たった1通のDMを開いただけで、Xのアカウントだけでなく、銀行口座やクレジットカードまで狙われる。これは大げさな話ではない。
「あなたのアカウントが違反しています」「プレゼントに当選しました」「必ず利益が出る投資を教えます」
こんなDMが届いたとき、あなたは本当に無視できるだろうか?
X(旧Twitter)のDM詐欺は、昔のような不自然な日本語だけでは見抜けなくなっている。実在する企業や著名人になりすまし、自然な文章で信用させる手口が増えているからだ。
結論から言えば、知らない相手から届いたDMのリンクは開かない。お金、パスワード、認証コードを求められたら詐欺を疑う。この2つを守るだけでも、多くの被害は防げる。
しかし、実際の詐欺はもっと巧妙だ。この記事では、XのDM詐欺で使われる主な手口、被害事例、怪しいDMの見分け方、被害に遭った場合の対処法まで詳しく解説する。
X(旧Twitter)のDM詐欺が急増している
Xだけを対象にしたDM詐欺の被害件数は、警察庁から公表されていない。そのため、「Xだけで何件発生した」と正確に断定することはできない。
ただし、SNSのDMを入口とした投資詐欺やロマンス詐欺が増えていることは事実だ。
警察庁によると、2025年のSNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺は、合計1万5,168件、被害額は約1,834億3,000万円に達した。SNS型投資詐欺だけでも9,523件、被害額は約1,288億円となっている。
SNS型ロマンス詐欺も5,645件、被害額は約546億4,000万円で、件数・被害額ともに前年より増加した。もはや「一部の人だけが引っかかる小さな詐欺」ではない。
さらに、2026年1月から5月までのSNS型投資詐欺は5,099件、被害額は約700億4,000万円だった。前年同期より件数は2,843件増え、被害額は約426億3,000万円増えている。被害の勢いは止まるどころか、さらに強くなっている。
警察庁も、見知らぬアカウントから届くDMに注意するよう呼びかけている。SNS型投資詐欺では、2024年7月以降、DMが広告を上回り、最も多い最初の接触手段になった。ロマンス詐欺では、最初の接触手段の大半をDMが占めている。
DMは他人から見えない。詐欺師にとって、第三者に邪魔されず、相手をゆっくり信用させられる都合のよい場所なのだ。
XのDM詐欺で多い被害事例
著名人や投資家になりすました投資詐欺
Xで特に注意したいのが、著名人、投資家、経済評論家、実業家などになりすましたアカウントだ。
最初は「投資に興味はありますか」「無料の投資グループを紹介します」など、軽い内容のDMが届く。
返信すると、LINEやTelegramなど別のアプリへ誘導される。その後、偽の投資サイトやアプリを紹介され、株式、FX、暗号資産への入金を求められる。
偽サイトの画面では利益が増えているように表示される。しかし、出金しようとすると「税金」「保証金」「出金手数料」などを追加で要求される。
ここで支払っても、お金は戻らない。利益として表示されている数字も、詐欺師が作った偽物だ。
警察庁は、SNSのDMで接触した後、別のSNSへ誘導し、投資金や手数料の名目で何度も送金させる手口を紹介している。被害額が1,000万円を超える場合もある。
「必ずもうかる」「元本保証」「特別な情報がある」と言われた時点で、投資ではなく詐欺を疑うべきだ。投資に絶対はない。絶対があるのは、詐欺師があなたのお金を狙っていることくらいだ。
恋愛感情を利用するロマンス詐欺
外国人、経営者、医師、軍人、投資家などを名乗る相手から、突然DMが届くことがある。
最初は普通のあいさつだ。
「あなたの投稿が気になりました」
「日本の文化が好きです」
「もっと話してみたいです」
やり取りを続けるうちに、「愛している」「将来一緒に暮らしたい」などと言われる。そして十分に信用させた後、投資や送金の話が始まる。
病気、事故、渡航費、荷物の受取手数料などを理由に、お金を要求されるケースもある。
警察庁が紹介するSNS型ロマンス詐欺では、SNSで知り合い、別のメッセージサービスへ移動し、恋愛感情や親近感を抱かせた後に金銭を要求する流れが確認されている。
一度も会ったことのない相手がお金を求めてきたら、関係がどれほど親密に見えても止まるべきだ。愛情を証明するために暗号資産を送る必要などない。
Xの運営やサポートを装うフィッシング詐欺
「あなたのアカウントに著作権違反が確認されました」
「24時間以内に本人確認をしないと凍結されます」
「認証バッジを維持するためにログインしてください」
このようなDMで偽サイトへ誘導し、XのIDやパスワードを盗む手口もある。
リンク先はXのログイン画面にそっくり作られていることがある。しかし、入力した情報はXではなく、詐欺師に送られる。
X公式は、Xがメール、DM、返信でパスワードを要求することはないと案内している。DMでパスワードや認証コードを求められたら、その時点で偽物だ。
偽サイトは見た目だけでは判断しにくい。警察庁も、正規サイトに似たドメインが使われるため、リンクの見た目だけで本物かどうかを判断するのは非常に難しいとしている。
「本物そっくりだから安全」という考えは捨てるべきだ。そっくりに作ることこそ、フィッシング詐欺の仕事なのだ。
知人の乗っ取られたアカウントから届く詐欺DM
詐欺DMは、知らないアカウントから届くとは限らない。
友人、取引先、フォロワーなど、以前から知っているアカウントが乗っ取られ、詐欺のDMが送られる場合がある。
「この動画にあなたが映っています」
「投票に協力してください」
「認証コードを送ってください」
知っている相手から届くと、警戒心は下がりやすい。しかし、普段と違う内容や不自然なリンクが送られてきた場合は、別の連絡手段で本人に確認した方がよい。
X公式も、自分の知らない間にDMが送信されている場合、アカウントが乗っ取られている可能性があると説明している。
信用するべきなのはアカウント名ではなく、メッセージの内容だ。
副業や高額報酬をうたう詐欺
「スマホだけで月50万円」
「動画を見るだけで報酬が発生」
「簡単な作業をするだけ」
このような副業DMにも注意が必要だ。
最初は少額の報酬を実際に支払い、信用させる手口もある。その後、高額な教材費、登録料、サポート料を請求されたり、借金を勧められたりする。
遠隔操作アプリをインストールさせ、スマートフォンの画面を見ながら消費者金融から借入れをさせる事例も確認されている。IPAは、SNSのDMをきっかけに副業業者へ連絡し、遠隔操作アプリを入れさせられる手口を注意喚起している。
仕事を始める側が、先に高額な費用を払わなければならない時点で異常だ。稼ぐために借金をさせる副業など、まともな商売ではない。
当選やプレゼントを装う詐欺
「キャンペーンに当選しました」
「現金10万円を受け取れます」
「商品発送のために情報を入力してください」
このようなDMから、偽サイトへ誘導する手口もある。
発送手数料として少額のクレジットカード決済を求め、カード番号を盗む場合もある。少額だから安全というわけではない。詐欺師が欲しいのは、その数百円ではなくカード情報だ。
応募した覚えのないキャンペーンに当選することはない。応募していた場合でも、DM内のリンクではなく、企業の公式サイトや公式アカウントからキャンペーン情報を確認すべきだ。
警察官や公的機関を装うDM詐欺
警察官を名乗り、「あなたに逮捕状が出ている」「口座が犯罪に使われている」などと不安をあおる手口もある。
偽物の警察手帳や逮捕状の画像を送り、資産状況を聞き出したり、「調査のため」と説明して送金させたりする。
警察庁は、警察官を名乗る人物がSNSで偽の逮捕状を送り、身の潔白を証明するために資産を提出するよう求める詐欺を注意喚起している。
警察がDMで逮捕状を送り、資産を個人口座へ振り込ませることはない。焦って相手の指示に従わず、いったん連絡を切り、自分で調べた警察署の番号へ確認するべきだ。
Xの詐欺DMを見分けるポイント
お金や暗号資産の話が出る
知らない相手から投資、寄付、副業、手数料、保証金などの話が出たら警戒するべきだ。
特に、個人名義の銀行口座へ振り込むよう求められた場合は危険性が高い。消費者庁も、投資資金の振込先として個人名義の口座を指定された場合は詐欺だと注意喚起している。
暗号資産での送金、電子マネーの購入、ギフトカード番号の送信を求める行為も危険だ。
外部のメッセージアプリへ移動させる
詐欺師は、X上で通報されたり、アカウントが停止されたりすることを嫌う。
そのため、すぐにLINE、Telegram、WhatsAppなどへ移動させようとする。
外部アプリへの移動だけで詐欺とは断定できない。しかし、知り合って間もない相手が強く移動を求め、その後に投資や送金の話を始めた場合は、ほぼ赤信号だ。
パスワードや認証コードを要求する
Xのパスワード、メールのパスワード、SMSに届いた認証コードを他人へ教えてはいけない。
認証コードは、本人確認のために自分だけが使う数字だ。サポート担当者、友人、企業がDMで聞き出す必要はない。
コードを渡す行為は、家の鍵を詐欺師へ手渡すのと同じだ。
急がせたり不安をあおったりする
「今すぐ手続きしてください」
「本日中に対応しないと凍結します」
「他の人には相談しないでください」
詐欺師は、相手に考える時間を与えない。
本当に重要な連絡か確認するためには、DMのリンクを使わず、公式アプリやブックマークからサービスへアクセスするべきだ。IPAも、SNSのチャットやDMに書かれたURLを安易に開かないよう呼びかけている。
プロフィールだけで信用しない
フォロワー数が多い、長期間使われている、プロフィール写真が立派という理由だけで信用してはいけない。
アカウント自体が乗っ取られている場合もある。プロフィール写真や投稿が、他人から盗まれている可能性もある。
また、文章が自然だから安全とも限らない。生成AIを使えば、詐欺師でも自然な日本語を短時間で作れる。2026年度版のフィッシング対策ガイドラインでも、生成AIを使った自然な文章や、相手に合わせたメッセージによる攻撃の巧妙化が指摘されている。
「日本語がおかしくないから本物」という見分け方は、すでに通用しない。
怪しいDMが届いたときの対処法
返信せずリンクも開かない
怪しいDMには返信しない。リンク、添付ファイル、QRコードも開かない。
返信すると、そのアカウントが現在使われていることを詐欺師に知らせることになる。別の詐欺アカウントから狙われる可能性もある。
相手を説教したり、からかったりする必要もない。詐欺師との会話に勝っても賞金は出ない。静かに証拠を残し、通報して切るのが最善だ。
DMとプロフィールの証拠を保存する
被害に遭った、または金銭を要求された場合は、すぐ削除する前に証拠を保存する。
保存するものは次のとおりだ。
・DMの内容
・相手のアカウント名とユーザー名
・プロフィール画面
・送られてきたURL
・送金先の口座情報
・振込記録や決済履歴
・やり取りをした日時
・紹介されたサイトやアプリの画面
警察庁も、詐欺サイトのURLや画像、口座情報、振込記録、相手とのやり取りなどを保存するよう案内している。
Xへ報告してブロックする
Xでは、個別のDMや会話全体を報告できる。
報告したいメッセージを長押しし、「メッセージを報告」を選択する。会話の情報画面から、相手のアカウントや会話全体を報告することも可能だ。
証拠を保存した後は、相手をブロックするべきだ。
パスワードを入力した場合はすぐ変更する
偽サイトにXのパスワードを入力した場合は、正規のXアプリや公式サイトからパスワードを変更する。
同じパスワードをメール、通販サイト、銀行、他のSNSなどでも使っている場合は、すべて変更しなければならない。
さらに、見覚えのないログインや連携アプリがないか確認し、不審なアプリのアクセス権を解除する。
X公式も、アカウントが乗っ取られた場合はパスワードを変更し、連携アプリを確認し、2要素認証を使うよう案内している。
クレジットカード情報を入力した場合
カード番号、有効期限、セキュリティコードを入力した場合は、すぐにカード会社へ連絡する。
カードの利用停止や再発行が必要になる可能性がある。利用明細も確認し、身に覚えのない請求がないか調べる。
フィッシング対策協議会も、カード情報を入力した場合は、カード会社の紛失・盗難窓口へ連絡し、利用停止や再発行の手続きを行うよう案内している。
お金を振り込んだ場合
銀行振込をした場合は、すぐに振込元と振込先の金融機関へ連絡する。
時間がたつほど、詐欺師が別の口座へお金を移す可能性が高くなる。恥ずかしがっている場合ではない。被害直後の行動が重要だ。
同時に、最寄りの警察署や警察相談専用電話「#9110」へ相談する。
契約や副業、投資勧誘に関するトラブルは、消費者ホットライン「188」でも相談できる。
詐欺師から「お金を取り戻せる」と連絡してくる人物にも注意が必要だ。被害者をもう一度狙う「二次被害」の可能性がある。
XのDM詐欺を防ぐための設定と習慣
2要素認証を有効にする
Xの2要素認証を設定すると、パスワードだけではログインできなくなる。
Xでは、認証アプリ、セキュリティキーなどを使った2要素認証が用意されている。パスワードが盗まれた場合の被害を減らすため、必ず設定するべきだ。
バックアップコードも安全な場所へ保存しておく。
DMの受信設定を見直す
知らない人からDMを受け取る必要がない場合は、「すべてのアカウントからのメッセージリクエストを許可する」をオフにする。
設定は「設定とプライバシー」「プライバシーとセキュリティ」「ダイレクトメッセージ」から変更できる。
クオリティフィルターを有効にすると、不適切と判断されたメッセージリクエストを非表示にできる。
ただし、設定だけですべての詐欺DMを防げるわけではない。以前やり取りした相手や、乗っ取られた知人のアカウントから届く可能性もある。
パスワードを使い回さない
Xとメールで同じパスワードを使っていると、Xの情報が漏れたときにメールまで乗っ取られる可能性がある。
メールを乗っ取られると、他のサービスのパスワードも再設定される。被害が一気に広がるため危険だ。
サービスごとに違う長いパスワードを設定し、パスワード管理アプリを利用するべきだ。
DMのリンクからログインしない
X、銀行、通販サイト、クレジットカード会社などへログインするときは、DMに届いたリンクを使わない。
公式アプリを直接開くか、自分で登録したブックマークからアクセスする。
フィッシングサイトは、本物と見分けることを前提にしてはいけない。そもそも怪しい入口を使わないことが、最も強い対策になる。
まとめ
X(旧Twitter)のDM詐欺は、投資、副業、恋愛、プレゼント、アカウント確認など、さまざまな形で近づいてくる。
特に注意するべきなのは、外部サイトへのリンク、お金の要求、パスワードや認証コードの要求、LINEなど別のアプリへの誘導だ。
怪しいDMが届いたら、返信せず、リンクを開かず、証拠を保存して報告・ブロックする。
パスワードやカード情報を入力した場合は、様子を見てはいけない。すぐにパスワード変更、カード会社への連絡、金融機関や警察への相談を行うべきだ。
「自分は詐欺に引っかからない」と思っている人ほど危ない。詐欺師は知識のない人だけを狙っているのではない。焦っている人、欲が出た人、寂しい人、忙しくて確認を省いた人を狙っている。
DMで突然届いたうまい話は、人生を変えるチャンスではない。あなたの資産とアカウントを奪う入口かもしれない。
知らない相手から届いたリンクは開かない。お金と認証情報は渡さない。この基本を徹底するべきだ。

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