猫を飼う人にとって「FIP(猫伝染性腹膜炎)」という病気は、耳にするだけでも不安になる言葉です。かつては「不治の病」と言われ、診断されれば余命はわずかとされていました。しかし、近年は治療法の研究が進み、希望を持てる時代になっています。本記事では、FIP 猫に関する最新の知識を、症状から診断、治療方法、そして完治の可能性まで詳しく解説します。飼い主が知っておくべき情報を整理し、不安を和らげると同時に正しい知識を身につけられるようにまとめました。
FIP 猫とは?病気の基本知識
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルス(FCoV)が突然変異を起こして発症する重篤な病気です。多くの猫はコロナウイルスに感染しても無症状で過ごしますが、体内で変異が起こるとFIPを発症します。
FIPは免疫反応の異常によって全身性の炎症が広がるため、複数の臓器に影響を及ぼします。若齢猫や免疫力の低い猫に発症が多く見られ、致死率が非常に高いのが特徴です。
FIP 猫の発症年齢とリスク要因
FIPはどの年齢の猫にも発症しますが、特に以下のようなケースで発症リスクが高いとされています。
- 生後6か月〜2歳の若い猫
- 多頭飼育環境で暮らす猫
- 遺伝的に免疫力が弱い猫種(例:ベンガル、ラグドール、アビシニアン)
- 大きなストレスや病気を抱えている猫
こうした条件が重なると、体内のコロナウイルスが変異を起こしやすくなり、FIPの発症につながります。
FIP 猫の種類(ウエットタイプとドライタイプ)
FIPには大きく分けて「ウエットタイプ」と「ドライタイプ」が存在し、それぞれ症状が異なります。
ウエットタイプ(湿潤型)
- 腹水や胸水が溜まり、呼吸困難や腹部膨満を起こす
- 病気の進行が早く、急激に衰弱するケースが多い
- 発熱や食欲不振も見られる
ドライタイプ(非湿潤型)
- 臓器や神経に炎症が広がり、多様な症状が出る
- 進行が比較的緩やか
- 神経症状(けいれん、麻痺、斜視)が出ることもある
- 眼の炎症による視力障害が起きる場合もある
混合型と呼ばれる中間的なタイプも存在し、診断を複雑にします。
FIP 猫の主な症状
FIPの症状は進行度やタイプによって違いますが、共通して次のようなサインが見られます。
- 長引く高熱(抗生物質でも下がらない)
- 元気消失や食欲不振
- 体重減少
- 下痢や嘔吐
- 呼吸困難、腹部の膨張(ウエットタイプ)
- 神経症状や目の異常(ドライタイプ)
症状が多岐にわたるため、飼い主が早期に異変に気づき、動物病院で精密検査を受けることが重要です。
FIP 猫の診断方法
FIPの診断は非常に難しく、確定診断ができる検査は限られています。主な診断手法は以下の通りです。
- 血液検査:高いグロブリン値、貧血、白血球数の異常を確認
- 画像診断(エコー・レントゲン):腹水や胸水の有無をチェック
- 腹水・胸水の検査:特徴的な淡黄色の粘稠な液体を確認
- PCR検査:FCoVの遺伝子を検出し、FIPの可能性を判断
完全に断定するのは難しいですが、症状や検査結果を総合的に見て診断が行われます。
FIP 猫の治療法:最新の選択肢
かつては「FIPに有効な治療法はない」とされていましたが、現在は大きく状況が変わっています。
対症療法
- 栄養補給
- 輸液や利尿剤で腹水・胸水を軽減
- 抗炎症薬で苦痛を和らげる
これは根本治療ではなく、延命と生活の質を保つための方法です。
抗ウイルス薬(GS-441524)
- 海外で開発された新薬で、FIP治療に劇的な効果を示しています
- 日本では未承認薬のため、正規ルートでの入手が難しい
- 高額な治療費がかかる場合が多い
他の新薬・臨床研究
- Molnupiravirなどの抗ウイルス薬が研究段階で使用されるケースもある
- 世界中で新しい治療薬の開発が進んでいる
FIP 猫の完治の可能性
数年前までは「FIP=余命数週間」という認識でした。しかし、現在は新薬の普及によって「完治」が現実的なものとなりつつあります。
- GS-441524を使用した場合、約80%以上の猫が寛解するという報告あり
- 治療期間は通常12週間前後
- 治療後も再発するケースはあるが、再治療で改善する可能性も高い
希望を捨てる必要はなくなってきており、正しい治療選択によって猫が健康に戻る例も増えています。
FIP 猫の治療費
FIP治療にかかる費用は、飼い主にとって大きな負担になります。
- 一般的な治療費相場:数十万円〜100万円以上
- 薬の種類や猫の体重によって変動
- 治療後も定期的な血液検査や診察が必要
経済的な面も含め、事前に動物病院と相談しておくことが重要です。
FIP 猫の食事とケア
治療中や回復期の猫には、免疫力を高めるサポートが必要です。
- 高栄養・消化吸収の良いフードを与える
- サプリメント(免疫サポート、オメガ3脂肪酸など)を活用
- 清潔でストレスの少ない環境を整える
- 定期的な健康チェックを行う
飼い主のケアが治療の効果を左右することもあります。
FIP 猫と余命
治療を受けない場合、FIP猫の余命は数週間から数か月とされています。特にウエットタイプは進行が早く、数日〜数週間で亡くなるケースも少なくありません。
しかし、治療薬が使える場合は状況が一変します。完治や長期寛解が期待でき、健康を取り戻す猫も増えています。
FIP 猫の再発リスク
治療で寛解しても、完全に再発リスクがゼロになるわけではありません。
- 治療終了後数か月〜数年後に再発するケースがある
- 特に神経症状型のFIPは再発しやすい傾向
- ただし再治療で再び改善する可能性がある
定期検診を続けることが重要です。
飼い主ができる早期発見のポイント
飼い主がFIPに気づくためには、日常の観察が欠かせません。
- 毎日の食欲や排便のチェック
- 体重の増減を定期的に測定
- 高熱や元気消失を放置しない
- 早めに動物病院で相談
小さな変化を見逃さないことが、猫の命を救う鍵となります。
FIP 猫に関するよくある質問(FAQ)
Q1. FIPは他の猫にうつりますか?
FIPそのものは感染しませんが、原因となる猫コロナウイルスはうつります。ただし、発症するかどうかは個体の免疫や体質に左右されます。
Q2. FIPと猫エイズや白血病の違いは?
猫エイズ(FIV)や猫白血病(FeLV)はウイルスが直接免疫力を下げる病気ですが、FIPは体内で変異したコロナウイルスによる炎症が特徴です。
Q3. FIPの治療薬は日本で使えますか?
日本では未承認薬が多く、入手には制限があります。動物病院や専門家に相談する必要があります。
Q4. FIPが完治した猫は普通の生活に戻れますか?
治療に成功した場合、ほとんどの猫は健康な生活に戻れます。ただし再発リスクがあるため、定期検診が必要です。
Q5. FIP猫に効果的なサプリメントはありますか?
直接治療するサプリはありませんが、免疫力をサポートする栄養補助食品は役立ちます。
Q6. 予防方法はありますか?
確実な予防法はありませんが、ストレスの少ない環境づくりや衛生管理、多頭飼育での感染予防が重要です。
まとめ
FIP 猫はかつて「治らない病気」とされてきましたが、今では治療薬の進歩により希望が持てる時代になっています。症状を早期に見抜き、適切な治療を選択すれば、完治や長期的な健康が期待できます。飼い主が正しい知識を持ち、猫とともに闘う姿勢が何より大切です。