【小説】かの男の人生

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彼が生まれたのは田舎の兼業農家。

田んぼが三反ほどの小さな農家だった。

夫婦揃って共働きだったので、同居していた曽祖母に育てられた。

父は寡黙な人だった。

単に口下手だったというべきかもしれない。

酒が入ると饒舌で荒々しくなった。

母は放任主義。

とやかく口を出すようなタイプではなかった。

どう育てれば良いのかわからなかったのかもしれない。

彼は長男として生まれたが、彼の前に一人流産していたので待望の子供だったのだろうが、

父親は娘でなかったことが残念だったようだ。

その後、妹ができると父は妹を溺愛していた。

そんな彼は曽祖父と入るお風呂が大好きだった。

曽祖父は大工をしていた昔堅気の人だった。

家にある大工の道具を触っては彼はよく曽祖母に怒られていた。


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そんな彼の小さな時の記憶は夏休みにやっていたアニメと土曜日の吉本新喜劇だ。

暑い中風通しの良い居間でアイスを食べながら観るのがお気に入りだった。

彼の初恋は意外と早かった。

幼稚園の時だサヨという女子とおうまさんごっこをした時のことだ、

当時から奥手だった彼は彼女に指名されておうまさんになれたことが嬉しかったのだろう。

この頃からMっ気のある男だったのかもしれない。

中学に入ってから彼女に再会するが、当時ほどの気持ちはなかった。

小学校に進んだ彼は食べ物が好きだったせいかどんどん太っていった。

正直、小学校の記憶は曖昧だ。

しかし、保健室の先生にほのかに恋心を抱いていたことと

先生に向かって「お母さん」と言ってしまった恥かしい過去がある。

5年生の頃、同じ小学校でよくカードゲームで遊んでいた友人がバスケを始めるというので一緒になって始めた。

運動を始めたおかげで一気に痩せ身長もぐんぐん伸びた。

(一応水泳を小学校2年くらいからやってはいたのだがこれは痩せるのに効果がなかったようだ。)

ちょうど成長期と重なったせいで、彼は膝を痛めてしまった。

当時、そろばんにも通っていた彼は正座ができなくなりそろばんにも通わなくなる。

また、同じ時期に水泳もやめてしまう。

(おかげでバタフライだけ泳ぎ方がわからない。)

治療をしながらバスケをやってはいたが小学校6年の終わりには痛みの方が酷くなりバスケとも疎遠になってしまった。

彼はそのまま地元の中学校に進学した。

中学で初めてちゃんとした恋をした。

マミという子に連絡先を聞かれたのだ。

しかし、これが彼にとって女恐怖症の原因を作る要因になってしまった。

彼女は”彼氏がいない自分が許せないタイプ”だった。

つまり、自分はていのいい合間の男として利用された。

それが中一の夏の頃だ。

中一の終わりにそんな話を友人にグチっていると、

彼女から手紙が届いた。

「調子にのるなクズが」と

ひどい話だ。

お前から誘っておいて・・

それから彼は女性とどう接すれば良いのかわからなくなっていった。

これは、ずっと彼の人生において尾をひく問題となった。

彼は、そんなことを忘れるために誰も一年の時にはやりたがらない生徒会の仕事を始めた。

3年の前期まで生徒会の役員をつとめ、後期には生徒会長になった。

もちろん生徒会長をやったのは進学のためだった。

当時、バレーボール部に所属していた彼は県大会にいくことで内申をあげようと目論んでいたが、彼の世代は彼自身が初心者だったことと人数が少なかったおかげ先輩たちの代では行けていた県大会に行くほど強くはなかった。

この時、部に誘ってくれた友人は今での数少ない彼の友人だ。

彼は、大学までエスカレーター式の近くの高校に通いたかった。

偏差値はまあまあ高い方だったが、生徒会をやっていてよかったことがここで働いた。

生徒会の仕事でよく職員室を訪れていたので各教科の先生とは仲良くなっていたのだ、おかげで9教科の内申はかなりいい方だった。

しかし、その内申だけでは推薦がもらえないから彼は仕方なく生徒会長の仕事をした。

後期に行う生徒会の一大イベント時、彼はインフルエンザで倒れた。

なんとも情けない男である。

この頃からストレスに弱い人物だということが伺える。

まあ、とりあえず推薦を受けることができ無事推薦入試を受けた。

結果は見事に不合格。

しかし、彼はなんとも言えない自信に満ち溢れていた。

彼は、その後同学校の筆記試験を受けるため過去問を購入して苦手だった国語のみ行った。

全部やればいいものを何を血迷っていたのか合格する自信があったのだ。

そして、試験当日彼は自信満々に試験会場に赴いた。

結果は合格。

晴れて大学までの進路が決まった。

今思えばこの選択は彼にとって間違いだったのではないかとふと思う。

彼は、その後の人生を路頭に迷うことになるからだ・・・

まあ、一概には言えないが。



高校に入った彼は心機一転彼女を作ろうと頑張る。

昔気質の曽祖父の影響がこの時出てしまった。

彼は、”男たるもの強くあらねば”と思い柔道部に入部する。

部活動は大学の先輩も一緒にやる合同が基本だった。

彼はすぐに部の先輩に一目惚れをする。

だが、同じクラスのイケメンヤリチン野郎の彼女経由で女子を紹介され付き合うことになった。

なんだかんだ言ってこれが彼にとっての初めてまともな恋愛だったのかもしれない。

4人で祭りに行った。

正直これと野郎の部屋で二組揃ってイチャイチャキスをしたことくらいだ。

まあ、初めてのキスだったのでそれは印象深かったようだ。

その後、彼は結局その彼女アカネとの付き合い方がわからなくなって彼女をふってしまう。

この時には部活のミナ先輩のことしか見えていなかったのだ。

ミナ先輩は一人暮らしをしていた。

仲良くなった彼は彼女の部屋に招かれることになった。

正直、緊張していた彼はそこで何もできなかった。

彼女がそこまで求めていたかは定かではないが、

その後彼はあることを知る。

ミナ先輩にはすでに同大学の先輩と付き合っていたのだ。

はっきり言って彼は遊ばれていた。

この事件がきっかけでなおさら彼は女性との関わり方がわからなくなっていった。

その後、その件もあってか部活に顔を出すのが嫌になった彼は部を退部することにした。

担当教官は厳しい人だったので、自分の成績が落ちていることを無理矢理理由づけして退部した。

その後は、だらだらと高校生活がすぎていった。

大学は2年生コースを選択したので1年の終わりには就職活動が始まった。

当時仲の良かった友人と”共に働こう”と同じ会社にエントリーシートを提出した。

結果は、友人リュウだけ合格だった。

正直、彼はこの時自分の無力さに落ち込んでいた。

その後、系列の会社の人事マネージャーに声をかけてもらい系列会社で働くことになった。

彼は、福島に異動となり福島で働いた。

働いて一年目の夏に祖母がなくなった。

泣き目に会えなかった後悔から彼は地元に戻ることを決心した。

正直それがきっかけであり、

仕事が嫌になっていた・一人が寂しかったというのが本音だ。

その年の末には辞職の意向を示した。



地元に帰ってきた彼は数ヶ月友人の家でニートをした。

その後高校時代の友人の勧めでバイトを始めた。家庭教師の仕事だ。

当時は社長に強引に引っ張られたというのが本当のところだ。

しかし、何気に楽しい仕事だった。

だが、彼は社会的な体裁を考え2年後にもう一度前の職種の仕事に戻ることを決心する。

その頃、こっちに戻ってきた同じ会社を受けたリュウに紹介してもらい新しい仕事につくことができた。

そこは同窓の仲間が多くいた。

彼はだんだん仕事を任せられるようになり、

プレッシャーを感じるようになっていった。

数日、無断欠勤に近いことをするようなことを度々繰り返した。

しかし、無事一年目の仕事が終わると彼に転機が訪れた。

職場の仲間と飲みにいった帰りによった勢いで口説いた女性と初めて付き合うことになるのだ。

彼は彼女と初めてを体験する。

一般的に見れば遅い経験だっただろう。

しかし、一年を過ぎ彼女に唐突に振られる。

理由も定かではなかった彼は納得が行かず「またか」とふさぎこんだ。

合間って彼は部署の転換があった。

ここで追い討ちをかけたのが、上司の自殺だ(推定だが・・・)。

彼はその部署で頑張る気力が日に日に薄れていった。

職場の大半が同窓だったのが逆に悪い方向に働いてしまった。

彼は誰にも相談ができず、自分で全てを抱え込んでしまった。

そして、ついに現実逃避をしてしまう。

当時彼には二人の親友がいたが、

地元にいた一人はこれから結婚を迎えており相談できる状態ではなかった。

結果、彼は埼玉に住んでいるもう一人の親友の部屋に上がり込んだ。

彼はそこでお別れの挨拶をするつもりで着の身着のままに自分の車を運転して向かった。

どこかの山奥で死のうと思っていた彼は親にも誰にも告げずに埼玉に逃避行した。

そこにいたのは俺だが、本当に俺が適当な男で良かったと後に彼から聞いた。

どうでもいいような俺の態度が彼にとっては救いだったのだ。

数ヶ月、彼は俺の家にいた。

もちろん、俺にはもう一人の親友を知っていたのでそいつを通じて親から連絡が入ってきた。

俺は、その場ではすぐに取り次がず間を置いて彼から連絡を入れるよう促した。

彼はその後、正月まで俺のところに入り浸っていた。

正月俺が実家に帰る頃には覚悟を決めたのか一緒に地元に帰ることになった。

彼は一時的に実家に戻ったが、またすぐに俺と一緒に埼玉に戻ることにした。

さらに、数ヶ月が過ぎ彼も落ち着き、

一人で実家に帰ることになった。

その後彼は、地元で派遣の仕事で食いつないでいた。

休んだり働きに行ったりと苦役列車のような生活を行っていた。

そんな中、それを良しと思っていない彼は家庭教師のバイトを思い出した。

「あれならとりあえずまたできるかも」と

社長に気に入られていたおかげかトントン拍子で復帰した彼はすぐに「社員にならないか」と声がかかる。

昔から人に対して断ることのできない彼はすんなりとその話に乗ってしまった。

実際問題、バイトと社員には大きな隔たりがある。

責任だ!

その責任から逃げ出した人間がすぐにまたその責を全うできようか・・・

しかし、当時バイトで働いていた院生の学生と付き合うことになる。

実際は彼女には「私は彼氏を作る気はないから」と言われていたらしいが、

まあ程のいいセフレのような存在に彼はなった。

「そんな関係でも将来彼女と・・・」と思うと社員の仕事も頑張ることができていた。

しかし、また彼は女に裏切られる。

就職活動中で時間のあった頃は彼女と共に過ごすことができていたが、

就職が内定した彼女は自分の趣味に没頭し始める。

彼は会いたくて何度も連絡をとってしまい彼女の嫌気を誘う。

結果、彼は彼女に「もう2度と会いたいくない」と言われる。

彼は思った。

あれだけ「好きだ」と言ってくれていた関係はなんだったのだろうかと・・・

彼はまた地に落ちる。。

結果、仕事もうまく行かなくなり、

病院に通うようになった彼は今傷病手当で飯を食っている。

今後、彼はどんな人生を送るのだろうか・・・

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