インターネットの速度を最大限に引き出したいとき、ルーターやプロバイダだけに注目しがちですが、自宅や職場に張り巡らせているLANケーブルの規格によって、通信速度が大きく変わることは意外と知られていません。カテゴリ（Cat）の違いがどれほど実際の通信環境に影響するのか、そしてどれを選べば後悔しないのかを明確にしておくことで、無駄な買い替えや速度低下のストレスを防ぐことができます。ここでは各カテゴリごとの特徴・通信速度・用途を一つひとつ丁寧に比較しながら、最適なLANケーブル選びを深く掘り下げていきます。
カテゴリ別LANケーブルの基礎知識と特徴
Cat5（カテゴリー5）
登場してからかなり時間が経っている規格で、現在ではほぼ使用が推奨されないタイプ。最大100Mbpsの通信速度しか出せず、現代の高速回線では完全に役不足。古い家庭用ルーターや10年以上前の設備で残っている可能性があるが、見つけた場合は速やかに交換したほうがよい。ノイズ耐性も低く、映像配信やオンラインゲームなど現代的な利用には不向き。
Cat5e（カテゴリー5e）
Cat5を改良した規格で、最大1Gbpsの通信に対応。一般家庭の標準として長年使われてきたが、現在の高速サービス（1Gbps～10Gbps回線）が普及している環境を考えると十分とは言いがたい。短い距離での利用なら問題を感じにくいが、複数端末をつなぐ家庭やテレワーク環境では速度不足を感じる場面も多い。コストは安いが将来性は低め。
Cat6（カテゴリー6）
最大1Gbpsに加え、最大250MHzの帯域幅を持つことで安定性が向上。さらに短距離（55m以下）なら10Gbps通信にも対応できるため、Cat5eよりも高速な通信を求める場合の実用的な選択肢といえる。一般家庭から小規模オフィスまで幅広く利用されており、今から新しくLANケーブルを買い替えるなら最低でもCat6を選んでおきたいレベル。
Cat6A（カテゴリー6A）
10Gbps通信にフル対応し、帯域幅は500MHz。ノイズ耐性も高く、長距離でも安定した高速通信を維持できる点が強み。近年は家庭用としても価格が手頃になり普及が進んでいる。オンラインゲーム、高画質動画配信、NAS（ネットワークストレージ）利用など、速度が求められる用途では特に効果を発揮する。将来のインターネット回線の高速化を見据えるなら最もバランスが良い規格。
Cat7（カテゴリー7）
10Gbpsに加え、帯域幅は600MHz以上。ノイズ対策としてSTP（シールド）仕様が標準となり、外部干渉に強い。ただし規格自体が正式なIEEE規格ではなく、硬くて取り回しにくいという弱点もある。一般家庭には過剰性能であり、LANケーブル側の性能がルーター・ハブに合わず無駄になるケースも。企業のサーバールームなど特殊環境向け。
Cat8（カテゴリー8）
40Gbps通信に対応し、帯域幅は最大2000MHzと圧倒的。サーバー間、データセンターなど高負荷環境のために設計された規格で、距離も最大30mまでと制限が大きい。一般家庭で利用するメリットはほぼなく、機器側が対応していなければ性能を引き出せない点にも注意が必要。家庭用としては完全にオーバースペック。
カテゴリ別の通信速度と実効性能の違い
最大理論値と実測値のギャップ
LANケーブルの性能表記はあくまで理論上の最大値であり、実際の通信環境では以下の要素によって速度が低下する。
- ケーブルの長さ
- ルーター・ハブの性能
- 周辺機器のノイズ
- ケーブルの劣化
- 差込口の接触不良
そのため、同じカテゴリであっても品質の低いケーブルでは本来の性能を引き出せないことがある。同カテゴリの中でも、断線しにくい柔らかい素材や、しっかりしたノイズ対策が施されたケーブルほど実測値が安定する。
カテゴリごとの実測に近い体感速度
- Cat5：100Mbps未満
- Cat5e：200〜800Mbps
- Cat6：500Mbps〜1Gbps前後
- Cat6A：1Gbps〜10Gbps
- Cat7：Cat6Aと同等かやや上
- Cat8：家庭用では効果を体感しづらい
特に1Gbps回線を利用している場合、Cat5e → Cat6Aに変えるだけで体感速度が大きく改善するケースが多い。
用途別の最適なLANケーブル選択ガイド
一般家庭のネット・動画視聴
Cat6で十分。4K動画視聴や複数端末利用がある場合はCat6Aにするとより安定する。
テレワーク・オンライン会議
Cat6Aを推奨。上り下りとも安定した通信が得られるため、映像・音声トラブルを大幅に減らせる。
オンラインゲーム
Cat6Aが最適。遅延を抑えたい場合にCat7を選ぶ人もいるが、対応機器が限られるため現実的にはCat6Aが最も扱いやすい。
NASや大容量データ転送
10Gbps通信を活かせる機器が揃っているならCat6A以上。特に家庭内ネットワークで大量の写真や動画を扱う場合に効果的。
企業・高負荷サーバー環境
Cat7またはCat8。外部ノイズによる通信障害を避ける必要がある環境に向いている。
LANケーブルを交換すべきタイミング
古いカテゴリを使っている場合
Cat5やCat5eで通信が遅いと感じているなら、間違いなく交換時期。特にテレワークや動画配信が主流となった今では性能不足が顕著になる。
ケーブルが硬化・劣化している場合
長年使用しているLANケーブルは内部の銅線が劣化して速度低下を引き起こしやすい。外観が固くなっている場合は交換推奨。
新しいルーターに変えたとき
せっかく高速ルーターに変えてもケーブルが古いままでは本来の力が発揮できない。ルーター買い替え時はケーブルも同時に見直すと効果的。
まとめ
高速インターネットを快適に活用するためには、LANケーブルのカテゴリ選びが非常に重要。古い規格を使い続けると通信速度を大きく損してしまい、速度が出ない原因がケーブルだったケースも少なくない。一般家庭ならCat6またはCat6Aを選んでおけばほぼ間違いなく、動画視聴からテレワーク、オンラインゲームまで幅広く対応できる。今後の高速化にも備えたいならCat6Aが最もバランスの良い選択となる。環境に合ったLANケーブルを選ぶことで、ストレスのない安定したネットワークを実現できる。
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