「株はプライベートの資産だから関係ない」
もし本気でそう思っているなら、税務調査ではかなり危険なポジションに立っています。個人事業主にとって株式の取り扱いは“見られないけど、見られる”グレーゾーン。ここを理論武装できているかどうかで、税務調査の空気は天国と地獄ほど変わります。
結論を少し先出しすると、**論点は“損益”ではなく“一貫性”**です。
税務調査で株式が問題になる本当の理由
税務署が株式に注目するのは、「儲けているから」ではありません。
狙いはもっと冷静で、そして容赦がない。
事業と私的の線引きが曖昧になっていないか
個人事業主の最大の弱点は、財布が一つになりやすいことです。
事業用口座から証券口座へ資金を移し、そのまま株を買っている。
この時点で税務署の頭の中では、こういう仮説が立ちます。
「この株取引、事業と関係あるのでは?」
ここで明確な説明ができないと、
・事業関連収入では?
・雑所得では?
・経費に混ざっていない?
という“疑念の連鎖”が始まります。
株式は原則「事業外」──だが例外は必ず突かれる
理屈としてはシンプルです。
原則論:株式は事業所得にならない
個人事業主が行う株式投資は、通常
・譲渡所得
・配当所得
として扱われ、事業所得とは切り離されます。
ここまでは税務署も百も承知です。
問題は次です。
例外論:事業との関連性が見えると話が変わる
以下のような状況が揃うと、一気に空気が変わります。
- 事業用口座から頻繁に証券口座へ資金移動
- 事業資金を一時的に株で運用している
- 借入金の原資が事業収入
- 事業と同業種の株を継続的に売買
この場合、税務署は**「実態ベース」で判断**します。
帳簿の名目より、行動の一貫性が重視されます。
税務調査に強い人が必ず持っている「理論武装」
理論武装とは、難しい税法を暗記することではありません。
説明の軸を一本通すことです。
資金の出所を即答できるか
調査官がよく聞く質問は、驚くほど単純です。
「この株の資金、どこから出ました?」
このとき
「えーっと…生活費からで…」
となると、その場で主導権を失います。
理想的なのは、
- 事業利益を事業主貸として確定させた後の資金
- 生活用口座からの入金
- 明確に事業帳簿と切り離されている
と、一文で説明できる状態です。
経費に絶対に混ぜてはいけないもの
ここは地雷原です。
株関連費用を経費に入れるリスク
以下は非常に危険です。
- 証券口座の手数料を経費処理
- 投資情報ツール代を全額経費
- セミナー費用を曖昧に計上
税務署から見れば、
「事業と関係ない支出を混ぜている」
という評価になりやすく、株式全体が調査対象に格上げされます。
調査官は“金額”より“態度”を見ている
これは経験則ですが、税務調査で揉める人ほど
- 曖昧に答える
- 感情的になる
- 「前は大丈夫だった」と言う
この3点セットをやりがちです。
理論武装とは「戦う」ことではない
正解は真逆です。
- 原則を理解している
- 例外も把握している
- 自分の処理がどちらか説明できる
この状態だと、調査官の質問は自然と浅くなります。
なぜなら、突いても崩れないと分かるからです。
個人事業主こそ「株式は放置しない」が最適解
株式は申告分離課税だから安心。
これは半分正解で、半分は幻想です。
税務調査では
「申告が合っているか」より
「考え方が一貫しているか」
が問われます。
まとめ
個人事業主にとって、税務調査対策としての株式の取り扱いは
節税テクニックの話ではありません。
- 事業と私的を明確に分けているか
- 資金の流れを説明できるか
- 例外に該当しない論理を持っているか
これらを言葉で説明できる状態こそが、最大の理論武装です。
株で儲けているかどうかは問題ではありません。
「なぜその処理をしているのか」を語れるかどうか。
税務調査で最後に効くのは、いつもそこです。

コメント