道整復師の施術にかかる療養費制度が改定された。
厚生労働省は2026年6月1日に改正通知を出しており、7月1日から新しい算定基準が適用されている。改定率は全体でプラス0.60%となった。 (厚生労働省)
一次情報は厚生労働省の資料で確認できる。
「保険診療が廃止された」という変更ではない
まず、ここを勘違いしてはいけない。
2026年7月から「接骨院では健康保険を使えません」という制度に変わったわけではない。
そもそも病院の保険診療と、接骨院の仕組みは少し違う。
接骨院では、柔道整復師による施術について「療養費」が支給される。通常なら患者が一度全額を払い、あとから保険者へ請求する「償還払い」が原則だ。
ただし、柔道整復では「受領委任」が認められている。
そのため、多くの接骨院では病院と同じように、患者は窓口で1~3割程度の自己負担分だけを支払い、残りを柔道整復師が健康保険へ請求している。
人間から見ればどちらも「保険を使って払う」なので同じに見えるが、制度側は妙に細かく別物なのである。 (厚生労働省)
2026年の接骨院・整骨院で変わった5つのポイント
2026年改定はかなり細かい。
しかし、患者側から見て重要なのは、料金そのものより初検料、多部位施術、明細書、長期間の施術だ。
初検料が1,560円、再検料が420円へ値上げ
2026年7月から初検料は、
1,550円 → 1,560円
へ10円引き上げられた。
再検料も、
410円 → 420円
となっている。
さらに再検料については、初検後の連続する2回の施術まで算定できる仕組みに変更された。
金額だけを見ると、大幅な値上げではない。
しかし、初検料の扱いそのものが変わった点は重要だ。
2026年7月以降は、同じ接骨院ですでに施術を継続している場合、別の部位を新しく負傷したからといって簡単に初検料を算定する仕組みではなくなった。
さらに、施術が終了または中止してから3か月以内に同じ施術所で再び施術を受けた場合も、原則として初検料は算定できない。1か月以上3か月以内なら、一定の場合に再検料を算定する仕組みになっている。 (厚生労働省)
これは患者の保険適用を禁止する変更ではない。
何度も「新しい初診」として扱うことを難しくした変更と考えたほうが分かりやすい。
打撲・捻挫の施術料金も引き上げられた
打撲や捻挫に対する初回の施療料も、
760円 → 770円
へ変更された。
さらに、その後の施術に使われる後療料は、
505円 → 550円
となった。
こちらは45円の引き上げなので、今回の改定では比較的大きい。
温罨法料は75円から80円、冷罨法料は85円から80円、電療料は33円から46円へ変更された。つまり、すべてが値上げされたわけではなく、冷罨法料については5円下がっている。
患者が実際に窓口で払う金額は、負担割合、施術内容、部位数などで変わる。
「2026年から接骨院代が一気に高額になった」というほどではないが、以前より多少変わるケースはあるだろう。
2部位目の施術が80%に減額される
今回、私がかなり重要だと感じた変更がこれだ。
打撲・捻挫の後療料などについて、以前から3部位目は60%へ減額されていたが、2026年7月からは2部位目についても80%に減額する仕組みが導入された。
例えば、右足首と左手首など、複数の部位について施術を受けた場合、単純に「1部位分×2」とはならない。
温罨法、冷罨法、電療料についても2部位目の逓減が適用される。
患者からすると保険が使えなくなるわけではない。しかし接骨院側からすると、複数部位を施術したときの療養費請求額が抑えられる。
2026年改定には、多部位請求をより厳しく見る方向性がかなりはっきり出ている。
明細書の内容が分かりやすくなった
2026年改定では明細書も強化された。
従来の「明細書発行体制加算」は「明細書発行加算」へ変更され、無償で明細書を交付した場合、原則として1回につき10円を算定できる仕組みとなった。
さらに明細書には、負傷名または施術した部位を記載する欄が追加された。
これは患者側には悪い変更ではない。
「今日は何の負傷について保険請求されたのか」が以前より確認しやすくなるからだ。
明細書は原則として支払いのたびに交付する。ただし患者が希望すれば、1か月分をまとめて交付することも可能だ。その場合は、患者が月まとめを希望したことを確認するための手続きが必要になる。 (厚生労働省)
接骨院で保険を使っているなら、私は明細書を一度きちんと見ることをおすすめしたい。
自分では「腰を診てもらった」と思っていても、保険請求上どの負傷・部位になっているかは別の話だからだ。
長期間・多部位で接骨院に通う人は要注意
2026年改定で最も注意したいのが「患者ごとの償還払い」だ。
1年間で8か月以上・9部位以上が新しいチェック基準
新しい制度では、前月までの連続する12か月間に、通算8か月以上かつ9部位以上の施術を受けている患者が、患者ごとの償還払いへの変更対象になり得る。
しかも、途中で接骨院を変えてもリセットされるとは限らない。
厚生労働省のQ&Aでは、A院からB院へ転院した場合でも、保険者が通院月数と施術部位数を合計して計算するとしている。 (厚生労働省)
ただし、8か月・9部位に達した瞬間、自動的に健康保険が使えなくなるわけではない。
ここは非常に重要だ。
対象になっても健康保険そのものが消えるわけではない
基準に該当した場合、まず注意喚起などが行われる。
その翌月以降も同じような施術と療養費請求が続いた場合、保険者は患者本人へ文書で照会し、必要に応じて電話や面会などで事実関係を確認する。
その結果、今後も個別に施術の必要性を確認する必要があると判断されると、「償還払い変更通知」が送られる場合がある。 (厚生労働省)
償還払いになると、これまでのように接骨院で自己負担分だけを払って終わり、とはならない。
原則として患者が施術費をいったん全額支払い、その後、加入している健康保険へ療養費を請求する形になる。
つまり、
「保険が完全に使えなくなる」
ではなく、
「窓口で保険分を差し引いてもらう受領委任が使えなくなる可能性がある」
という話だ。
この違いは大きい。
接骨院で健康保険が使える症状は2026年も基本的に同じ
では、普通に接骨院へ行く人は何に注意すればよいのか。
実はかなり単純だ。
骨折・脱臼・打撲・捻挫などは保険対象
厚生労働省は、柔道整復師による施術について、骨折、脱臼、打撲、捻挫、いわゆる肉離れなどを健康保険の対象としている。
骨折と脱臼については、緊急の場合を除き、原則として事前に医師の同意が必要になる。 (厚生労働省)
一次情報はこちらで確認できる。
厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」
肩こりや単なる疲労は保険対象ではない
一方、単なる肩こりや筋肉疲労などは健康保険の対象にならない。
これは2026年から始まった話ではない。
以前から対象外だ。
協会けんぽも、日常生活による単純な疲労、肩こり、腰痛、体調不良、慢性病などについては健康保険が使えないと案内している。 (共済会健康保険組合)
ここを「接骨院なら何でも保険が使える」と考えるのは危険だ。
「腰が痛い」という症状だけでは判断できない。
転倒して腰を捻ったのか、長年続いている慢性的な腰痛なのかで扱いが変わるからだ。
病院で同じ負傷を治療中なら接骨院では保険対象にならない
もう一つ忘れやすいのが病院との併用だ。
厚生労働省は、病院や診療所で同じ負傷を治療している間に柔道整復師の施術を受けても、原則として療養費の対象にならないとしている。 (厚生労働省)
「病院でも健康保険、接骨院でも健康保険」という二重利用が自由にできるわけではない。
迷った場合は、自分で判断して黙って通うより、接骨院と加入している健康保険へ確認したほうが安全だ。
2026年改定で接骨院は今後さらに厳しくなるのか
今回の改定を見る限り、私はその可能性は高いと思う。
厚生労働省は今後の検討事項として、複数部位の施術、長期・頻回施術、償還払いの基準などについて、引き続き検討するとしている。保険者単位で償還払いへ変更する仕組みについても、必要に応じて検討するとしている。
さらに2026年7月にも、柔道整復療養費のオンライン請求導入について厚生労働省のワーキンググループが続いている。請求内容を電子的に確認しやすくする方向は止まっていない。 (厚生労働省)
だからといって、「接骨院から保険を排除する」という話ではない。
必要な外傷に対して適正に保険を使う人まで締め出す制度では困る。
一方で、慢性的な肩こりを捻挫として扱ったり、負傷部位を次々変えて長期間保険請求したりするようなケースに対して、以前より厳しく確認する方向へ進んでいるのは間違いないだろう。
まとめ|2026年に接骨院の保険は廃止されていないがルールは厳しくなった
2026年7月1日から接骨院・整骨院の「柔道整復療養費」は変更された。
しかし、接骨院で健康保険が使えなくなったわけではない。
骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉離れなど、これまで保険対象だった外傷については、2026年も基本的な考え方は変わっていない。 (厚生労働省)
変わったのは、その周辺だ。
初検料や後療料などの料金が見直され、2部位目の施術には80%の逓減が導入された。明細書には負傷名や施術部位が表示されるようになり、長期間・多部位の施術を受けている患者については償還払いへ変更できる仕組みも強化された。
私が今回の改定で一番重要だと思うのは、数十円の料金変更ではない。
「何のケガで、どの部位を、どれだけの期間施術しているのか」を以前より厳密に確認する制度へ動いていることだ。
普通に捻挫や打撲をして接骨院へ行く人まで、突然保険が使えなくなるような改定ではない。
ただ、「なんとなく肩が重い」「昔から腰が痛い」「疲れたから揉んでもらいたい」という理由で健康保険を使える制度でもない。それは2026年になって急に厳しくなったのではなく、もともとそういう制度なのである。
接骨院で保険を使うときは、受付で保険証やマイナ保険証を出すだけで安心せず、自分の症状が何という負傷として扱われ、明細書に何と記載されているかまで確認する。
2026年以降は、そのくらいの距離感で利用するのがちょうどいい。

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