事業用の銀行口座を確認したら、「利息」が入っている。その直後には「国税」「地方税」という見慣れない出金まである。
数十円や数百円だから、雑収入か受取利息にでも入れておけばいいのでは?
実は、個人事業主ならその処理はおすすめできない。
銀行の預金利息は、たとえ事業用口座に入ったとしても、原則として事業所得ではなく「利子所得」になる。そのため、個人事業主の場合は「受取利息」ではなく、事業主借で処理するのが基本だ。
しかも、銀行から入金された時点ですでに税金が差し引かれている。
金額は小さい。しかし、ここを雑に処理すると会計ソフト上の所得まで変わってしまう。私は、少額だからこそ一度ルールを決めて、あとは毎回同じ処理にしてしまうのが一番楽だと考えている。

個人事業主が銀行利息を受け取った場合の仕訳
最初に結論を書く。
事業用の普通預金口座に、銀行から預金利息100円が入金されたとする。
個人事業主なら、基本的な仕訳はこうなる。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 100円 | 事業主借 | 100円 |
摘要には「預金利息」「銀行利息」などと入力しておけば十分だ。
ここで重要なのは、受取利息100円や雑収入100円にはしないという点である。
弥生も、個人事業主の事業用口座に付いた預金利息について「事業主借」で仕訳する方法を案内している。マネーフォワードでも同様に、銀行預金の利息は事業主借として処理する考え方が示されている。
なぜ「受取利息」ではなく「事業主借」なのか
少し分かりにくいのがここだ。
事業用口座のお金から発生した利息なのだから、事業の収益ではないのかと思ってしまう。
しかし、所得税では預貯金の利子は「利子所得」に分類される。
国税庁も、利子所得について「預貯金や公社債の利子」などから生じる所得と説明している。
つまり、
「事業用口座に入ったか」
ではなく、
「税法上、何の所得なのか」
で考える必要がある。
個人事業主の銀行預金利息は事業所得ではない。そのため、事業の帳簿では収益として増やさず、「事業とは別の個人のお金が事業用口座に入ってきた」と考えて事業主借を使う。
ここを理解すると、仕訳はかなり簡単になる。
銀行利息から引かれる国税・地方税とは?
銀行の取引明細を見ていると、
- 利息
- 国税
- 地方税
という表示が並ぶことがある。
最初に見ると「銀行口座から税金を勝手に引かれた?」と少し身構える。
しかし異常ではない。
個人が受け取る一般的な預貯金の利息には、原則として**合計20.315%**の税金がかかる。
内訳は次のとおりだ。
| 税金 | 税率 |
|---|---|
| 所得税・復興特別所得税 | 15.315% |
| 住民税 | 5% |
| 合計 | 20.315% |
国税庁によると、預貯金の利子は20.315%が源泉徴収され、基本的にはその時点で納税が完了する「源泉分離課税」の対象となる。
「国税」「地方税」と別々に表示される銀行もある
銀行によっては、税引後の利息だけを表示する場合もあれば、
「利息」
「国税」
「地方税」
を別々の入出金として表示する場合もある。
たとえばSBI新生銀行では、普通預金の利息について、
国税は税引前利息×15.315%、地方税は税引前利息×5%として計算し、それぞれ1円未満を切り捨てる方法を案内している。
そのため、通帳を見ると一度利息が入金され、その後に国税と地方税が出金されたように見えることがある。
しかし実態は、預金利息に対する源泉徴収である。
個人事業主は国税・地方税を別に仕訳しなくていい
では、明細に「利息」「国税」「地方税」が別々に出ていた場合はどうするのか。
ここでややこしく考えすぎる必要はない。
個人事業主の預金利息は事業所得ではないため、最終的に事業用口座へ増えた税引後の金額を事業主借として処理するのが分かりやすい。
たとえば税引前利息が1,000円だったとする。
概算では、
- 国税:約153円
- 地方税:50円
- 税引後利息:約797円
となる。
実際に797円が事業用口座へ増えたのであれば、
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 797円 | 事業主借 | 797円 |
という形で処理できる。
国税や地方税を「租税公課」にする必要はない
ここは間違えやすい。
「税金を取られたのだから租税公課では?」
と考えたくなる。
しかし、個人事業主の場合、この税金は事業所得に対する経費ではない。
預金利息という個人の利子所得に対して課税された税金だからだ。
そのため、国税や地方税を事業の「租税公課」として経費計上する処理は避けたほうがよい。
私なら、事業所得と預金利息を最初から完全に分けて考える。
このほうが帳簿も確定申告も迷わない。
預金利息は確定申告する必要がある?
国内の銀行から受け取る一般的な預貯金利息であれば、基本的に確定申告は不要だ。
なぜなら、利息を受け取る段階ですでに税金が源泉徴収され、そこで課税関係が完結するからである。
国税庁も、一般的な預貯金の利子について、源泉分離課税となるため確定申告することはできないと説明している。
つまり、事業用口座に銀行利息が入ったからといって、
「確定申告の売上に追加しなければ」
と考える必要はない。
事業用口座でも扱いは同じ
ここも重要だ。
「事業用口座だから事業所得になるのでは?」
と思うかもしれない。
しかし、銀行口座の用途が事業用だからといって、預金利息の所得区分まで事業所得に変わるわけではない。
そのため、
事業用口座に預金利息が入る
→ 預金残高が増える
→ 帳簿には事業主借で記録する
という流れになる。
プライベート用の銀行口座に付いた利息なら、そもそも事業帳簿には関係しないため仕訳自体が不要だ。
「受取利息」や「雑収入」で登録するとどうなる?
会計ソフトを使っていると、「受取利息」という勘定科目が最初から用意されている場合がある。
すると、つい選びたくなる。
名前まで完全一致なのだから、人間としては非常に自然な罠だ。
しかし、個人事業主の一般的な銀行預金利息には使わないほうがよい。
事業所得が増えてしまう可能性がある
受取利息や雑収入は、通常は収益科目になる。
そのため、預金利息を収益として登録すると、会計ソフト上では事業所得の利益が増える可能性がある。
しかし、預金利息にはすでに20.315%の税金が源泉徴収されている。
さらに事業所得にも含めてしまえば、本来不要な所得計算へ影響することになる。
だからこそ事業主借を使う。
事業主借なら、事業の売上や利益を増やさずに、銀行口座の残高だけを正しく合わせられる。
これが一番重要だ。
銀行利息が数円でも仕訳したほうがいい?
私は記帳することをすすめる。
利息が3円や10円しかないと、
「こんなの無視していいだろう」
と思いたくなる。
気持ちは分かる。
しかし、事業用銀行口座を会計ソフトと連携している場合、預金利息を無視すると帳簿残高と実際の銀行残高に差が出る。
10円の差でも、後から帳簿を確認したときには原因探しが始まる。
数円の利息を省略して、数十分かけて残高差を探す。経理というものは、妙にこういう不毛な交換条件を提示してくる。
最初から仕訳しておいたほうが圧倒的に楽だ。
会計ソフトの自動仕訳を使うと楽になる
銀行口座を会計ソフトと連携しているなら、
「預金利息」
「利息」
などの摘要を条件にして、事業主借へ自動登録するルールを作っておくとよい。
毎回数十円の利息に頭を使う必要がなくなる。
銀行利息は頻繁に発生する取引ではないが、処理方法がほぼ決まっているため、自動化との相性はかなり良い。
貸付金の利息まで事業主借にしてはいけない
ここで注意したい。
すべての「利息」が事業主借になるわけではない。
たとえば事業として取引先や従業員などへお金を貸し、その貸付金から利息を受け取った場合は話が変わる。
事業活動によって発生した利息であれば、雑収入など事業の収益として処理する場合がある。弥生でも、従業員に貸したお金から受け取る利息については、銀行預金利息とは分けて処理する方法を案内している。
つまり、
銀行にお金を預けて受け取る利息
事業主借。
事業上の貸付などから受け取る利息
事業収入として処理する可能性がある。
同じ「利息」という名前でも、中身は別物だ。
ここを一括で処理しないほうがよい。
法人の銀行利息は個人事業主と処理が違う
この記事で特に注意してほしいのが、法人と個人事業主を混同しないことだ。
法人には「事業主」という考え方がない。
そのため、法人が銀行から受け取る預金利息は、基本的に「受取利息」などの収益として処理する。
さらに税率も個人とは異なる。
三井住友銀行では、個人の預金利息には20.315%、法人については2016年1月1日以降15.315%の税率が適用されると案内している。
これは、法人が受け取る利子について、2016年から地方税5%の利子割が廃止されたためだ。東京都主税局でも、2016年1月1日以後に法人が受け取る利子について利子割が廃止されたことを確認できる。
つまり、
| 区分 | 基本的な扱い |
|---|---|
| 個人・個人事業主 | 税率20.315%、事業帳簿では事業主借 |
| 法人 | 税率15.315%、受取利息などで収益計上 |
となる。
個人事業主と法人を同じ仕訳で説明すると、ここで話が崩れる。
銀行利息の仕訳でよくある間違い
受取利息で処理する
個人事業主の銀行預金利息では、まず疑ったほうがよい処理だ。
事業用口座に入っているからといって、事業所得とは限らない。
基本は事業主借で考える。
雑収入で処理する
これも同じ問題がある。
雑収入は事業所得の収益になり得るため、銀行預金利息の処理には向かない。
国税・地方税を租税公課にする
預金利息から源泉徴収された税金は、個人の利子所得に対する税金だ。
事業所得の必要経費として租税公課へ入れる考え方とは分けておきたい。
銀行明細を無視する
金額が数円でも、事業用銀行口座なら帳簿残高がずれる。
少額だから処理しないのではなく、少額だから自動仕訳にしてしまうほうがよい。
まとめ
個人事業主が事業用銀行口座で預金利息を受け取った場合、処理はそれほど難しくない。
基本の仕訳は、
普通預金/事業主借
である。
銀行預金の利息は税法上「利子所得」であり、一般的な国内預金なら20.315%の税金が源泉徴収される。原則として確定申告で事業所得へ追加する必要もない。
覚えておきたいのは次の点だ。
- 個人事業主の預金利息は「事業主借」が基本
- 「受取利息」や「雑収入」にしない
- 個人の預金利息には20.315%の税金がかかる
- 国税・地方税を事業の租税公課にしない
- 国内の一般的な預金利息は原則として確定申告不要
- プライベート口座の預金利息なら事業帳簿への仕訳は不要
- 法人の場合は処理方法も税率も異なる
銀行利息は数円から数百円程度のことも多い。
だからこそ適当に処理したくなる。
しかし、数円の取引で所得区分まで間違えるのは割に合わない。個人事業主なら「銀行預金利息=事業主借」と決めておけば、次から迷う必要はほぼなくなる。
私はこの手の仕訳ほど、難しく考えずルールを固定してしまうのが正解だと思っている。


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