社会保険の「扶養」に入っていると、健康保険料や年金保険料を自分で支払う必要がなく、経済的な負担が軽減されます。しかし、一定の収入や働き方の変化によって「扶養から外れる」ことになり、思わぬ出費が発生するケースも少なくありません。特にパート・アルバイトで働く人や、配偶者の扶養に入っている人は、年末や転職のタイミングで注意が必要です。本記事では、「社保 扶養 外れる要件」について最新の基準や注意点をわかりやすく解説し、損をしないためのポイントを詳しく紹介します。
社保扶養とは何か
社会保険における扶養の基本的な考え方
社会保険の扶養とは、主に健康保険と年金保険において、被保険者(例:会社員)の家族がその扶養に入ることで、保険料を支払わずに保障を受けられる仕組みを指します。たとえば、配偶者が専業主婦(夫)であったり、子どもや親を扶養している場合に適用されます。
健康保険では「被扶養者」として認定されることで、医療費の自己負担が3割となり、出産育児一時金などの給付も受けられます。一方、年金については、被扶養配偶者が「第3号被保険者」として国民年金に加入する形になります。
税法上の扶養との違い
よく混同されがちですが、「社会保険上の扶養」と「税法上の扶養」は別の制度です。社会保険は保険料や医療給付に関する制度であり、税法上の扶養は所得控除(配偶者控除・扶養控除)に関するものです。そのため、社会保険上で扶養から外れても、税法上では扶養のままでいられる場合もあります。
社保扶養から外れる主な要件
年収の上限を超える場合
社会保険の扶養判定で最も重要なのが「年収基準」です。一般的に、被扶養者の年収が 130万円以上(または月収108,334円以上) となると扶養から外れることになります。
ただし、これは「今後1年間の収入見込み」に基づいて判断される点がポイントです。たとえば、月収が安定して108,334円を超える見込みがある場合、たとえ実際にまだ130万円に達していなくても扶養を外れる可能性があります。
勤務先の規模による例外(106万円の壁)
従業員数が501人以上の企業では、一定条件を満たすと年収が 106万円 を超えた時点で社会保険への加入義務が発生します。この「106万円の壁」に該当する条件は以下の通りです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上
- 勤務期間が1年以上見込み
- 学生でないこと
- 企業の従業員数が501人以上(または特定の中小企業でも導入済み)
これらの条件を満たすと、自動的に自分自身で社会保険に加入する必要があり、結果的に配偶者の扶養から外れることになります。
雇用形態や勤務日数の変化
短時間勤務からフルタイム勤務へ変更した場合や、残業・休日出勤の増加によって実収入が上がる場合も注意が必要です。収入が一時的なものか継続的なものかによっても判断が異なります。
雇用先が複数ある場合
複数の会社で働いている「掛け持ちパート」や「ダブルワーク」も、各収入を合算して判定されます。たとえ一つの勤務先の収入が少なくても、合計が130万円を超える見込みであれば、扶養から外れる対象になります。
扶養から外れた場合にどうなるのか
社会保険料の自己負担が発生
扶養から外れると、自分で健康保険と年金保険に加入し、保険料を支払う必要があります。会社員として働いている場合は、勤務先を通じて自動的に加入手続きが行われ、給与から天引きされます。
たとえば、月収15万円の場合、健康保険料と厚生年金保険料で月に2万円前後が差し引かれることもあります。
国民健康保険・国民年金に加入する場合
勤務先で社会保険に加入できない場合(短期雇用や個人事業主など)は、自分で市区町村役場に行き、国民健康保険と国民年金に加入します。この場合、保険料は全額自己負担となります。
扶養から外れないための対策
収入調整を行う
年末に近づいた段階で、自分の収入見込みを確認し、130万円を超えないように調整することが効果的です。特に賞与や交通費(非課税分を除く)も収入に含まれる場合があるため、会社の給与明細で必ず確認しておきましょう。
勤務時間を調整する
1週間の勤務時間が20時間を超えると「106万円の壁」に該当する可能性があるため、勤務時間の管理も重要です。勤務シフトを調整することで、扶養範囲内での働き方を維持できます。
配偶者と話し合いを行う
配偶者の勤務先によっては、扶養条件が独自に定められていることがあります。健康保険組合によっては、130万円未満でも一定条件を超えると扶養から外れるケースがあるため、事前に確認しましょう。
扶養から外れた後に注意すべきポイント
保険証の切り替え
扶養から外れると、配偶者の健康保険証は使えなくなります。自分の加入先の保険証が届くまでの間は、医療費を一時的に全額自己負担する必要があるため、早めの手続きが大切です。
年金記録の確認
第3号被保険者から第2号(または第1号)に切り替わる際には、年金記録に空白期間が生じないよう注意が必要です。切り替えが遅れると、将来の年金額に影響する可能性があります。
税金への影響
社会保険上の扶養から外れても、税法上の扶養はすぐに外れるわけではありません。ただし、所得が増えることで配偶者控除や扶養控除が受けられなくなる場合があるため、確定申告や年末調整時に確認しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1:一時的に130万円を超えても扶養に戻れますか?
A:一時的な収入増であれば、翌年以降に再度130万円未満となれば扶養に戻れる可能性があります。ただし、健康保険組合の判断基準により異なります。
Q2:交通費やボーナスは収入に含まれますか?
A:非課税範囲を超える交通費やボーナスは収入に含まれるため、扶養判定の際に考慮されます。
Q3:アルバイト先が変わった場合は手続きが必要ですか?
A:収入や勤務形態が変わる場合は、配偶者の勤務先へ報告が必要です。変更を放置すると扶養認定の取消や遡及請求の対象になることもあります。
Q4:学生でも扶養から外れることはありますか?
A:学生でも、週20時間以上働いて年収が一定額を超える場合は、扶養から外れることがあります。
Q5:パートを辞めた場合は再び扶養に戻れますか?
A:無収入になれば、原則として再度扶養に入ることが可能です。ただし、収入が途切れた証明書の提出を求められる場合があります。
Q6:扶養を外れるタイミングはいつですか?
A:通常は収入超過が判明した月、または勤務先からの報告があった月の翌月から外れるケースが一般的です。
まとめ
社会保険の扶養から外れる要件は、主に「収入」「勤務時間」「雇用形態」によって決まります。特に年収130万円、または106万円の壁を超えるかどうかが大きな分岐点です。収入の見込みが増えた際には、早めに勤務先や配偶者と相談し、必要な手続きを忘れずに行うことが大切です。制度の仕組みを正しく理解し、損をしないよう計画的に働くことが、将来の安心にもつながります。

コメント